リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

PMRの暫定的分類基準(2012)

リウマチ性多発筋痛症の分類基準が2012年に出ましたね。
 
Ann Rheum Dis 2012;71(4):484-92.

2012 provisionalclassification criteria for polymyalgia rheumatica: a European League AgainstRheumatism/American College of Rheumatology collaborative initiative.

Dasgupta B, et al.
 
診断目的に使うものではないとされていますが、厳密な意味で診断基準を作るなんて無理なわけですから、やはりこの分類基準を臨床現場では使うことになるわけです。
 
でも、使うときには以下の3点を心にとどめておきましょう。
 
・特異性が低い基準であること(78%、エコー足しても81%)、
 
・RAとの鑑別にはあまり役立たないこと(RAの35%が臨床基準を満たす)
 
・エコー所見の検査特性も良くないこと(Table 5参照)
 
 
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リウマチ性多発筋痛症(PMR)の2012年暫定的分類基準
 
Abstract
本研究はのEULAR/ACR分類基準を作成するために行った。候補となる基準は6ヶ月間の前向きコホート研究にて評価された。このコホートの内訳は新規発症のPMR125例、PMRに似た症状を呈するPMR以外の比較対照群169例。スコアリングアルコリズムが作られ、朝のこわばり>45分(2ポイント)、股関節の疼痛・ROM制限(1ポイント)、RF and/or CCP抗体陰性(2ポイント)、末梢の関節炎(1ポイント)。4点以上のスコアの感度は68%PMRから全ての比較対照群を区別する際の特異度は78%PMRからその他の肩の病気を区別する際の特異度は88%と高いが、PMRからRAを区別する上では65%と低かった。USを加えて5点以上のスコアは感度66%、特異度81%。これらの暫定的な分類基準によって、50歳以上の患者が両肩痛を訴え原因がわからない場合、朝のこわばり>45分、CRPand/orESR上昇、新たな股関節痛があれば、PMRと分類される。この基準は診断目的で使われることを意図したものではない。
 
(Table 6)
 
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Table 6. PMR分類基準のスコアリングのアルゴリズム;必須項目は50歳以上、両肩の疼痛、CRP and/or ESR上昇
 
エコーを使わない場合のポイント
(2点)朝のこわばりの時間 > 45分
(1点)股関節の疼痛または可動域制限
(2点)RFやACPAが陰性
(1点)その他の関節炎がないこと
 
エコーを使う場合のポイント
(2点)朝のこわばりの時間 > 45分
(1点)股関節の疼痛または可動域制限
(2点)RFやACPAが陰性
(1点)その他の関節炎がないこと
(1点)少なくとも一つの肩において三角筋下滑液包炎 and/or 二頭筋腱炎 and/or 肩関節滑膜炎
 AND 少なくとも一つの股において股関節滑膜炎and/or転子滑液包炎
(1点)両肩において三角筋下滑液包炎 or 二頭筋腱炎 or 肩関節滑膜炎 
 
エコーを用いない場合のアルゴリズムでは、4点以上でPMRと分類し、エコーを用いる場合のアルゴリズムでは5点以上をPMRと分類する。
 
 
(Table 5)
 
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Table 5
PMR120例、対照群154例(RA 46例、肩の病気47例)、肩の病気のない人21例 におけるエコー所見
 
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<リウマトロジストのコメント>
 
PMRと五十肩を迷う人はいませんよね。リウマチ外来ではRAを対照群においたときの検査特性が重要です。
 
Table5から、各々のエコー所見が見られる頻度を↓に書き出してみます。下線の所見は基準に含まれていて1点が加算されることになっています。
 
At least 1shoulder with subdeltoid bursitis, biceps tenosynovitis, or glenohumeral synovitis
PMR 83% vs RA 78% (NS)
 
Both shoulders with subdeltoid bursitis, biceps tenosynovitis, or glenohummeral synovitis
PMR 59% vs RA 65% (NS)
 
At least 1 hip with synovitis or trochanteric bursitis
PMR 38% vs RA 30% (NS)
 
Both hips with synovitis or trochanteric bursitis
PMR 19% vs RA 9% (NS)
 
At least 1 shoulder and 1 hip with findings as above
PMR 33% vs RA 17% (p<0.05)
 
 
お気づきになりましたでしょうか・・・Both shoulderはPMRよりもRAの方が満たしやすいのです。
1 shoulder + 1 hipがあればPMRの可能性が少しあがりますが。
 
・・・では、どうやって、RAとPMRを区別したらよいのでしょうか?
 
とくに、高齢者のRA(Elderly onset RA)はしばしばPMR様の発症をすることがあります。
 
その辺については、また次号で!
 

 

ps;↓ですが、執筆協力しております!