リウマチ膠原病のQ&A

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NOBILITY、ループス腎炎に対するObinutuzumab オビヌツズマブのRCT

B-cell depletion with obinutuzumab for the treatment of proliferative lupus nephritis: a randomised, double-blind, placebo-controlled trial.

Furie RA, et al.

Ann Rheum Dis. 2022 Jan;81(1):100-107.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34615636/

 

Introduction

増殖性ループス腎炎(LN)はSLEの中で最もコモンな臓器を脅かす重症病態である。治療のgoalは治療の毒性を最小限にしながら腎機能を温存し、腎代替療法の必要性を避ける事である。LN患者が15年以内に末期腎不全(ESKD)を発症するリスクは約20%であり、クラスIVの増殖性LNではさらにリスクが高まる。このリスクはここ20年で十分に下がっていない。強力な免疫抑制療法が使用できるようになったにもかかわらず。

 

B細胞は、SLE発症の重要なメディエーターとして認識されている。しかし、type Iの抗CD20抗体であるRituximabとOcrelizumabのplacebo対照無作為化試験では、標準治療の免疫抑制剤に加えた場合の完全腎反応(CRR)の割合の改善は認められなかった。[6-8] SLE患者へのRTX投与後、B cell depletionの程度に大きなばらつきが認められ、RTX投与後の末梢血中の残存B細胞の存在は、SLEおよびLNにおける臨床効果の低下と関連する [9-12]。SLEにおけるtype I 抗CD20抗体によるB細胞減少に対する抵抗性は、Fc受容体IIB(FcRIIB)を介したCD20の内在化、補体依存性の細胞障害、NK細胞の欠陥やFc受容体多型によるエフェクター細胞の関与の低下、抗体依存性の細胞食作用の後天的欠損によって生じる可能性がある [12-15]。

 

Obinutuzumabは、ヒト化抗CD20モノクローナル抗体で、type I 抗CD20抗体とは異なるCD20抗原への結合様式を持ち、エフェクター細胞上のFcRIIIへの親和性を高めるために糖鎖工学的に設計された抗体である。Obinutumabは、CD20の膜結合型脂質ラフトへの再分布やFcRIIBの活性化を行わないため、type I 抗CD20抗体と比較してCD20の細胞内移行が抑制される [14, 17, 18]。慢性リンパ性白血病および濾胞性リンパ腫の治療において、標準化学療法と併用した場合、RTXに対するObinutuzumabの臨床的優越性が示された [19, 20]。Obnutuzumabは、SLE患者サンプルにおいてRTXよりも優れたB細胞細胞傷害性とNK細胞の活性化を示し、マウスのLN治療においてRTXよりも有効であった[13,14,21]。

 

NOBILITY試験はObinutuzumabによるB cell depletionの強化はbackgroundの標準治療に追加した場合に標準治療単独と比較してCRR率を高めるだろうとの仮説を検証するために行われた。MMFステロイドによる治療を受けた増殖性LN患者を対象に、Obinutuzumabとplaceboを比較した第2相多施設共同DBRCTの結果を報告する。

 

Methods

Study design

この多施設共同DBRCTは、北米、南米、欧州、イスラエルの43施設で行われた。本試験は、Helsinki宣言とGood Clinical Practiceの原則に則って実施された。すべての患者がICを提供した。略

 

Patients

対象は18~75歳で、ACR分類基準1997によるSLEを有し、International Society of Nephrology/Renal Pathology Society 2003のclasss III or IV (class V合併は可)、active or active/chronic の LN をscreening 6ヶ月以内の腎生検で証明されており、24時間の尿採取によるUPCR>1、eGFR>30 mL/min/1.73 m2だった者。

※protocolの全文はonline supplemental fileに掲載。

 

Randomisation and masking

患者はObinutuzumab1000mgまたはplaceboの点滴を受けるよう無作為に1:1で割り付けられた。無作為化は、対話型Web応答システムを用いて行われ、人種(アフロカリビアン/アフリカ系アメリカ人 vs その他)および地域(米国 vs 非米国)により層別化された。無作為化コードは、患者と治験責任医師が治療割り付けのmaskingを維持できるように、インタラクティブなWeb応答システム内に保管された。sponsorは、52週目のdatabaseのロックまで、治療割り付けをマスクされた。

 

