リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

巨細胞性動脈炎GCAにおける抗カルジオリピン抗体

Clinical scenario
75歳女性、主訴 頸周囲の痛み
 
跛行、頸動脈の圧痛を認め、組織学的にもGCAと診断された。
 
aPTT43と高値を認め、ひょっとしてと思って抗リン脂質抗体を追加したところ、以下の結果であった。
 
CL抗体IgG  36 (<10
 
CLβ2-GP- I抗体 12.6<3.5
 
ループスアンチコアグラント正常
 
(症例は架空です)
 
 
< 疑問、発生!>
巨細胞性動脈炎(GCA)の患者において、抗リン脂質抗体って意味ある?
 
 
Pubmedにて>
UptodateにてDiagnosis of giant cell (temporal) arteritisに抗リン脂質抗体の記載はありません。
 
そこで、Pubmedで以下を検索します。
*1 AND "Giant Cell Arteritis"[Mesh]
 
意味;(抗リン脂質抗体 OR 抗リン脂質抗体症候群AND 巨細胞性動脈炎
 
31件ヒットします。あまり研究されていないんでしょうね。。。
 
おーっと! 
 
ちょうどいいのを見つけました。
 
Anticardiolipin antibody levels predict flares and relapses in patients with giant-cell (temporal) arteritis. A longitudinal study of 58 biopsy-proven cases.
Liozon E1, Roblot P, Paire D, Loustaud V, Liozon F, Vidal E, Jauberteau MO.
Rheumatology (Oxford). 2000 Oct;39(10):1089-94.
 
Abstract
OBJECTIVE:
GCAの再燃と再発を見つけるための抗カルジオリピン抗体(aCL)の有用性を評価すること
 
METHODS:
連続した生検で証明されたGCA58例を調査した。血清のCRPaCLの値を診断時、外来受診時に測定した。aCLを一緒に測定した詳細な理由に応じて、全てのCRP上昇のエピソードが解析された。
 
RESULTS:
臨床的観察と血清aCLの評価の平均期間は各々34+/-18 and 24+/-11カ月。治療前の抗カルジオリピン抗体陽性率(IgG or 全抗体価≧20U)は27(46.6%) (mean 45.6+/-26 U/l, range 20-110 U)aCLの値は適切な治療によって1例を除く全例において<10Uに低下した。様々な遅れがあったが。永続的に疾患がコントロールされた患者は全例aCLの上昇は記録されていなかった。aCLの有意な上昇はGCAの再燃または再発時において20 of 27 (74%)で認められた。最初のaCL<20Uだった7例において12階の再燃のうち7回でaCLの有意な上昇が見られたのに対し、GCAと関連しない炎症性エピソード28回のうちaCLが上昇したのはゼロであった(P<0.0000001)IgM aCLは診断時に稀に認められたが、疾患活動性とは関連しなかった。
 
CONCLUSION:
血清aCLGCAの再燃・再発の検出において有用。感度、特異度はよく(74%100%)、感染からサブクリニカルな再燃を区別するのに価値がある。
 
 
< こたえ >
GCAにおいて抗リン脂質抗体の意義に関する研究は少なく、Uptodateにも記載はない。
 
2000年の報告で、抗CL抗体(IgG or 全抗体価≧20U)の感度は46.6%とされていた。
 
また、aCLの値はGCA疾患活動性に関連するかもしれない。
 
日本の測定方法とは異なるようですが。。
 

 
Scenario caseの経過>
APTTaCL、抗CLβ2-GP- I抗体をフォローしてみることにした。

ps;
本邦からの観察研究でも抗リン脂質抗体(抗CL、抗β2GP1抗体、LAC)を9/2438%)に検出しております。血栓症との関連はないということです。38%とは偶然ではなさそうです。
日本で一番大きい観察研究かと思います。九州医療センターのリウマチ科からの24です。
(Suematsu 2015)

 

ps

↓SLEの緊急病態

 

 

 

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*1:"Antibodies, Antiphospholipid"[Mesh] OR "Antiphospholipid Syndrome"[Mesh]