リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

Vasculitic neuropathy(血管炎性ニューロパチー)

血管炎性ニューロパチー、まとめました。
 
ここ6年の自験例で統計をとってみると、
EGPA12/12 (100%)
GPA 2/6 (33%)
MPA/RLV 1/3 (33%) でした。
 
1例を除く全例が多発性単神経炎のパターン、EGPAの1例が多発ニューロパチーのパターンでした。
 
Clinicalmanifestations of vasculitic neuropathy
 
 
 (Uptodate, accessed Sept 2015)
 
 
INTRODUCTION—血管炎症候群は末梢神経障害を含む任意の臓器・組織障害を起こしうる。血管炎が神経の栄養血管を侵せば、結果としてしばしば末梢神経に重症虚血を来たし、臨床的に重大な後遺症をもたらす可能性がある。
血管炎性ニューロパチーは通常、皮膚、肺、腎臓やその他の臓器を侵かす全身疾患の一症状にすぎない。たとえば、ANCA関連結果年のグループ(多発血管炎性肉芽腫症[Wegeners], 顕微鏡的多発血管炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症[Churg-Strauss])はしばしば血管炎性ニューロパチーを来たす。結節性多発動脈炎(PAN)、混合性クリオグロブリン血症は末梢神経も侵しやすい。
一部の患者では末梢神経の血管炎が単独で起きる。この状況は非全身性の血管炎性ニューロパチー、あるいは孤発性の末梢神経全身性血管炎と呼ばれる。
全身性血管炎がなくても非全身性の血管炎性ニューロパチーは重症の機能障害に至る破壊的な疾患となりうる。完全に回復しない患者もいるかもしれない。末梢神経の再生は月単位から年単位を要するため治療のゴールは神経の栄養血管のなかで起きている炎症をできるだけ早くコントロールし、神経のダメージを予防し最小限にすることである。
 
PATHOGENESIS —血管炎性ニューロパチーにおける最初の病因的なイベントは十分分かっていない。血管炎性ニューロパチーに至るよく確立されたpathwayが二つある。免疫複合体沈着と細胞性免疫である。
●血管壁の中で免疫複合体の沈着が起きると単球が活性化され、proinflammatorycytokinesを放出する。それには好中球の障害組織への遊走能を刺激するものも含まれる。好中球からのフリーラジカルの放出が神経組織にダメージを与えるのかもしれない。免疫複合体を介した障害はとくに混合型クリオグロブリン血症に関連する。少なくともPANのいくつかのケースでもそうである。とくにB型肝炎に関連するもの。
Cell-mediated immunity –細胞性免疫は抗原提示細胞(おそらくいくつかのケースでは上皮細胞を含む)が関連する抗原を循環する細胞障害性T細胞に提示した時に起きる。これらの作用はproinflammatorycytokines、細胞接着分子、その他の炎症性メディエーターの産生をもたらす。結果として好中球とリンパ球が血管上皮に接着し、障害をもたらす。細胞性免疫は“pauci-immune(免疫物質の少ない)”の炎症で特徴づけられるANCA関連血管炎の病態の中心であると信じられている。
免疫複合体と細胞性免疫のpathwayは互いに排他的ではない。たとえば、顕著な免疫複合体の沈着に関連するC型肝炎関連のクリオグロブリン血症の研究によると、神経生検の標本において様々なT細胞性炎症性メディエイターに関してmRNAの表現が著明に増加している。これにはインターフェロンγ、TNFα、macrophage inflammatory protein-1αが含まれる。血管炎性ニューロパチーにおいてその他の要素も研究中であり、これには炎症性神経疾患、血管平滑筋細胞増殖に役割があるとされているAIF-1サイトカインを含む。
 
PATHOLOGY —炎症反応が神経の脈管を構成する血管の閉塞を来たす。組織学的所見は血管炎性ニューロパチーを起こす疾患のタイプによって異なる。また生検がなされたときの治療のステージによっても異なる。様々な程度の軸索障害が疾患の重症度の応じて起きる。原発性壊死性血管炎では、多核球が血管壁に浸潤する。一方、二次性の血管炎では炎症性の浸潤は主に単核球からなる。
障害された末梢神経の栄養血管の壁にリンパ球が慢性的に浸潤することが血管炎性ニューロパチーに関連する多くの疾患において特徴的。加えて神経の栄養血管への好酸球浸潤がEGPA(Churg-Strauss)に特徴的。EGPA80%までもの患者が血管炎性ニューロパチーを起こす。早期であれば神経の栄養血管の白血球破砕性血管炎が見られる。
血管炎性ニューロパチーの組織所見には神経鞘の血管周囲、全層性の単核球浸潤がある。この炎症細胞浸潤はしばしばT細胞とマクロファージを主体とし、血管壁のフィブリノイド壊死に至るかもしれない。多くのケースにおいて、とくに免疫複合体の沈着が最初の役割をなすケースでは血管壁への免疫グロブリンと補体の沈着が見られる。(略)
 
