リウマチ膠原病のQ&A

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PMRのGold standard 「PMRとはなんぞや」

リウマチ性多発筋痛症(PMR)の2012年暫定的分類基準の分類基準ですが、暫定的と言うだけあって、検査特性が今一つです(感度66-68%、特異度78-81%)。
 
 
 
 
最近、高齢発症RAと鑑別が難しいケースが多く、PMRとはいったい何なんだろうと思ってしまいます。
 
 
 
そこで、この分類基準を評価した前向き試験のGold standardたるものを勉強しようと思って調べてみました。
 
 
 
ACR/EULARのPMRの専門家が集まって、決めた「PMR」の定義とは?
 
 
 
この度はそこに迫ってみます。
 
 
 
Ann RheumDis 2012;71(4):484-92.
 
2012provisional classification criteria for polymyalgia rheumatica: a EuropeanLeague Against Rheumatism/American College of Rheumatology collaborativeinitiative.
 
DasguptaB, et al.
 
 
 
 
Studypopulation
 
研究は前向きコホート研究であり、新規発症のPMRの患者のコホートPMRを真似する様々な非PMR患者の比較コホートを含む。対象はヨーロッパ10カ国と米国における地域密着型の病院とアカデミックリウマトロジークリニック、計21施設からリクルートされた。
 
PMR患者のInclusion criteria50歳以上、および新規の両側性の肩の疼痛とし、いかなる理由であっても登録前12週間以内にステロイド治療を受けていないこととした。私たちの過去の報告において定義されたInclusion criteriaExclusioncriteriaの全てのを満たすものとし、その患者がPMRを有していると参加した調査者による判断に合致していることとした。(ref18)
 
様々な重症度の範囲にわたって患者を集められるよう最善の努力をした。PMRステロイド治療はあらかじめ決められた治療プロトコールで始められた。すなわち、第1-2週はプレドニゾン15mg、第3-4週は12.5mg、第6-11週は10mg、第12-15週は10mg7.5mgの隔日投与、第16-25週は7.5mg26週以降は治療反応性に応じ減量するものとした。ステロイド治療前のPMRの診断のゴールドスタンダードは診察時には上記のように確立され、その診断が26週間のフォローにおいて代賛の診断がつかずに残っている時に確立された。
 
PMRの比較コホートには一次・二次の医療機関においてPMRと区別すべき代表的な病気を含んだ。非PMR比較コホートInclusion criteria50歳以上の新規発症の両肩痛で、炎症性・非炎症性のいずれもの診断とした。これには新規発症のRA膠原病、様々な肩の病気(両側性の回旋筋腱板症候群and/or癒着性関節包炎、腱板断裂、肩のOA)、線維筋痛症、全身性のOAなどを含む。ベースラインの評価より12週より長く病状を有することが分かっている患者はInclusionの資格がないこととした。ただし、線維筋痛症と慢性疼痛は別とした。GCAの疑いがあるPMR患者は比較コホートに含めた。これらの患者では必要なステロイドの投与量が異なるからだ。比較コホートの患者は公式な基準ではなく、臨床医の診断に基づいて登録された。比較コホートにおける病気の治療のためのガイドラインは提供されなかった。
 
 
 
(ref18) Inclusion criteriaExclusion criteriaを定義したという研究(アンケート調査)が以下の論文です。さっそく飛んでみましょう。
 
 
 
Developingclassification criteria for polymyalgia rheumatica: comparison of views from anexpert panel and wider survey.
 
JRheumatol 2008;35(2):270-7.Dasgupta B, et al.
 
 
 
 
MATERIALSAND METHODS
 
可能性のある分類基準が専門医の召集によるミーティングの利点、およびデルファイ型のメール調査による広範囲な協議に基づき、3段階のハイブリッド・コンセンサス・アプローチにて開発された。。(Figure 1)
 
最初のステージは20057月の第3PMR+GCA国際会議における専門医の国際委員会の召集によるミーティングからなる。専門医にとって同意が得られる定義はない中で、2人の著者(BD, ELM)と会議の組織委員会がその会議の参加者の中から包括的でなく目的にかなった個人にその委員会への参加を依頼した。選考プロセスはPMRに興味を持つリウマトロジスト(PMRの研究において有意な貢献をしているような)、その他のリウマトロジスト、プライマリケア医、方法論者、統計学者も含めて国際グループをなす委員会を作ることを目的とした。招待されたパネリストたちも追加で招待する人物を提案するよう依頼された。全てのパネリストがPMRの診断(エコーのような画像法も含め)と治療の研究の包括的な文献レビューを提供された。そのミーティングで促されたことはPMRの分類に少しでも有用かもしれない基準の広範なリストを作ることであった。そのミーティングの後、委員会のメンバーが可能性のある基準の有用性を匿名で重み付けできるよう質問票が作られ分配された。例えば、パネリストは分類のひとつの基準として朝のこわばりの重み付けするよう求められた。各々のアイテムにおいて、コンセンサスの程度が> 90%>80%> 50%の支持という具合に分類された。
 
