リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

感染性心内膜炎に特徴的な皮疹

Clinical Scenario
生来健康な55歳女性
 
3ヶ月前~発熱、咳、関節痛、呼吸苦が続く。大体、微熱だが、夜間39度台になることもある。A医院に通院したが改善せず。
 
2ヶ月前~B病院に通院中。胸部X線、CT検査にて原因不明であった。
 
数日前~関節痛が増悪し、入院日、ERを来院。
 
爪の線状出血を認め、足底にJaneway病変を認めた。
 
造影CTにて脾内に2518mm大の低吸収域を認め、辺縁には淡い造影効果を認めた。
 
入院の翌日、血液培養にて血液培養陽性化の連絡が入った。グラム陽性球菌とのことであった。
 
抗生剤治療を開始し、循環器科にコンサルトした。
 
心エコーにてMR1-2度、M弁前尖に11*19mmの可動性を伴う疣贅を認めた。
 
(症例は架空です)
 
 
IEの皮疹について偶然お宝を見つけました!>
Prognostic valueof skin manifestations of infective endocarditis.
JAMA Dermatol.2014 May;150(5):494-500.
Servy A, et al.
 
Methods
Study Design
20081/1-12/317つのフランスの地域において発生したすべてのIEの前向き観察研究。
 
・これらの地域に住む15000000人を対象としており、フランスの人口の32%にあたる。
 
Duke criteriaにてdefinite IEと判定された18歳以上の症例のみ。
 
・通常IEを管理する全ての病院の医師(循環器科医、心臓血管外科医、感染症医、intensivists、内科医)はこの疫学研究について知らされており、彼らの患者を知らせた。
 
・その後、カルテ記録より標準化された症例レポートのフォームに書きうつした。全患者において以下の情報を集めた;性、年齢、既往歴、IEに関する処置・リスク、臨床所見、症状、菌の侵入部位、検査所見、微生物検査結果、画像所見、内科・外科的な治療、合併症。
 
・皮膚の系統的な診察は行われなかった。
 
・臨床データの中でIEに以下の典型的な4つの皮膚所見が医師の個人的な経験に基づいて診断された: Osler結節、Janeway病変、紫斑、結膜出血。
 
・全ての症例レポートのフォームは感染症循環器科医、微生物学者、心臓血管外科医によって構成された判定委員会によってチェックされ、修正されたDuke criteriaに従って分類された。
 
StatisticalAnalysis
(略)p<0.05を有意とした。
 
Results
Prevalence ofDermatological Manifestations of IE
497例のdefinite IEのうち、487例において皮膚所見が得られた(古典的なIE関連皮膚病変の有無)。429 (88.1%)は皮疹がなかった。58(11.9%)が少なくともひとつのIEの皮疹を有すると考えられた; 紫斑39 (8.0%)、オスラー結節13 (2.7%)、ジェーンウェー病変8(1.6%)、結膜出血3 (0.6%)5例が二つの皮疹を有した。
 
Factors AssociatedWith Dermatological Manifestations of IE
・皮膚所見の有無によってIE患者の主な特徴をTable1にサマライズした。皮膚病変を有する患者は若かった。1型糖尿病の患者に皮疹が少ないことを除いてIV drug useや合併症に差はなかった。
 
・とくに、人口弁などの心疾患の既往の頻度は皮疹の有無によって差はなかった。皮疹の有無に関わらず、IEの診断時にかなりの数の患者に心雑音(新規または既知の)が聴取された。経胸壁心エコーが約半数の患者においてIEを診断したが、経食道心エコーは診断と心合併症を特定するためにほぼ全例において施行されていた。
 
IE診断までの時間は皮膚所見の有無に関わらず同様であり、通常1ヶ月以内。しかし、皮疹のないIE患者と比べ、皮疹のあるIE患者は心臓以外の合併症が有意に多かった。皮疹は脳以外の合併症が有意に多く (75.9% vs 54.8%, P = .002)、脳合併症(41.4%vs 25.4%, P = .01) 特に脳梗塞 (32.8%vs 18.4%, P = .01) が有意に多かった。症状のある脳合併症のサブグループではその傾向しか見られなかったが(Table 2)脳梗塞のあるIE患者はない患者に比べ、IEに関連した皮疹を有する割合が高かった。IEの皮疹を有する患者は合併症の率が高かったにもかかわらず、死亡と入院日数は皮疹のない患者と変わりなかった(Table 2)
 
・各々の皮疹を呈する患者を呈さない患者と比較して考慮した時、紫斑は有意に大きな最初の疣贅と関連していた (18.1 vs 13.7mm, P = .01)Janeway病変は脳以外の梗塞に関連し(75.0% vs 31.8%, P = .02)、しばしば症状のある肺、脾臓、心臓、腎臓、肝臓または末梢の病変の塞栓と関連した。大動脈弁の二尖弁はOsler結節と有意に関連した (23.0% vs 4.0%, P = .01)。各々の皮疹の存在はその他の臨床所見と関連しなかった(データは示していない)。
 
 
< まとめ >
・フランスの1年間の大規模な前向き観察研究において古典的なIEに関連する皮疹(Osler結節、Janeway病変、紫斑、結膜出血)を呈する割合はIE487例のうち、58(11.9%)
 
・ただし、皮疹を系統的に検索した研究ではない。
 
・紫斑39 (8.0%)、Osler結節13 (2.7%)、Janeway病変8(1.6%)、結膜出血3 (0.6%)。二つの皮疹を有したのは5例(1.0%)のみ。
 
・皮疹のあるIE患者は心臓以外の合併症が有意に多く (75.9% vs 54.8%, P = 0.002)、脳合併症(41.4%vs 25.4%, P = .01) 特に脳梗塞 (32.8%vs 18.4%, P = 0.01) が有意に多かった。症状のある脳合併症のサブグループではその傾向しか見られなかったが(29.3% vs 18.9%, P = 0.06)。
 
IEの皮疹を有する患者は合併症の率が高かったにもかかわらず、死亡と入院日数は皮疹のない患者と変わりなかった。
 
 
Scenario caseの経過>
Streptococcus mitisを検出した。心臓血管外科に相談し、僧帽弁置換術を施行された。
 
Table 1によると(皮疹の有無に関わらず)、1ヶ月以内の診断は全体の67%1ヶ月以上3ヶ月以内は17%、>3ヶ月は8%
 
→日本の平均的な診療と比べていかがでしょうか・・・