18歳女性のループス腸炎を経験し、調べております。
Uptodateの記述は十分とはいえません。
ループス腸炎、ループス腸間膜動脈炎について調べました。
<Pubmed>
lupus enteritis、lupus mesenteric vasculitisともMeSHがありません。
1)lupus enteritis
lupus enteritisを検索すると、87件。
これを主なテーマにしたものを読みたいので、
lupus enteritis[title]として、タイトルにlupus enteritisに含むものを調べ、25件。
一応、freeで落とせたものから以下を読みました。
2. Lupus enteritis: from clinical findings to therapeutic management.
Janssens P, Arnaud L, Galicier L, Mathian A, Hie M, Sene D, Haroche J, Veyssier-Belot C, Huynh-Charlier I, Grenier PA, Piette JC, Amoura Z.
Orphanet J Rare Dis. 2013 May 3;8:67. doi: 10.1186/1750-1172-8-67. Review.
Abstract
・ループス腸炎はSLE患者における稀な合併症で腹痛の原因として良く分かっていないもの。
・この研究でフランスの三次医療センターに紹介された新規のループス腸炎患者7例を報告し、改訂ACR基準を満たすSLE患者におけるこの合併症のシステマティックレビューをする。システマティックレビューの条件として小腸の病変がある証明があり、感染症を除外したものとする。
・私たちは143例の過去に報告された症例の特徴と新規の7例について報告する。
・臨床症状はほとんど腹痛 (97%)、嘔吐 (42%)、下痢 (32%)、発熱 (20%)。
・ラボデータはほとんどがループスの活動性を反映していた:低補体血症(88%)、貧血 (52%)、白血球減少またはリンパ球減少 (40%)、血小板減少 (21%)。CRPの中央値は2.0 mg/dL (range 0–8.2 mg/dL). 蛋白尿は47%。
・画像検査は腸管壁の浮腫(95%), 腹水 (78%), 特徴的なターゲットサイン (71%), 腸間膜の異常 (71%)、腸管拡張(24%)。
・組織が気に確かめられた血管炎は9例(6%)のみ。
・7%が腸管壊死または穿孔を来たし、死亡率2.7%。
・まとめると、ループス腸炎はSLE患者の腹痛の原因として良く分かっていないもの。臨床所見と治療背景ははっきりしている。治療されなければ、疾患は腸管壊死や穿孔に伸展するかもしれない。しかし、ステロイド反応性がよいため、タイムリーな診断がこの稀な病態の十分な管理には大切だ。
※Introductionに以下の記載がありました(mesenteric vasculitisも同義語でよさそうです)。
・命名が以下のように混乱している。その他にも同じ病態を言うために使われたものがある。
lupus enteritis
mesenteric arteritis
intestinal vasculitis
enteric vasculitis
mesenteric vasculitis
lupus peritonitis
abdominal serositis
・したがって、ループス腸炎はSLE患者の腹痛の原因としてはっきりしたものではないと考えておくべきだ。
2)lupus mesenteric vasculitis
Pubmedでlupus mesenteric vasculitisを検索すると、75件
EnglishでLimitsして66件。
上からタイトルを読んでいくと、以下が新しく比較的大きな観察研究(n=97)のようです。
6. Lupus mesenteric vasculitis: clinical features and associated factors for the recurrence and prognosis of disease.
Yuan S, Ye Y, Chen D, Qiu Q, Zhan Z, Lian F, Li H, Liang L, Xu H, Yang X.
