リウマチ膠原病のQ&A

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Segmental arterial mediolysis (SAM)のSR -Introduction to methodsー

SMAの壁肥厚と複数の動脈瘤を来たした症例を経験し、久しぶりにPANのやっかいな鑑別疾患である、SAMを勉強しようと思いました。

 

以下、Differential diagnosisには聞いたことがあるようなないような病気たちが出てきますね。※ Referenceに引用を示していますので、元気のある方はチェックしてみてください。

 

 

Segmental arterial mediolysis (SAM): Systematic review and analysis of 143 cases.

Skeik N, et al. Vasc Med. 2019 Dec;24(6):549-563.

 

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31793853/

 

Introduction
Segmental arterial mediolysis (SAM)は稀ながら重大な非動脈硬化性、非炎症性の原因不明の血管症。動脈壁の中膜の融解で特徴づけられ、しばしば解離や動脈瘤、閉塞、狭窄に至る。SAMは腹腔動脈、腸間膜、and/or腎動脈のような腹部大動脈の分枝を最もよく侵し、時に頸動脈、脳動脈、冠動脈を侵す。侵された動脈により、そして機序(狭窄を伴う解離versus破裂)により、SAMの患者は慢性の腹痛、急性の腸間膜虚血、あるいは出血性ショックを来たすかもしれない。過去の症例研究うによると動脈破裂と出血によって約2/3の患者がemergencyとなり、死亡率は~50%。

診断、管理、予後に焦点をあてた論文はなく、合併症と死亡率に関するデータは相反している。(略)

SAMの診断、管理、予後に関する論文の現在のギャップをフォーカスとして、私たちは2005-18のSAMのSRを行い、詳細な解析を行った。私たちのinclusion and exclusion criteriaに基づき、66の論文から126例を検出した。とくに診断ストラテジー、定義、血管のpathology、血管合併症、管理のストラテジーの報告をサマライズしようとした。自験例17例を加え、SAMの診断管理を助けるuptodateなデータを提供する。

 

Methods
Chart review at our center

ミネアポリスのAbbott Northwestern Hospitalを2000-17年に受診した18-60歳の1416例のカルテをレビューした。非動脈硬化性の腹部血管症(腎動脈、腹腔動脈、肝動脈、胃動脈、腸間膜動脈の動脈狭窄、壁肥厚、解離、動脈瘤、炎症性または偽性動脈瘤)を求めて。

患者はこれらの所見のいずれかに加え、問題となっている動脈に動脈硬化の画像所見を有さない場合、レビューに含まれた 。現在出版されているSAMの患者データに基づいて、60歳未満の制限を設けた。動脈硬化による病院を除外するため、この年齢は私たちのcriteriaによくfitするものであった。

 

Diagnosis
画像検査が多発性の腸間膜and/or腎動脈の解離and/or動脈瘤の所見を明らかにした場合は臓器梗塞の有無に関わらずSAMが考慮された。fibromuscular dysplasia (FMD)、localized vasculitis of the gastrointestinal tract (LVGT)、膠原病orその他の血管症が除外され、明らかな動脈壁肥厚がなく (< 3 mm)、炎症マーカーの上昇がない限り(ESR< 20 mm/h 、CRP < 5 mg/dL)。1例は動脈内膜の外側の融解によって内膜と外膜の間での解離のため解離性偽性動脈瘤を伴うSAMの病理所見を有していた。限局した特発性の病変や外傷性の病変を除外するため、私たちは多数の血管病変を有するものをSAMと診断とした。

より高度な動脈壁肥厚and/or炎症マーカーの上昇はLVGTやPANにより特徴的であるため、除外することとした。median arcuate ligament syndrome (MALS) を有する者は除外した。17例がSAMのinclusion criteriaを満たし(Table 1)、文献レビューに加えられた(合計で143例) .

 

Table 1. Chart review: patient characteristics (n = 17 men)

 

f:id:oiwarheumatology:20200815105748p:plain

Abd, abdominal; AC, anticoagulants; angio, angiogram; AP, antiplatelets; asympt, asymptomatic; BP, blood pressure medical management; coil, coil embolization; EV, endovascular intervention; IMA, inferior mesenteric artery; N/V, nausea/vomiting; revasc, revascularization; SMA, superior mesenteric artery

 

Differential diagnoses
全例が血管医療のスペシャリストによって最終診断を以下の基準に基づいて行われた。診断基準とはコンセンサス委員会あるいはexpert opinionに基づくものだ。