Procedures

Obinutuzumabは、注射関連反応のリスクを低減するために、盲検下でmPSL 80mg ivの前投薬後、1日目および2週目、24週目、26週目に1000mgを静脈内投与された。placeboに割り付けられた患者には、placeboのmPSLを点滴した後、1日目および2週目、24週目、26週目にplaceboの点滴が行われた。

 

全患者にMMF(目標量2~2.5g/日または同量のミコフェノール酸)が投与された。protocolで指示されたステロイド治療は、mPSL(合計1000~3000mgの静脈内投与)と経口ステロイド(初回PSN投与:0.5mg/kg/日、最大60mg/日、12週までに7.5mg/日へ漸減)があった。抗マラリア薬、ACE阻害剤またはARB、CaおよびVit Dを試験期間中、投与量を変えない事が推奨された。

 

すべての患者は104週目までblindで追跡され、B細胞減少が持続する患者についてはその後も安全性とB細胞測定について追跡された。尿蛋白排泄量(24時間採尿によるUPCR and/or 随時尿によるUPCR:できれば朝一番の排尿から測定)、血清Cr、自己抗体レベルおよび血清補体成分が4、12、24、36、52、76および104週目に評価された。末梢血B細胞は、baseline、2、4、12、24、52、104週目に測定された。検査は中央研究所で行われた。B細胞は、妥当化された6色の溶解/無洗浄フローサイトメトリーアッセイで測定された。補体はimmunonephelometryで、抗dsDNA抗体価はELISAで測定された。

 

Outcome measures

52週目のPrimary endpointは、CRRを達成した患者の割合。CRRの定義は

  1. UPCR<0.5
  2. baselineの血清Crが15%以上悪化していない正常腎機能(血清Cr≦ULN)
  3. inactive sediment(尿RBC<10/hpfで赤血球円柱なし)

の全てを満たす、というcomposite measure

 

baseline後にCyclophosphamide、Rituximab、Tacrolimus、パルス用量のステロイド(mPSL 500mg以上)のようなrescueを受けた患者、または試験から早期に離脱した患者は、その後のすべての反応エンドポイントについてnon-responderとみなされた。

 

52週目のMajor secondary endpointsは、

  1. 部分腎反応(PRR)を達成した患者の割合。PRRはbaselineからUPCRが50%以上減少して値<1(baselineのUPCRが3以上の場合は<3)& 血清Crがbaselineから15%以上増加しないこと & 尿中RBC<10/HPF or baseline値から50%以内の増加である事を満たすcomposite measureとされた。
  2. CRRまたはPRRを達成した場合に満たされる全腎反応(ORR)を達成した患者の割合、
  3. UPCR<0.5&Cr≤ULNを必要とするcomposite measureであるmodified CRR(mCRR)を達成した患者の割合、
  4. C3、C4および抗dsDNA抗体値のbaselineからの変化、CRRおよびORRまでの時間。
  5. 追加のprespecified endpointsはbaselineからのeGFRの変化(CKD-EPIのCr方程式による)、
  6. その他の時点における腎反応の達成度。
  7. Post hoc endpointsとして、UPCR<0.8g/gを達成した患者の割合が追加された(このカットオフ値の長期予後に対する予測することが示されたので)。

 

Statistical analyses

52 週目の CRR 反応者の割合をplacebo群 30%、Obinutuzumab群 50%(差は 20%)と仮定し、本試験で各群 60 例登録すれば、両側 αrレベル 0.2 の Cochran-Mantel- Haenszel(CMH)検定に基づき83%で有意差を検出できると予測した。Primary and secondary endopintsのtype I error率をコントロールするため、仮説検証はfixed sequence法を用いて行われた。この方法はPrimary endpointからあらかじめ指定された順序で順次進められ、前の評価項目でαレベル0.2の統計的有意性が得られた後に各評価項目を検証してよいこととした。探索的解析では、Type I error率はコントロールされなかった。有効性の解析は、試験薬を1回以上投与されたすべての無作為化患者からなるmodified ITT populationで行われた。安全性解析は、投与された治療法に従ってグループ分けされた。注射時反応は、Obinutuzumabまたはplaceboの点滴中または点滴後24時間以内に発生し、点滴に関連すると判断された有害事象と定義された。安全性の評価には記述統計学が用いられた。腎反応エンドポイントおよびその他のカテゴリ変数は、層別化因子を考慮したCMH検定で評価した。baselineからの変化量についてはbaselineの測定値および層別化因子を共変量とした共分散分析モデルで解析した。すべての統計解析はSAS, V.9.4を用いて行われた。独立したデータモニタリング委員会が、盲検化されていない中間データを定期的にreviewした。

