<Clinical scenario>
慢性炎症(CRP1~2)が2ヶ月続き、
Hb14、MCV93→Hb 9.9、MCV 93に。
(追加検査)
Fe 27↓ Ferr 305↑
Ret 96000 ↑(22000~83000)
Vitamin B12 106↓ (180-914)
葉酸5.0 (>4.0)
リウマチ性疾患をみる者にとって、貧血の鑑別は日常です。
多くは正球性または小球性で、原因はほとんどの場合、慢性炎症性です。
でも、MCVが正球性または大球性の場合は、慢性炎症に合併した巨赤芽球性貧血を考えなくてはなりません。
(症例は架空です)
<Uptodate>
Diagnosis and treatment of vitamin B12 and folate deficiencyのなかの、
Diagnosis of vitamin B12 and folate deficiencyとTreatmentを読みます。
Metabolite testing —
代謝の検査はCbl deficiencyが強く疑われる患者にとっておくべし。とくにCblレベルがボーダーラインの患者、説明のつかない神経症状、または説明のつかないMacrocytosis(大赤血球症)。治療できる認知障害を見つける時に必要であれば。血清HCは血清(および尿の)MMAと同様にCbl deficiencyでは上昇する;葉酸欠乏ではHCのみ上昇する。正常な血清レベルは以下。
Pernicious anemia —
内因子抗体の存在は悪性貧血の診断を強く確認するもの。感度50-70%、特異度は100%に近い。
ガストリン値上昇、ペプシノゲンI低値、ペプシノゲン I/ II比は悪性貧血の診断において感度が高い(90 - 92 %)。これらの検査は特異度が低い。これらの検査の追加は内因子抗体陰性の時に役立つかもしれない。
Additional testing — 赤血球の葉酸レベルとより高価な代謝の検査はボーダーラインの患者にとっておくべし(葉酸 2 - 4 ng/mL)。あるいはCbl、葉酸とも減少している疑いがある患者、葉酸レベルが容易に解釈できない時(最近の病院食や最近の食欲低下)。
TREATMENT
Folate deficiency — 葉酸欠乏はUSではそれほど稀ではないが、葉酸 (1 - 5 mg/日)で治療され、期間は1-4ヶ月間、あるいは完全に血液学的に改善が得れれるまで。1mg/日の投与量で通常は足りる。たとえ、栄養不良があるときであっても。これらの投与量は疾患の予防で用いられる200mcg/日(0.2mg/日)よりも明らかに多い(正常成人、アルコール依存症、高齢者、神経管欠損の予防)。
葉酸はCbl欠乏の血液学的異常を部分的に戻す。原因はよく分かっていないが、神経学的所見は進行するが。このように巨赤芽球性貧血の患者を葉酸で治療する前に、Cbl欠乏を除外しておくことが重要。治療を急ぐ時は血液の検体を適切な検査のためにとっておき、結果が分かるまで葉酸とVitamin B12の両方で治療をする。
葉酸はもし根底にある疾患が直せなくても継続してよい (例、先天性溶血性貧血)。Cbl欠乏の検査を繰り返すことは長期の葉酸投与を受ける患者では正しい。とくに、血液学的(例、大球性貧血、LDH上昇)and/or神経学的な悪化が起きた時。
Empiric therapy for folate deficiency — 血清葉酸を測定することの臨床的な価値は不明。このアプローチの制限は入院患者で測定された約3000の葉酸レベルのうち、低値が2.3%にあったという研究で証明されている。しかし、低値であることは患者のカルテの53%にしか記載されておらず、葉酸は24%にしか投与されていなかった。そういう患者を欠乏の検査を始めるよりもむしろ葉酸で治療することの方がコストパフォーマンスが良いであろうことを示唆した。
Cobalamin deficiency
Parenteral cobalamin —悪性貧血は典型的には非経口的なCblの投与で治療される。1mgを連日で1週間、ついで毎週1mgを4週間、ついで根底にある疾患が持続する場合(例えば悪性貧血、回腸末端の外科的切除)、毎月1mgを終生投与する。もし、Cbl欠乏の原因が除去できる場合(例えば、食事、薬剤、改善する栄養不良)、Cbl欠乏が完全に戻って原因も除去できたのであれば治療をやめてもよい。
上述の投与量より少ない量でも推奨がされているが(1000mcgの代わりに100mcg)、このOvertreatmentの可能性はほとんど有害な結果をもたらさない。なぜなら非経口のVitamin B12は安く、比較的安全で、過剰に投与された分は無害に尿中に排泄されるため。逆により少ない量では反応が遅くなるかもしれない。重症の神経学的疾患があり、不可逆性の神経障害が懸念される時には危険かもしれない。
Oral and nasal formulations —非経口投与と同様に有効であるようにみえるが、患者のコンプライアンスを要する代賛の方法は経口の高用量コバラミン。内因子機能に障害のある患者にこのアプローチをとることの合理性は効果の弱い二番手のCbl輸送システムがあることである。この方法は内因子を必要としないし、回腸末端の機能を要することもない。このシステムは一貫して1000-2000mcg/日という十分量のVitamin B12を長期間補充すると言うことである。吸収の程度は様々で悪性貧血の患者の一部にはより低い投与量は十分ではないかもしれない。同様に徐放剤のCblの使用も避けるべきである。
