<Clinical scenario>
28歳女性 SLE
主訴 尿閉
病歴
2年前、頬部紅斑、円盤状皮疹、無痛性口腔潰瘍、ANA、Sm、低補体血症を認めSLEと診断された。
皮膚症状が主体であり、ステロイド軟こうにて治療された。
1ヶ月前、皮疹の悪化、発熱のため、PSL 20mgを開始された。
6日前より尿が出にくい。
5日前に下痢。
4日前、救急病院を受診。導尿にて500ml排尿した。
その後も尿閉が持続し、5時間前に急激な腹痛が出現したため来院。
BUN40/Cr4.6;導尿にて排尿あり、その日の夕方にはUN30/Cr1.2に改善。
(症例は架空です)
< 疑問発生!>
ループス膀胱炎について勉強しよう。
<RareものはPubmedで>
UptodateでLupus cystitisを検索しましたが、良い見出しがありません。
Pubmedにてlupuscystitis[title]を検索し、EnglishでLimitsすると27件、
その中で最近のレビューを見つけました。
Comparison between Japanese and non-Japanese features of lupus cystitisbased on case reports including novel therapy and a literature review.
Intern Med. 2011;50(9):961-8.
Abstract
OBJECTIVE:
目的はループス膀胱炎の特徴を決めること、日本のケースを日本以外のケースと比較すること。ステロイドに耐性のループス膀胱炎に対する新しい治療も報告する。
METHODS:
文献検索のためループス膀胱炎の報告例をMEDLINEとICHUSHI webで検索した。Inclusion criteriaはSLEの分類基準ACR 1997を満たす間質性膀胱炎であり、画像(CTまたはエコー)で分かった水腎症またはループス膀胱炎に合う膀胱の組織像を呈するものとした。分類基準を満たさない間質性膀胱炎は除外した。患者背景と臨床データは文献から得られ、解析された。
RESULTS:
自験例2例を含む計78例のループス膀胱炎隔日例が検出された(日本人以外35例、日本人43例)。女性が90.7%。穿孔する消化管症状とそれに続く尿路症状が最も頻度が高かった。抗dsDNA抗体が最多で76.1%。平均年齢、嘔吐の頻度は日本人例で日本人以外と比べ有意に多く、CNS症状の頻度は日本人例で有意に低かった(p=0.03, 0.04 and 0.001)。自験例のステロイド抵抗性の1例に新しい治療 (cetirizine hydrochloride)を行った。
CONCLUSION:
ループス腸炎、女性、dsDNA抗体陽性がループス膀胱炎のリスクファクター。日本人のケースは年齢が高く、嘔吐の頻度が高く、CNSループスが少なかった。ステロイド抵抗性のループス膀胱炎に新しい治療、cetirizinehydrochlorideが有効であった症例を報告した。
Table 3
(日本人の報告例のまとめ;小数点を四捨五入)
・症状の順番
尿路と消化管症状が同時 26%
尿路症状→消化管症状 7%
消化管症状→尿路症状 33%
どちらもなし 5%
・消化器症状
嘔吐 76%
下痢 81%
腹水 37%
・その他
腎炎 54%
CNS 2%
・ステロイドの反応性 64%
<リウマトロジストのコメント>
日本と海外の比較はいかがなものかと思いました。日本の症例は英文誌と日本語、海外の報告は英文誌に限っており、検索条件に違いがあるからです。
細かいことはさておき、最近のReviewにおいて日本人の過去の報告例では、
・ループス膀胱炎の症状 = 嘔吐 8割、下痢 8割、腹水 4割。
・消化器症状先行が3割、同時が3割、尿路症状先行は1割未満。
・ステロイド治療による改善は6割。これはPublication biasを忘れてはいけませんが。
<Scenario caseの経過>
腎炎やCNSはなかった。
まずは、ステロイドパルス療法を開始した。
(その後)
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