第1回FMD診断・管理のための国際委員会によって提唱された新しい基準の出版に先立って、私たちはFMDの診断とは、画像検査で

  • 腎動脈and/or extracranial cerebrovascular arteries頭蓋外の脳血管系動脈に狭窄、閉塞、解離あるいは動脈瘤が明らかであり、
  • 同時に‘string of beads’ appearance (multifocal FMD)あるいはcircumferential stenosis (focal FMD)を伴い、
  • 炎症マーカーや大動脈病へを伴わない

ものと考えていた。

focal single-organ vasculitis (SOV)限局性の単臓器性血管炎は常に推定される診断名であり、診断時だけではなく経過中ずっと全身性疾患の除外を必ず要するものだ。LVGTを含めるSOVの診断は診断時と6ヶ月間のフォロー中の両方で血管の炎症のデータがなくてはならない。LVGTは再発性の病歴や得られた消化管の所見(腹痛、嘔気・嘔吐、下痢、体重減少、下血を含む)と消化管標本で血管炎の組織学的証拠;あるいは高い確率で示唆する血管造影所見(ひとつ以上の消化管の血管におけるスムーズな区域性の狭窄、拡張、閉塞または動脈瘤)と3mm以上の動脈壁肥厚が得られている患者において考慮される。さらに動脈硬化・FMD・SAMを示唆する血管異常がない必要がある。炎症マーカーは正常にも高値にもなりえる。

血管型Ehlers–Danlos syndrome (type IV)は患者がVillefranche criteria を満たし遺伝子検査で確認されれば考慮される(18, 19)。
Loeys–Dietz syndrome (LDS) の診断は患者が両眼隔離症、口蓋垂裂and/or口蓋裂で、全体的な動脈の異常(動脈瘤、解離)を伴う場合に考慮される。診断はTGFβ受容体1or2、SMAD family member 3、TGFβ2or3をコードする遺伝子のheterozygousなmutationを示すことで確認される。これらはいずれも遺伝子検査で機能低下の蛋白を産生させたり、異なるLDS subtypeを提供する。(20)

SAMやLVGTではコンセンサスの得られた診断基準はない。SAMとLVGTのために私たちが用いた診断基準は過去の報告の多くと多いに一致するものだ。しかしながら私たちのSAMの経験に基づき、私たちは1つ以上の血管が侵されている患者を選択した。ひとつの血管のみ侵されている患者は限局性の動脈瘤or解離に分離した。

SAMとLVGTにおける炎症マーカーに関する基準は私たちの経験に基づくものだ。SAMに関連する解離を呈する患者の一部は炎症マーカーが陽性であり、LVGTでも全ての患者で上昇しているというわけではないであろうからだ。


Literature review
文献はPubMedで20050101-20180606に報告された全てのfull-textの英語論文を検出するようにレビューされた。SAMの系統的にレビューされた。Key search termには‘segmental arterial mediolysis’と‘segmental mediolytic arteriopathy’を含んだ。2005年からの症例をレビューすることにした理由はSAMがより認識されより診断が信頼できると考えたからだ。

 

Resultsへ

https://oiwarheumatology.hatenablog.com/entry/2020/08/16/000000 

 

※ Reference

14. Olin JW, Gornik HL, Bacharach JM, et al. Fibromuscular dysplasia: State of the science and critical unanswered questions. Circulation 2014; 129: 1048–1078.

 

15. Gornik HL, Persu A, Adlam D, et al. First International Consensus on the diagnosis and management of fibromuscular dysplasia. Vasc Med 2019; 24: 164–189.

 

16. Hernández-Rodríguez J, Molloy ES, Hoffman GS. Single organ vasculitis. Curr Opin Rheumatol 2008; 20: 40–46.

 

17. Salvarani C, Calamia KT, Crowson CS, et al. Localized vasculitis of the gastrointestinal tract: A case series. Rheumatol (Oxford) 2010; 49: 1326–1335.

 

18. Beighton P, De Paepe A, Steinmann B, et al. Ehlers-Danlos syndromes: Revised nosology, Villefranche, 1997. Ehlers-Danlos National Foundation (USA) and Ehlers-Danlos Support Group (UK). Am J Med Genet 1998; 77: 31–37.

 

19. Pepin M, Schwarze U, Superti-Furga A, et al. Clinical and genetic features of Ehlers-Danlos syndrome type IV, the vascular type. N Engl J Med 2000; 342: 673–680.

 

20. Blinc A, Maver A, Rudolf G, et al. Clinical exome sequencing as a novel tool for diagnosing Loeys-Dietz syndrome type 3.  Eur J Vasc Endovasc Surg 2015; 50: 816–821.