ごくわずかなRCTにおいて新たな患者に経口コバラミン(1000-2000 mcg/日)を使用することはVitamin B12欠乏における血液学的・神経学的な短期間の反応を得る上では筋注と同じくらい同等であることが分かった。
コバラミンは舌下でも鼻スプレーやジェルでも投与できる。舌下、鼻からの投与は十分に研究されておらず、入手可能な薬は高価。
Cobalamin responsive disease — 比較のない試験によってCbl, MMA and/or HCが正常値であるが、血液学的・とくに神経学的な障害がVitamin B12欠乏のによる治療後に改善した患者が少数ながら存在することが支持された。これらの観察が無関係のイベントの偶然の合併によるものである、あるいはプラセボ効果によるものであった可能性にわえ、この現象を説明するには二つの論がある。
●神経学的機能の障害に対する薬物の直接的な利益
Vegetarians — 純粋なベジタリアンと地中海料理(例えば動物性の食物が少ない新鮮な果物と野菜)をとる妊娠女性はCbl欠乏のリスクがあり、Cbl補充を要する必要がある。それを拒否する患者もいるが。授乳だけで栄養する計画をたてている妊娠女性も補充を要する。これらの胎児はCbl欠乏のリスクが母親よりもずっと高いからだ。
Gastric surgery — 食物に結合したCblの吸収不良のリスクは胃の手術の後に増える (例えば、胃の亜全的術、肥満症の治療手術)。経口Cbl大量をできれば胃を空にした状態で予防的に補充するのがよい。
Nitrous oxide exposure — 亜酸化窒素はCblを不活化し、麻酔で使用するとCbl欠乏の患者では神経精神的に急速な悪化をもたらすかもしれない。亜酸化窒素の麻酔を予定する患者はCbl欠乏のチェックをして曝露の前に治療されるべきだ。
●上昇していた血清鉄、間接ビリルビン、LDHの上昇は非経口のビタミンB12を投与して1-2日以内に急速に低下する;骨髄の赤血球生成はこの間に巨赤芽球性から正常芽性に変化する。加えて、患者は貧血の程度が変化するずっと前から健康であることを感じるかもしれない。
●早期の反応の間の低K血症は新しい造血細胞の生成の間にK利用が顕著に増加するため。治療の時に重症の貧血である患者において顕著かもしれない。その臨床的な妥当性は分かっていないが。そのような患者は最初の反応の間モニターされるべきであり、重症の低K血症はK補充で治療されるべきだ。
●患者に貧血があれば、3-4日の間網状赤血球の増加があり、1週間後にピークになるだろう。ついでHbの上昇とMCVの低下が出現する。Hb濃度は10日以内に上昇し始め、通常8週間以内に正常化する。反応の遅れ、十分でない反応は追加的な異常または診断が違うことを示唆するかもしれない。
●過分葉の好中球は10-14日後に消失する。
●神経学的異常がもしあれば、続く3ヶ月を超えて改善する。最大の改善は6-12ヶ月後に見られる。改善の程度は疾患の程度と期間に反比例する
Blood transfusion — Cbl欠乏の患者の貧血はゆっくり出現するため、酸素の分配が代償性になされる。高齢者でもよくHb 5g/dLもの値までの重症貧血に耐用できているかもしれない。輸血をする決定はとくに心不全のリスクにある高齢患者では難しい。なぜなら、心不全とHC上昇との関連はもちろん、慢性貧血による血漿ボリュームがすでに増えていること、冠動脈疾患の様な併存疾患の存在のため。
貧血が重症で重症であり、循環血漿量が心配であれば、1単位を最初に非常に緩徐な速度で利尿剤と一緒に開始してもよい。究極の状況では同じボリュームを交換してもよい。すなわち、患者の血液の1単位(Hctが低い)を同時に1単位(Hct 60-80)を点滴するというものだ。
※補足1
Cobalamin levels — いくつかのラボの商品はCblの測定に異なった検査法を用いている(Chemiluminescence or radioassay)。結果として正常値は異なり、Gold standardはない。したがって、検査結果が臨床診断と相反するときにCblの治療を試しに行ってもよい。
●competitive-binding luminescence assay (CBLA)におけるCblの異常高値は血清の内因子阻害抗体の値が高い時はみられてもよい。内因子阻害抗体の存在はCBLAが臨床診断と異なる時には疑われる。
●サブクリニカルなCbl欠乏(Cblの値は低いが、症状を伴わない軽度の検査異常、大赤血球症、好中球の過分葉やシリングテスト陽性)は厄介な問題だ。とくに、10-25%がCbl欠乏である高齢者。私たちのプラクティスはそういう患者は治療を行うというものだ。長期的な利益は分からないが。
※補足2
Overview - Searching for the cause にVitamin B12 deficiencyの原因が記載されています。
悪性貧血
胃切除・肥満症の手術Gastrectomy/bariatric surgery
胃炎
自己免疫性化生性委縮性胃炎
小腸疾患
Small bowel disease
吸収不良症候群
回腸の切除またはバイパス
Blind loops(盲係蹄)
広節裂頭条虫症
Pancreatitis
膵臓不全
Diet
厳重なベジタリアン
妊娠中のベジタリアンの食事
Agents that block or inhibit absorption
ネオマイシン
ビグアナイド系(eg, メトフォルミン)
N2Oの麻酔がメチオニン合成を阻害する
Inherited transcobalamin II deficiency
<Scenario caseの経過>