Patterns of nerve involvement —虚血性病変は末梢神経に沿ってランダムに集積する。臨床的な結果は感覚性・運動性の神経の両方のダメージのパターンを呈し、最初は非対称性、斑で末梢性。最も長い神経が最初におかされる。時間とともにパターンはより対称性になる。
栄養血管のwatershedの領域における神経組織がとくに虚血性の障害に起きるかもしれない。Myelinated fibersが最も虚血に弱い;しかし、疾患の進行とともにunmyelinated fibersもダメージを受ける。
 
CLINICALMANIFESTATIONS —血管炎性ニューロパチーの臨床所見は神経学的な臨床像と非神経学的な臨床像に分けられる。
 
Neurologic features —疼痛、異常感覚、しびれ、筋力低下が主な症状。突然起きるかもしれないし、潜在性に起きるかもしれない。3つのパターンが診られ、多発性単神経炎、末梢性のポリニューロパチー、radiculopathyand/or plexopathy
 
Mononeuritis multiplex 3パターンのうち多発性単神経炎が血管炎の診断に最も特異的。多発性単神経炎は体の離れた四肢における二つ以上の名前のついた神経のダメージと定義した。例えば、下垂手は橈骨神経の梗塞による。下垂足は腓骨神経または坐骨神経のダメージによる。
神経の長さが血管炎性ニューロパチーの頻度に影響する。最も長い神経が最初におかされるため、下垂足が多発性単神経炎の最もコモンな多発性単神経炎の所見なのである。患者は背屈の筋力低下にしばしば気付いていない。医師の診察によって証明されるまでは。下垂足は救急車の中での観察を通して明らかになるかもしれない。前掲骨筋の筋力低下がある患者はつまづかないために障害された側の膝を高く上げなければならない。そのため鶏歩となる。
その他の神経も岡紗枝っるかもしれない。頸骨N、尺骨N、正中N。神経の梗塞は筋の萎縮を来たす。奥のケースで永久。多発性単神経炎が進行すれば、多くの神経が侵され、ついには神経障害のパターンが対称性、あるいは合流性となる。
 
Polyneuropathy —末梢性の対称性のポリニューロパチーは血管炎性ニューロパチーにおいて以前考えられていたよりもコモン。非対称性の発症が記載されている。NCV検査を用いたEMGにおいて、臨床所見で見られるよりもしばしばより非対称性。
 
Radiculopathy and/or plexopathy —神経根障害と神経叢障害がPANに関連して報告されている。デルマトームにそった感覚障害が神経根障害が特徴的である。これとは逆院ひとつの末梢神経や神経根に限局していない症状や所見は上腕神経叢や陽神経叢の障害を疑わせる。
 
Non-neurologic features —発熱、倦怠感、体重減少のような全身症状はサイトカインの効果やその他の生物学的なメディエーターの効果に関連する。これらの症状は非全身性の血管炎性ニューロパチーよりも全身性の血管炎性ニューロパチーの患者に起きやすい。
末梢神経を超えた特異的な臓器障害は根底にある基礎疾患の存在を示唆するカギとなるかもしれない。
●触知できる紫斑や皮膚潰瘍は小血管や中等度の血管の原発性血管炎において見られる(過敏性血管炎や多発血管炎性肉芽腫症)。
●呼吸器障害はANCA関連血管炎に診られる。例えばGPAにおける破壊性上気道病変、EGPAにおける喘息、アレルギー性鼻炎and/or鼻ポリープ;全疾患における肺胞出血。
●消化管アンギーナはPANのような中等度のサイズの血管炎の存在を示唆する。
 
SYSTEMICDISEASE ASSOCIATIONS —血管炎性ニューロパチーに関連する全身性の疾患の主なタイプは特定の血管炎、膠原病を含む。一つのセンターにおける28年に及ぶ106例の血管炎性ニューロパチーのレビューでは主な診断カテゴリーは以下の通り
Vasculitis (72 patients)血管炎
EGPA(Churg-Strauss): 22
Polyarteritis nodosa (PAN): 19
GPA (Wegener’s): 14
MPA: 8
•分類不能の血管炎: 6
•クリオグロブリン血症: 2
HSP (IgA vasculitis)1
Connective tissue disease 膠原病(16 patients)
RA12
SLE4
Nonsystemic vasculitic neuropathy 非全身性血管炎性ニューロパチー(11 patients)
Otherその他7
•悪性腫瘍関連4
 