 

RESULTS

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Figure 1. Patient flow diagram

 

Patients

患者の登録期間は2015.11月~2017.12月。最終的なデータ収集は2019/12/19。242例がscreeningされ、うち125人が無作為化され、MMFステロイドに加え、placebo(n=62)またはObinutuzumab(n=63)を投与された。

場所はLatin Americaとthe Caribbean(n=85)、Europe とIsrael(n=25)、the USA(n=15)。

screeningの失敗の最も一般的な理由は、登録の基準を満たせないことであった。

 

結果、115名(92%)の患者が52週間のprotocolを、103名(82%)の患者が104週間のprotocolを完了した(Figure 1↑)。

 

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女性は85%を占め、平均年齢は33歳。73%がHispanicまたはLatin系、43%が白人。74%がclass IVのLNで、残りはclass IIIのLNであり、30%にclass V LNを合併。baselineの平均値(±SD)は、UPCR: 3.12±2.56; 血清Cr: 0.84±0.33 mg/dL; eGFR: 102.0±31.7 mL/min/1.73 m2。baseline時の患者の疾患の特徴は治療群間で同様(Table 1↓)。

 

Efficacy

Obinutuzumab群はplacebo群に比べ、52週目にCRRを達成した患者の割合が有意に高かった(Figure 2↓、Table 2↓↓)

  • Primary endpointはObinutuzumab群63例中22例(35%)vs placebo群62例中14例(23%);% difference、12%(95% CI -3.4%-28%)、p=0.115)
  • 104週目(Obinutuzumab群 63例中26例(41%)vs placebo群 62例中14例(23%)、% difference、19%(95%CI 2.7-35%), p=0.026)

 

Obinutuzumab群では、52週、76週、104週でCRRおよびORR(CRR + PRR)、76週、104週でmCRRを達成した患者の割合が有意に多かった(figure 2↓)。

 

Figure 2  Renal responses over time. CRR, complete renal response; mCRR, modified CRR; MMF, mycophenolate mofetil; ORR, overall renal response.

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事前に指定していたsubgroup解析では、104週におけるObinutuzumabのplaceboに対する有益性は、baselineのUPCR≥3の患者と、class IV(vs class III)の患者で最大であった(table 2↓)。

 

class V合併例において、Obinutuzumabは52週時のCRRを増加させなかった。104週時でclass V合併の有無でplaceboに対するObinutuzumabの有効性は同等であった。

 

Table 2

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Post hoc解析の結果、Obinutuzumabはplaceboと比較して、104週目のUPCR<0.8の達成率が高かった(Obinutuzumab群 63例中45例(71%)vs placebo群 62例中28例(45%);%差、26%(95% CI 9.6% - 43%)、p=0.003)。(table 2↑)

 

Obinutuzumabはplaceboと比較して、4~104週目のC3、C4、抗dsDNA抗体、52~104週目のUPCRがbaselineから大きく改善した(table 2↑、figure 3↓)。

 

Obinutuzumabは、4週目および24~104週目のeGFRにおいて大きな改善をもたらした(adjusted mean difference、9.7 mL/min/1.73 m2(95% CI 1.7~18)p=0.017)。placebo群のみ、24~104週目まで平均eGFRはbaselineより低下した(Figure 3↓)。

 

Figure 3 ラボデータの変化. 

 

 

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※baselineからの平均変化においてmissing dataはLOCF法(治療失敗の場合、最後のデータを補う)で計算した。

 

  • 104週目までにObinutuzumab群 9人(14%)、placebo群 15人(24%)が1つ以上のrescueを受けた。このうちCyclophosphamideまたは抗CD20療法のrescueを受けた患者は、Obinutuzumab群6人、placebo群11人。
  • 初回(1日目)のPSN投与量の中央値は30mg/日、104週目までの経口および静脈内投与を含めたステロイド累積曝露量の中央値(IQR)はObinutuzumab群でPSN相当量 6561mg(5938-7473)、placebo群で6672mg(5785-7380)であった。
  • 第104週までのMMF投与量の中央値は両群とも2.0g/日。38名(30%)の患者が有害事象により1回以上のMMFの減量を要し、9名(7%)の患者が試験中のある時点でミコフェノール酸を投与された。

 

☛ここ大切!

