リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

高安大動脈炎の肺動脈病変

Clinical scenario
20歳女性
 
肺炎にて前医にて入院加療したが、改善なし。
 
不明熱のため、紹介。
 
肺陰影は胸膜に接する扇形の陰影、周囲にすりガラス状陰影あり。
 
PETをとったところ、両総頸動脈、右鎖骨下動脈、左上腕動脈にFDGの異常集積を認めた。
 
肺動脈にも異常集積を認めた。
 
読影医より連絡が入った。
 
「あの肺炎像、ひょっとして肺塞栓じゃないですか?」
 
(症例は架空です)
 
 
< 疑問発生!>
 
高安大動脈炎は肺血栓塞栓症・肺梗塞を呈することがあるか?
 
 
Uptodateにて>
Clinical features and diagnosis of Takayasu arteritisを開いて、Pulmonaryを検索します。
 
肺動脈は約50%で障害される。
 
肺動脈は病理学的に50%障害される。しかし、肺動脈炎に関連する症状は多くない。肺の症状として胸痛、息切れ、血痰、肺高血圧がある。息切れの症状は大動脈拡大と大動脈閉鎖不全による心不全でも起きる。
 
→肺梗塞の記載はありませんね。
 
Pubmedにて>
("Takayasu Arteritis"[Mesh]) AND "PulmonaryEmbolism"[Mesh]を検索します。
 
22件中4番目に我らがInternal medicineを見つけました
 
Pulmonary infarction as the initial manifestation of Takayasu'sarteritis.
Nakamura T, Hayashi S, Fukuoka M, Sueoka N, Nagasawa K.
Intern Med. 2006;45(11):725-8.
 
50歳女性の突然の右胸痛。
3ヶ月以上前より倦怠感と発熱あり、微熱があった。
2LSBと両足の頸部に雑音を聴取。
WBC8600, Plt64.2万、ESR130 mm/1hCRP11.4
・胸部X線では右下肺野に陰影、CTにて中葉と右下葉に楔状の陰影あり、CT/MRIにて上行大動脈、弓部、3つの主な分枝、右肺動脈に狭窄を認めた。
・右肺動脈の末梢に高度の狭窄を認め、肺血流・換気シンチは右肺に多数の血流欠損を認めた。
プレドニゾロン40mg、ワーファリンにて改善。
 
イメージ 2
 
 
Discussion
・英語の文献検索にて高安大動脈炎に合併した肺梗塞の症例は2例しか報告がなかった(3, 5)
2例ともは主に突然発症の胸痛と息切れを呈し、肺高血圧症は伴わなかった。
・本症例と同様に肺塞栓が最初の症状であった患者は一例あった。その症例もステロイドとヘパリンにて改善した。この症例と本症例から肺梗塞の原因としてTAKを考慮することは大切であることを示唆される。早い治療が良い予後をもたらすからだ。
・造影CTMRIは鑑別に有効
 
 
IM2006の孫引き>
3) Pulmonary infarction revealing pulmonary Takayasu's arteritis.
Respir Med. 1998 Jul;92(7):969-7.
Devouassoux G, et al.
 
これはFree downloadできます。
 
29歳女性、アルジェリア
・突然の胸痛と息切れ
14年前よりRF+RAあり、D-pen, MTXにて加療中。
1年前に動脈造影にてTAKと診断。非対称性の血圧、橈骨動脈の脈なし、右鎖骨下領域のbruit大動脈弓部、右鎖骨下動脈。
・胸部X線にて右下葉の浸潤影。胸水なし。低酸素なし。肺機能正常。
・血流新地は中葉と右下葉の亜区域性の血流欠損
・肺動脈圧26/15(mean15)。肺動脈造影にて中葉動脈の狭窄。
・プレドニゾン1mg/kgにて改善。
1ヶ月後の肺血流シンチでは改善なかった。
 
 
イメージ 1
 
 
5) Initial isolated Takayasu's arteritis of the right pulmonary artery:MR appearance.
Eur Radiol. 1996;6(4):429-32.
Ferretti G, et al.
 
Abstractのみ)
高安動脈炎は50%以上のケースで肺動脈分枝の病変を侵す。しかし、高安動脈炎によって最初に限局して肺動脈が侵されることは極めて稀。肺梗塞を伴う急性肺塞栓を真似した臨床所見と画像所見を呈した34歳の白人女性を提示する。肺動脈造影は右肺動脈分枝の狭窄性の病変と閉塞を示した。MRIは肺動脈の壁肥厚を示し、正確な診断に導いた。
 
 
<こたえ>
肺塞栓症を呈したケースが過去に少なくとも3例ある。いわゆる血栓が飛んで肺梗塞になるものではなく、肺動脈の狭窄によって梗塞を呈した。3例とも、また自験例も右肺動脈の分枝をおかした。
 
 
Scenario caseの経過>
肺血流シンチにて右肺動脈分枝にDefectを認めた。
 
高安大動脈炎による肺動脈炎、それに伴う肺梗塞と診断した。
 
 
 
D-dimer正常であり、いわゆる肺血栓塞栓ではなく、肺動脈炎による肺梗塞と判断した。
 
 
プレドニゾロン1mg/kgにて治療を開始した。
 
 
※2015.7月、追記
 
Radiology. 1986Nov;161(2):329-34.
Takayasuarteritis: radiographic and angiographic findings in 59 patients.
Yamato M, et al.
 
古い日本からの報告で59例中21例に肺動脈造影がなされ、18例(86%、全体の31%)に肺動脈炎を認めたというものがありました。これら18例の肺動脈炎の分枝に葉間・左右の差はなかったとされていました。18位例中11例に上葉の閉塞が認められました。
 
Int J Cardiol.1996 Aug;54 Suppl:S177-83.
Pulmonary arteryinvolvement as first manifestation in three cases of Takayasu arteritis.
Nakabayashi K, et al.
 
肺動脈炎が初発症状となった高安3例。2例が右肺動脈主管部の閉塞、1例が左下葉の閉塞が見られました。昔の症例は重症だったんですね。
 
 

 

 ps;↓でGCAのreviewを執筆させていただきました!


 

 

以下でEGPAのreviewを執筆をさせていただきました!