Systemic vasculitis —全身性血管炎―いくつかの血管炎のタイプはその他のタイプに比べ血管炎性ニューロパチーを呈しやすい。細動脈と小さいサイズから中等度のサイズの動脈が神経障害に最も関連する血管炎のタイプ。これに対し、過敏性血管炎のような純粋な小血管炎、高安動脈炎の様な大血管炎はめったに血管炎性ニューロパチーを呈さない。結果として血管炎性ニューロパチーの発生は根底にある診断を再認識させるきっかけとなる。
ANCA-associated ANCA関連血管炎―末梢神経障害はGPAの約15%MPA70%EGPA80% [14,15]
 
Polyarteritis nodosa 50-75%PAN の患者が末梢神経障害のいくつかのタイプを呈する。臨床所見は皮膚潰瘍、指の虚血、従来の動脈造影による小動脈瘤
 
Cryoglobulinemic vasculitis 電気生理学的な臨床研究において混合型クリオグロブリン血症の患者の約2/3において末梢神経障害が認められた。これらの患者において循環するクリオグロブリンの沈着が神経の脈管に診られた。神経症は典型的には対称性に四肢の遠位部を侵す。主に感覚障害優位に。クリオグロブリン性血管炎による血管炎性ニューロパチーの患者における関連する臨床所見には触知可能な紫斑、皮膚潰瘍、関節痛がある。
C型肝炎に関連するクリオグロブリン血症の診断は説明がつかない末梢神経障害を呈する患者において考慮されるべし。いくつかの研究がこれらの過去に診断がつかなかった患者が高率にHCV感染を有している事を確認した。しかし、クリオグロブリン血症に関連する血管炎性ニューロパチーは皮膚の血管炎がない限り考えにくい(紫斑、過去の紫斑による色素沈着and/or皮膚潰瘍)。クリオグロブリン性血管炎はHIV感染の合併として報告されている。血管炎性ニューロパチーはHIV感染自体の所見でもあるし、晩期HIV/AIDS日和見感染の所見であることもある。
 
Connective tissue diseases膠原病—―血管炎性ニューロパチーはSLERA,SjSのような膠原病に関連して出現することもある。
 
Lupus —ループスの神経症には3つのタイプがある。
●最もコモンなのは急性・亜急性の対称性の感覚または運動性多発ニューロパチー。ほとんどの患者が最初に下肢を障害する感覚鈍磨を呈する。
●単神経炎、多発性単神経炎が孤立性に、あるいは同時に起きるかもしれない。これらの所見は対称性の多発ニューロパチーの上に重なって出現するかもしれない。
●最も稀な末梢神経障害のタイプはGuillain-Barré症候群に似た上行性の運動神経根障害。
 
Rheumatoid arthritis RA患者において神経障害は電気生理学的な基準で評価すれば約10%に起きる。最もコモンな所見は緩徐に進行性であり、末梢有意、対称性で感覚・運動性の多発ニューロパチーである。大多数のケースにおいて詳細な評価を行うと根底にある病態生理は血管炎である。
最も関連する肩はRAに起きる血管炎性ニューロパチー。これは典型的には血清反応陽性の破壊性関節症の患者に起きる。関節炎が比較的燃え尽きた状態のステージにおいて。強膜炎、心膜炎、皮膚潰瘍、腸間膜の血管炎のようなその他の関節外症状はしばしば急性の多発性単神経炎のパターンを呈する血管炎性ニューロパチーを合併する。
 
Sjögren's syndrome —末梢神経障害はSjSの約10%に起きる。これは通常対称性で感覚・運動性の多発ニューロパチー。異常感覚のような感覚障害が主体となる。血管周囲の細胞浸潤と軸索神経障害を含む組織所見が血管炎の原因を示唆するケースもあるが、単球浸潤は血管がない場所でもより高頻度に見られる。自律神経障害、脳神経障害も起きうる。
 
NONSYSTEMICVASCULITIC NEUROPATHY —非全身性の血管炎性末梢神経障害の患者は血管炎性ニューロパチーの患者の一部を占める。組織学的に証明された血管炎性ニューロパチーの患者71例のシリーズにおいて示されている。22(31%)ははその他の臓器障害を認めなかったというものだ。
初診時に末梢神経系に限局した血管炎の患者はその他の臓器障害のサインについて緊密にフォローされるべし。