Obinutuzumabにより、末梢性CD19+ B細胞は急速かつ持続的に≦5cells/μLまで減少した(Figure 4)。Obinutuzumab群では、1回の点滴後、2週目に98%がB cell depletionを達成し、52週目には94%が達成した。104週目ではObinutuzumab群とplacebo群で同様のB cell depletion(それぞれ16%、12%)であった。

 

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Figure 4 Proportions of patients with B-cell depletion (an absolute CD19 count ≤5 cells/μL) over time. 

 

Obinutuzumabではmemory B細胞、naïve B細胞、plasmablastsのdepletion、血清BAFFの増加も観察された(online supplemental figure 1↓)。

 

Supplemental figure 1. Mean peripheral B-cell subset and BAFF measurements

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Obinutuzumabは、placeboと比較してIgM値の急速かつ持続的な低下と関連していた。104週目で、IgM値が正常下限を下回った患者の割合は、Obinutuzumab群およびplacebo群で各33%、8%となった(online supplemental table 1↓)。一方、低IgGの頻度は両群で経時的に減少した(第104週時点でIgGが正常下限値を下回ったのはObinutuzumab群およびplacebo群で各9%、4%)。破傷風、風疹、おたふくかぜに対する前段階の抗体の力価は、経時的に治療群間で差がなかった(data not shown)。

 

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Safety

placeboに割り付けられた患者1名が、最初のサイクルで誤ってObinutuzumabの点滴を受けたため、安全性解析のためにObinutuzumab群に含めた。第104週までにObinutuzumab群64人中58人(91%)、placebo群61人中54人(89%)が少なくとも1つのAEsを起こした(table 3)。Obinutuzumab群64例中16例(25%)、placebo群61例中18例(30%)に少なくとも1つの重篤なAEsがあり(table 3↑)、Obinutuzumab群64例中5例(8%)、placebo群61例中11例(18%)に少なくとも1つの重篤感染症が発生した。

 

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Obinutuzumabで最も頻度の高かった有害事象はUTIおよび気管支炎。注射関連反応(盲検下で点滴後24時間以内に発生した治療関連AEsと定義)は、Obinutuzumab群で64例中10例(16%)、placebo群で61例中6例(10%)。これらの事象には、頭痛、頻脈、吐き気、高血圧が含まれ、初回注入時に最も多く発生した。

 

重篤なものはなく、すべて支持療法で改善した。104週目までの死亡例は5例で、Obinutuzumab群1例(消化管穿孔)、placebo群4例(消化管出血、難治性SLE、進行性多巣性白質脳症(PML)、呼吸器感染症)。PMLの死亡例は、PMLと診断される約6カ月前にCyclophosphamideのrescueを受けていたplacebo投与群の患者で発生した。

 

DISCUSSION

Obinutuzumabは、MMF+ステロイドに追加した場合、増殖性LN患者のCRRおよびORRの達成においてplaceboより優れていた。抗dsDNA抗体、C3、C4、eGFR、蛋白尿においてもObinutuzumabでより大きな改善が見られた。Obinutuzumabはplaceboと比較して、重篤なAEs、重篤感染症、死亡の発生率を増加させることなく、迅速かつ強力に末梢性CD19+のB cell depletionをもたらした。Obinutuzumabの治療効果は、baselineで高度の蛋白尿を有する患者、class IVのLNを有する患者で最大であったようだ。class Vの合併があってもなくても104週目に同様の治療効果が確認された。我々はObinutuzumabによるB cell depletionがより深く、より持続的であれば、優れた臨床反応が得られると仮定した。NOBILITY試験では、LUNAR試験と同様のデザインと患者集団が用いられ、CD19+ B細胞のデータを比較すると、ObinutuzumabはRituximabよりも迅速でかつ深く、耐久性のあるB cell depletionをもたらすことが示された(online supplemental table 2↓)。

 

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NOBILITYの結果は、LNの治療効果はB cell depletionの程度と期間による、という先行研究の結果を支持する[9-11]。Obinutuzumabの 4 回の投与は 6 ヵ月までにすべて終了したが、24 ヵ月まで臨床的有用性は増加し、腎臓の治癒と CRR の達成には長い時間が必要であることが示唆された。他の研究データでは短期的な改善は長期的な腎臓の予後を予測するものであり、これと一致して、Obinutuzumabは2年以上のeGFRの維持と関連していた[24,25]。これらの結果から、標準療法にObinutuzumabを追加すると、腎の損傷の発生をより効果的に防ぎ、腎機能をより維持する可能性があることが示唆された。