2ステージは200511月のACR年次科学会議においてもうひとつの専門医委員会の召集会議を開いた。このミーティングにおいてパネリストは重み付けに関する最初のラウンドの結果を提供された。全ての可能性のある基準、それらの重み付けが促進会議の間に評価され、パネリストは再度アイテムの重み付けをするよう求められた。
 
3のステージにおいて、Round2において専門医パネルによって50%を超える指示が得られたアイテムを広く容認することが評価された。その他のリウマトロジストと非リウマトロジストを対象としたメール調査を用いて。リウマトロジストはACR(アメリカ人でないメンバーを含む)とイギリスリウマチ協会のメンバーリストよりランダムに選出された。非リウマトロジストはエッセクスとイングランドのプライマリケア医、眼科医、ミネソタ、ウィスコンシン、アイオワの家庭医と総合内科医のリストからランダムに選ぶことで補充された。アイテムは回答者の95%80%がその項目の重要性を指示した時、各々「完全なコンセンサス」、「コンセンサス」とみなされた。
 
加えて、同時に簡単な調査が行われた。これはPMRの調査における画像法に関する最初の専門医委員会である。質問票がPMRワークグループのなかの25人のリウマトロジストに送られた。PMRの患者を評価するためのMRI、エコー、PETの重要性(基本的、重要性が少ない、重要でない)と実現性(ルーチンで入手できる、常には入手できない、入手できない)に関する彼らの見解を評価するために。
 
 
 
Statisticalmethods.
 
記述統計学を用いて調査の回答を要約した。各々のアイテムにおいて同意の重み付けが全ての回答のなかあの賛成的な回答の数として評価された。データがない場合は回答がないものとして扱い、同意の重み付けの計算から除外した。>95%の賛成が得られたアイテムはコンセンサスのあるアイテムと考えた。χ二乗検定を用いてワークグループのメンバーとリウマトロジストと非リウマトロジストの回答者の間で比較された。
 
 
 
RESULTS
 
Round 1の専門医パネルには27人の参加者がいた。その多くが研究に積極的なリウマトロジストと内科医(付録)であった。促進された会議の間、専門医パネルはPMRの分類基準を作るプロセスを支持する4つの鍵となるポイントに同意した。最初にPMR分類基準を作る目的は多発筋痛(疼痛とこわばり)を呈するその他の疾患を除外することであること。第2PMRの診断はステップを踏んだプロセスであることについて同意があった。すなわち、臨床所見、診察所見、ラボデータに基づいて多発筋痛症候群を呈する患者のInclusionExclusionに始まるプロセス。第3PMRの診断を確立する上でステロイド治療に対する初期の反応の重要性を認識した。最後に委員会は現存する研究のエビデンスがないため、いかなる候補となる基準も前向き試験において評価されるべきであることに同意した(Table 2)
 
これらの主旨とさらなる協議はPMRを分類するための特異的な可能性のある基準を支持するレベルを同定し評価するための質問票を作るように向けられた。
 
Round 1において候補となりうる基準は合計68同定され、専門医パネルによって重み付けされた。そのうち>50%のコンセンサスを得たのは50の基準であった。Availabilityの問題でコンセンサスが少なかった基準はサイトカイン測定とPET検査であった。
 
