リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

IgG4関連炎症性腹部大動脈瘤

Clinical Scenario
70歳女性、腹部大動脈瘤の術後(Yグラフト)
 
大動脈の病理にて、中膜から外膜に形質細胞浸潤、結合組織増生が顕著にみられた。形質細胞はIgG4陽性であり、10/hpf以上に認められた。
 
PETを含む諸検査にて大動脈瘤以外の臓器病変なし。
 
IgG4関連の腹部大動脈瘤疑いとして紹介された(術後2カ月)。
 
現在症状なく、診察上も異常なし。耳下腺・顎下腺・涙腺の腫脹はなし。
 
(症例は架空です)
 
さて、勉強しよう。 
 
 
Uptodate
Overview of IgG4-related disesases
 
Aortitis and periaortitis —
IgG4-RDは非感染性大動脈瘤の原因の一つとして認識されてきた。胸部リンパ形質細胞性大動脈炎または炎症性腹部大動脈瘤+腹部大動脈周囲炎のシリーズが大動脈切除を行った患者の後ろ向きの病理学的研究において発見された。
 
IgG4-related thoracic aortitis
アメリカのある病院で5年間で胸部大動脈切除を行った638例の研究において、リンパ形質細胞性大動脈炎の4例のうち3例がIgG4-RDの病理学的な特徴を示した。これら3例は非感染性大動脈炎ンの研究において同定された33例のうちの9%であり、胸部大動脈切除をした患者の0.5%。これら3例とその他に報告された3例は全例男性で65-74歳。
 
同様に、日本の病院から報告された125例のシリーズにおいてIgG4関連大動脈炎は胸部大動脈切除を行った120例中2例(1.6%)。動脈硬化性変化を伴い大動脈外のIgG4-RDの病変を有さない追加の3例も同様にIgG4陽性形質細胞の浸潤を有した。顕著な動脈硬化性変化を有する患者もIgG4-RDに含めて良いかについては未定。
 
 
IgG4-related abdominal aortitis –
日本のある医療センターで15年間に同定された炎症性腹部大動脈瘤の患者10例中4例がIgG4陽性形質細胞の浸潤とIgG4高値というIgG4-RDに一致した所見を示した。患者の年齢は58-72歳。炎症性腹部大動脈炎は後腹膜線維症に関連した。
 
 
Pubmed
この度はUptodateの記載が限られているのではないかと思って、はじめからPubmedから検索をしていました。
 
(abdominal aortic aneurysm) AND IgG4[title]で検索しEnglishで絞って16件。
 
日本人による素晴らしい臨床研究に出会いました。free downloadです
 
J Vasc Surg. 2009 May;49(5):1264-71
A new clinicopathological entity of IgG4-related inflammatory abdominal aortic aneurysm.
 
OBJECTIVE:
近年免疫グロブリンG4IgG4)と特発性の硬化性病変との関連が多いに注目されている。IgG4-RD膵臓に関連した疾患(自己免疫性膵炎)として報告され、多くの臓器に拡大した。私たちは過去に炎症性腹部大動脈瘤IAAA)がIgG4関連疾患のひとつの症状であるかもしれないことを報告した。この研究で私たちはIgG4関連IAAAの臨床的特徴を明らかにしようとした。
 
METHODS:
対象はIAAA23例と動脈硬化性腹部大動脈(AAA40例。臨床所見、Labo、病理所見を調査した。13例は組織学的にIgG4関連IAAAに一致した。
 
RESULTS:
IgG4関連IAAAAAAの全手術例の5%IAAA57%。非IgG4関連IAAAと比較し、IgG4関連IAAAは腹痛や背部痛の頻度がより少ないことが特徴的であった。血清IgG4濃度はIgG関連IAAAで有意に高かった。興味深いことにIgG4関連IAAAはしばしば薬剤アレルギーのようなアレルギー体質、自己免疫疾患、血清IgE高値、ANA高値を示した。病理学的にIgG4関連IAAAは外膜の有意な肥厚とより多くのIgG4陽性形質細胞浸潤によって特徴づけられた。非IgG4関連IAAA3例が初診時に動脈瘤の破裂を呈したが、IgG4関連のケースではゼロだった。
 
 
CONCLUSION:
IgG4関連IAAAという新しい疾患概念を認識することは重要である。臨床的、病理学的に動脈硬化AAA、非IgG4関連IAAAと異なるからだ。
 
 
Table 1-3のまとめ
 
AAA炎症性AAA
動脈硬化炎症性IgG4関連非IgG4関連
n4023p値1310p値
年齢75690.0057069NS
微熱8%39%0.00238%40%NS
腹部・背部痛13%26%NS8%50%0.025
破裂8%13%NS050%0.038
自己免疫疾患13%35%0.02754%10%0.025
薬剤アレルギー13%26%NS38%10%NS
WBC59388369<0.00187397890NS
CRP0.43.1<0.0012.63.8NS
Alb4.23.3<0.0013.43.3NS
IgG436.9173.2<0.001273.522.80.034
IgE212.5685.40.0291124.327.10.041
ANA>404%40%0.03950%25%NS
ANA>3202%20%0.01933%0%0.023
 
Table 4. 動脈硬化性、炎症性腹部大動脈瘤の病理学的所見
イメージ 1
 
Clinical Scenarioの経過>
診断についてはIgG4関連の炎症性腹部大動脈瘤でよいと判断した。
 
薬剤アレルギーはなし。ANAは陰性。
 
術後のIgG4は正常であった。術前の血清は入手できなかった()。
 
この度、検索する限り、追加治療に関する記載はなかった。この方の治療も腹部大動脈瘤の切除だけで十分と判断した。
 
著者らは別のレビューにおいて手術のみでIgG4高値が正常化したという経験もあると記載しています。