 

ObinutuzumabによるB cell depletionは、2年後の重篤な有害事象の増加と関連しなかった。Obinutuzumabは、baselineと比較して低IgMの有病率の上昇と関連したが、低IgGとは関連せず、既存のprotectiveな抗体の濃度の低下とは関連せず、このパターンはCD20(-)の長寿命形質細胞の保存と一致する結果であった。腎移植前のESKD患者を対象としたObinutuzumabの先行研究 [26]と同様に、CLLおよびNHLにおいてObinutuzumabに認められる最も一般的な重篤な毒性である重篤な注射関連反応や重篤な血小板減少症、好中球減少症の発症例はなかった(Gazyva US Prescribing Information; Gazyvaro EMA Summary of Product Characteristics)。CLLおよびNHLでは、循環する悪性B細胞が多い患者が注射関連反応の最大のリスクであると考えられ、この反応は炎症性サイトカインの放出を伴うB細胞の急速な崩壊によって発生する [27]。したがって、治療前の循環B細胞の量的and/or質的な差は、非悪性疾患におけるObinutuzumabの注射関連反応およびcytopeniaの発生率と重症度が低いことのメカニズムになり得る根拠となると考えらる。さらに、CLL患者を対象としたObinutuzumab初回注入前の長期副腎皮質ホルモン前投与と標準前投与を比較した非ランダム化試験で示唆されたように、バックグラウンドの高用量ステロイドが注入関連反応の頻度と重症度を低下させている可能性がある[28]。

 

本試験の患者の約2/3はLatin Americaから登録され、他の最近のLN試験と同様に、アフリカ系住民の割合はごくわずかであった。この概念実証試験では、地域または祖先による治療効果の違いについて結論を出すことはできない。baseline、2週目、24週目、26週目の点滴前にmPSL(Obinutuzumab群では活性、placebo群ではplacebo)を盲検下で使用したことにより、Obinutuzumabの臨床効果に偏りが生じた可能性があるが、観察された治療効果の持続性(104週まで)および治療群間の累積コルチコステロイド曝露量が類似していることにより、この相違から実質的効果が生じることはないものと考えられる。

 

最後に、本試験はsample sizeが限られており、事前に指定されたαレベルは0.2であり、52週目以降の解析ではtype I errorのコントロールが行われていないため、これらの結果はより大規模な試験で確認する必要がある。本研究の結果は、B細胞がLNの病因において重要な役割を果たすことを示し、Obinutuzumabが重篤な安全性事象を増やすことなく臨床反応の改善に寄与することを実証した。LNに対する免疫抑制療法が広く使用されているにもかかわらず、ESKDのリスクはここ数十年、大幅に減少していない。このことは、増殖性LN患者に対するより有効で安全な治療法が必要であることを強調している。増殖性LNに対するObinutuzumabの使用は、国際共同第3相試験でさらに評価されている。

 

<リウマトロジストのコメント>

LUNAR試験(Rituximab)の失敗を生かして、Obinutuzumabで成功とはすばらしいですね。B cell depletionに成功した例で上手くいっていたことが報告され、より強力な抗CD20抗体で、B cell depletionの完遂度を高め、結果として、Obinutuzumab (vs placebo)でLNの全てのendpointsで有意差をつけることができました。

 

リウマトロジストが勉強になったことは以下のとおりです

 

  • B cell depletionがLNの臨床効果に影響すること
  • CD20が細胞の中に移動してしまうことでtype I anti-CD20 abs、Rituximabの作用を免れて、B細胞が残ってしまうが、Obinutuzumabではそこを見逃さずB cell depletionを達成してしまうこと
  • BAFFを抑えるBelimumabとは異なり、B cell depletionでは(すなわちB細胞を抹殺してしまうと)、BAFFは逆に増加すること
  • B cell depletion、IgM低下は起きても、IgGが保たれることで、破傷風、風疹、おたふくかぜに対する抗体価は下がらなかったこと

 

第3相が進行中であるとのことですが、新しい抗CD20抗体製剤、期待できそうです!!