Semin Arthritis Rheum. 2014 Jun;43(6):759-66
Abstract
Objective:
・ループス腸間膜血管炎(LMV)の臨床的特徴を評価し、LMVの再発性の疾患と予後に関連する可能性のある危険因子、および適切な治療を決定すること。
Methods:
・2002-2011年、SunYet-sen大学の第一関連病院に入院した患者において後ろ向きコホート研究を行った。
・エンドポイントは外科的介入を要する重症の合併症の発生率、再発率、死亡。
RESULTS:
・3823例SLEのうち、97例が腸間膜血管炎と診断された。有病率は2.5%。
・LMV患者97例のうち、13例が重症合併症のため死亡(13/97, 13.4%)し、2例が寛解導入の段階で腸管穿孔を来たした。
・多変量ロジスティック回帰の解析によって白血球減少、低アルブミン血症、アミラーゼ上昇が重症合併症に関連した;末梢WBC, odds ratio (OR) = 0.640, 95% confidence interval (CI): 0.456-0.896, P = 0.009]、低アルブミン血症 (血清アルブミン, OR = 0.891, 95% CI: 0.798-0.994, P = 0.039)、血清アミラーゼ上昇(OR = 7.719, 95% CI: 1.795-33.185, P = 0.006)。
・静脈のシクロフォスファミド(CYC)は重症合併症の出現を抑制した(OR = 0.220, 95% CI: 0.053-0.903, P = 0.036)。
・寛解導入された79例全例が2-96ヶ月間フォローされ、18例が再発した(18/79, 22.8%)。
・Cox比例ハザードモデルによって補正された統計解析によって高用量CYC (≥ 1.0 g/m2/month)は再発に対し守備的な因子で良いアウトカムに導いた[hazard ratio (HR) = 0.209, 95% CI: 0.049-0.887, P = 0.034]。
・一方で重症の腸管壁の肥厚 (>8mm) は再発の危険因子 (HR = 7.308, 95% CI: 1.740-30.696, P = 0.007)。
CONCLUSION:
・LMVは高い死亡率を有する重症の合併症の一つ。
・この研究は白血球減少、低アルブミン血症、アミラーゼ上昇が重症合併症と関連することを示した。
・CYCは寛解導入の時期の間、良いアウトカムに導いた。
・重症の腸管壁肥厚は強化療法の期間における再発の危険因子であった。高用量CYC療法は保護的であった。
・LMVが診断されればループス膀胱炎が共存する頻度が高いため尿路合併症の評価をする必要がある。
Table 3
※Introductionに以下の記載あり、やはり同じなんですね。
LMVは急性の腹痛を呈するSLE患者の消化管合併症としてもっとも重症のものの一つ。腸間膜動脈炎、ループス動脈炎、ループス腸炎、消化管血管炎、腹腔内血管炎、急性消化管症候群のような別な名前もLMVを言うために用いられる。
3) Lupus enteritis(25件), Lupus mesenteric vasculitis(66件)とも全てタイトルを見ましたが、ほとんどが症例報告であり、まとまった臨床研究はこの度の2つと前項の15例のシリーズのみでした。
< まとめ >
・症状;腹痛 (97%)、嘔吐 (42%)、下痢 (32%)、発熱 (20%)
・検査;低補体血症(88%)、貧血 (52%)、白血球・リンパ球減少 (40%)、血小板減少 (21%)。
・画像;腸管壁の浮腫(95%), 腹水 (78%), 特徴的なターゲットサイン (71%), 腸間膜の異常 (71%)、腸管拡張(24%)。
・腸管壊死・穿孔7%、死亡率2.7%、再発率25%
(中国の大学病院における腸間膜血管炎97例の報告)
・多変量解析にて手術にいたる重症合併症に関連するのは
白血球減少 OR 0.640 (P = 0.009)
血清アミラーゼ上昇 OR 7.719 (P = 0.006)
CYC静脈投与 OR 0.220 (P = 0.036)
・再発のリスク
高用量CYC (≥ 1.0 g/m2/月) HR = 0.209 (P = 0.034)
重症の腸管壁の肥厚 (>8mm) HR = 7.308 (P = 0.007)
<Clinical scenarioの経過>
・mPSL1mg/kgで治療開始した。
・重症合併症のリスクである低アルブミン血症、再発のリスクである腸管壁の肥厚を有していたため、シクロフォスファミドの追加を検討することにした。
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