リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

PM/DMの治療② (難治性PM/DM)

(↓のつづき)
Mayo clinicの特発性炎症性筋症の治療について勉強しております
 
※出典はこちら(Free downloadできます)
Idiopathic inflammatory myopathies: currenttrends in pathogenesis, clinical features, and up-to-date treatment recommendations.
Mayo Clin Proc. 2013 Jan;88(1):83-105.
 
 
Treatment Approach for Adult Patients With SevereIIM or Disease Refractory to
Conventional Therapy
 
標準治療に抵抗性のIIMの患者、あるいは重症の皮膚疾患、重症の筋力低下、and/or顕著な体重減少を伴う嚥下障害を有する患者ではメチルプレドニゾロンパルス(IVMP500-1000m1-g3日間に次いで高用量経口プレドニゾロンからの漸減で治療される (Figure 2)Bolosiu[117]によって報告されたケースシリーズはIVMP毎月3日間で3ヶ月間治療されたIIM7例に関するものであったが、CK値の改善を認めた。高用量ステロイドのよくある副作用として、睡眠障害、不安やうつのような気分の問題、精神病、高血圧症、高TG血症。
 
イメージ 1
 
私たちはシクロフォスファミド(CYC)は経口にせよ静注にせよ重症の臓器病変のためにとっておく。CYCの使用に関する研究は限られており、肺疾患を合併したIIMに対するもののみ。山崎ら[118]CYCとプレドニゾロンで治療されたDM/PM/ADM17例のOpen-label studyを行った。17例中11例において呼吸困難の改善を認め、17例中8例においてHRCTにおける肺線維症の改善を伴う肺活量10%の改善を認めた。
 
残念ながらCYCは血球減少、出血性膀胱炎、早期の卵巣不全、不妊、重症感染症、吐き気、嘔吐に関連する。静注における典型的な投与量0.6-1.0 g/m2を十分な経口のHydration (2-3L within 24 hours)と生理食塩水・制吐剤、メスナ (40% of CYC dose)の後に投与する。経口のメスナは出血性膀胱炎の合併症を減らすためにCYC投与4時間後、8時間後に投与する (20% of CYC infusion)CYCの静注は4週間毎に3-6ヶ月投与される。稀ではあるが、投与期間は12ヶ月まで延長される。Nadir3000/μL未満になることを避けるようにCYC投与8-14日後に起きる白血球数のNadirをチェックするというのが私たちのプラクティスである。CYCを経口で投与する場合、1-2mg/kgで用いるが、200mg/日を超えないようにする。患者には出血性膀胱炎を避けるために十分なhydrationを維持するようアドアイスする。私たちは代謝産物であるAcroleinが出血性膀胱炎を起こすのを避けるように、患者に頻繁に排尿するよう勧める。とくに朝起きて最初の排尿において。
 
リツキシマブは難治性IIMや重症の合併症を有する患者においてCYCの代賛となりつつある。リツキシマブはB細胞に表現されるCD20に対するヒト型モノクローナル抗体であり、循環するB細胞を除去する。Levine[119]375 mg/m2で毎週4回静注を行った6例のOpen-label試験を行い、12週間後において筋力の改善、CKの低下、皮膚・肺病変の改善がみられた。筋炎は循環B細胞が改善するにつれ再燃するようであった。
 
Mahler[120]は難治性IIMの患者13例を対象に2週間毎のリツキシマブ1000mgの効果を評価するために前向きの試験を行い、27.1カ月のフォローアップにおいて筋原生酵素の有意な低下、筋力の改善、疾患活動性の改善、QOLスコアの改善を認めた。
 
The Rituximab in Myositis study[121]は筋炎におけるリツキシマブに関する最初の前向き二重盲検無作為化多施設共同試験であり、難治性筋炎に対しリツキシマブを投与した小児・成人200例を含んだ。44週間を通し患者の83%に良好な反応と改善が診られた。私たちは成人にはRTX1000mg2週間毎を投与する。RTX投与の前にベースラインの免疫グロブリンレベル (IgG, IgM, IgA)を入手し、BC型肝炎の抗体価を決定し、潜在性結核のスクリーニングを行う。重症の感染症が心配である。進行性多巣性白質脳症PMLRTXで治療されたリウマチ性疾患の患者において報告されている;高度に免疫抑制状態にある患者には注意する必要がある[122]PMLRTXで治療されたことがない筋炎の患者においても報告されている;そのため、中枢神経症状を呈する全ての患者においてJCウイルスの再活性化について強い疑いの目をもって管理すべきである[123]
 
シクロスポリンA (CSA)とタクロリムスはIL-2遺伝子の転写の抑制のようなT細胞介在性の免疫機能を阻害する薬剤である。重症のILDを有するIIMの治療に用いられる。あるOpen labelの無作為化試験において、活動性のPM/DMの患者36例がMTX7.5-15mg/wkCSA 3.0-3.5mg/kg/日に分配された。2群は筋力、耐用性、患者の全般評価のようなアウトカムにおいて同等の改善を呈した。加えて、少数のCSAの後ろ向き研究によると、ILDの改善と石灰化沈着症の部分的な改善が証明されている;しかし、高血圧、腎機能障害を含む重症の副作用のため、CSAの使用は制限される[125,126]。腎障害を避けるため、血清CSAのトラフ値を定期的にモニターする。Oddis[127]はタクロリムスで治療された抗Jo-1か抗SRP抗体を有するIIMの患者8例において肺機能の改善を報告した。重症の副作用に関する懸念のため、CSAとタクロリムスは重症で難治性のIIMに温存しておくというのが、私たちのプラクティスである。