Round 2において27人の専門医の参加者がRound1>50%の支持を得た50のアイテムに関する促進会議のために再度集まった。非公式に再度重み付けを行った後、50%以上の重み付けを達成したのは43のアイテムであった。そのうち10アイテムは100%の支持であった (Table 3)
Round 3は調査の延長であり、これらの43の可能性のある分類基準の項目からなる質問票が190人のリウマトロジストと85人の非リウマトロジストにメールされた。回答はリウマトロジスト111 (58.4%)から得られた。49人が米国、62人が15のヨーロッパの国とカナダ。非リウマトロジストからは53 (62.4%)から得られ、29人が米国、24人が英国。
専門医委員会の100%の支持を得た10のアイテムのうち7項目は調査の回答者から少なくとも70%の支持を得た(Table 3)。支持が少なかった3つのアイテムは1週間未満の突然発症(25%)、全身症状・所見(38%)、頸部の疼痛(35%)。身体所見の中では回答者の>70%が動作時の肩 (84%) and/or 動作時の股関節 (76%)の疼痛と制限を評価することの重要性について専門医に同意した。しかし、手根管症候群、腱鞘炎、末梢の関節炎のような末梢のサインには同意が低かった。両群とも75%以上が多発筋痛症候群の分類基準の研究においてRALupus、血管炎、炎症性筋疾患、化膿性関節炎、活動性の新生物(活動性の感染症と癌はコアとなる除外診断)、活動性の甲状腺疾患、薬剤性の筋痛症の診断はPMRの診断を除外するものであろうことに同意した。
リウマトロジストと非リウマトロジストの間にはPMRの認識にいくらかの注目すべき違いがあった。10のコアアイテムでは両者に違いはほとんどなかった(Table 4)。しかし、朝のこわばりの価値について同意は低かった。それを大切な基準と考えたのはリウマトロジストでは77%、非リウマトロジストでは57%のみであった(p = 0.016)。両群とも100%近くが低用量ステロイドに対する急速な反応の重要性に同意した。非リウマトロジストは抗CCP抗体を重要と考えにくかった (40% vs 24%; p = 0.09)。診察所見では非リウマトロジストは以下を重要に考えなかった;遠位の四肢の腫脹 (33% vs 17%; p = 0.04)、腱鞘滑膜炎(36% vs 7%; p < 0.001)、末梢の関節炎(45% vs 17%; p = 0.001)。むしろ肩の圧痛(58% vs 90%; p < 0.001)、股関節の圧痛 (50% vs 82%; p < 0.001) に重きを置きやすかった。除外診断の中でリウマトロジストと非リウマトロジストは活動性甲状腺疾患(80% vs 61%; p = 0.015)、パーキンソン病(52% vs 36%; p = 0.08)の除外の重要性において幾分同意が不一致であった。両群とも80%以上がRALupus、血管炎、炎症性筋疾患、化膿性関節炎、活動性の新生物、薬剤誘発性筋症の除外に重きを置くことにおいて一致した。
画像に関する調査の結果はMRIPETにはPMRのルーチンの検査としてavailabilityに制限があることを示唆した。すなわち、リウマトロジストの86%、非リウマトロジストの70%がそのように回答し、肩のMRIPMRの評価に必須であると感じたのは14%のみであった。反対に65%のリウマトロジストが筋骨格エコーがルーチンで行うことができると回答した。
 

Table 3専門医ワークグループと調査の回答者の結果(10のコアアイテムを太字で示す)

 

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<分類基準作成に用いたPMRのGold standardとは>
・PMR患者のInclusion criteria50歳以上、および新規の両側性の肩の疼痛とし、いかなる理由であっても登録前12週間以内にステロイド治療を受けていないこととした。以下の報告(ref18)で定義されたInclusion criteriaExclusion criteriaの全てのを満たすものとし、その患者がPMRを有していると参加した調査者による判断に合致していることとした。
 
(ref18にInclusion criteriaとして記載されているものはなかったのですが、おおむね)Table 3の所見を呈し、exclusion diagnosis(※)が除外できている症例にステロイド治療を行って(PSL 15mg 2wks12.5mg 2wks10mg 6wks10mg7.5mgの隔日 4wks、7.5mg 10wks)、26週後に代賛の診断がつかずにPMRの診断が残っているもの。
 
(※)関節リウマチ、およびその他の炎症性疾患、全身性エリテマトーデス、血管炎、炎症性筋疾患、変形性関節症(股、肩)、化膿性関節炎、およびその他の感染性の関節炎、癒着性関節包炎、悪性腫瘍、線維筋痛症、またはその他の慢性疼痛症候群、活動性の甲状腺疾患、代謝性骨疾患、パーキンソン病、薬剤性の筋痛・関節痛
 
 
<リウマトロジストのコメント>
PMRのGold standardにTable 3の末梢のサインも含まれていたものと思われます。
末梢のサインをPMRの症状としてよいと考える割合は委員会メンバー(専門医)、ランダムセレクトの専門医(通常の専門医)、非専門医によって異なります。
 
 
Table 3-4(を抜粋して合成)
 
  専門医パネル 通常の専門医 非専門医
手根管症候群 70% 13% 7%
末梢の腫脹 78% 33% 17%
腱鞘滑膜炎 81% 36% 7%
末梢の関節炎 63% 45% 17%
 
 
 
末梢のサインをPMRの所見としてよいと考える専門医の割合は「委員会パネル」では>50%、「通常の専門医」では<50%でした。
 
 
これは「末梢も含めPMRの症状としてよい」と考えている専門医と、「末梢が有意であればRAでしょう」と判断する専門医がいることを表しているのではないかと思います。
 
 
私たちのような「通常の専門医」ではPMRでも末梢の関節炎を呈してもいいと考える人が45%います。しかし、手根管症候群や関節以外の末梢の腫脹をPMRの症状としてよいと考える人は少数派です。
 
 
一方、専門医パネルは末梢の関節炎を許容する人は63%もいて、それ以上に腱鞘滑膜炎、手根管症候群や末梢の腫脹を重要視していることが分かります。
 
 
ひょっとすると、「通常の専門医」がPMRと一旦思ったら、末梢の所見を注意深く見ていないことを表すデータなのかもしれません。