リウマチ膠原病のQ&A

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どのTNF阻害薬が一番安全ですか?

The Comparative Safety of TNF Inhibitors in Rheumatoid Arthritis - A Meta-Analysis Update of 44 Randomized Controlled Trials.
Michaud TL, et al. Am J Med 2014;127(12):1208-32
 
Abstract
OBJECTIVE:
RA患者の治療におけるTNF阻害薬のRCTの安全性のデータを評価しアップデートすること。
 
METHODS:
・システマティックな文献レビューを1990-2013年の間で行った。
・登録された研究はRAを対象とした二重盲検RCTで、adalimumab, certolizumab pegol, etanercept, golimumab, infliximabを評価したもの。
・重症の副作用、中止率をまとめ、リスクの推定をPetro odds ratios (ORs)で算出した。
 
RESULTS:
・TNF阻害薬を投与された11700例、プラセボand/or従来型DMARDsを投与された5901例を含む44RCTを対象とした。
TNF阻害薬はグループとして、プラセボand/or従来型DMARDsと比較し、重症感染症のリスク上昇に関連した(OR, 1.42; 95% CI, 1.13-1.78)、副作用中止(OR, 1.23; 95% CI, 1.06-1.43)
・とくに、adalimumab, certolizumab pegol, and infliximabは重症感染症のリスク上昇を有し(OR, 1.69, 1.98, and 1.63)、副作用中止のリスクも上昇した(OR, 1.38, 1.67 and 2.04)
・反対にエタナセプトを投与された患者は副作用中止のリスクが低かった(OR, 0.72; 95% CI, 0.55-0.93)
・悪性腫瘍のORsTNF阻害薬によって様々であったが、いずれも統計学的有意差には達さなかった。
 
CONCLUSION:
・TNF阻害薬の相対的安全性をアップデートしたこれらのメタ解析は、adalimumab, certolizumab pegol, infliximabが重症感染症のリスク上昇に関連することを示唆した。そして、このことは副作用中止の割合が高いことに寄与した。
・一方、エタナセプトの使用は中止の割合がより低かった。
・これらのデータはRAの管理において臨床上比較をする際の意思決定に役立つかもしれない。
 
 
Figure 2-5Odds ratioまとめ)
 
重症副作用悪性腫瘍重症感染症副作用中止
ADA0.93 (0.72-1.19)0.80 (0.35-1.82)1.69 (1.12-2.54)1.38 (1.00-1.89)
CZP1.44 (1.04-2.00)1.54 (0.43-5.46)1.98 (0.99-3.96)1.67 (1.09-2.54)
ETN1.16 (0.89-1.52)1.45 (0.76-2.78)0.73 (0.45-1.20)0.72 (0.55-0.93)
GLM1.30 (0.82-2.05)0.80 (0.14-4.52)1.55 (0.76-3.17)1.43 (0.88-2.35)
IFX1.04 (0.80-1.34)2.29 (0.77-6.86)1.63 (1.07-2.47)2.04 (1.46-2.84)
total1.11 (0.97-1.26)1.29 (0.85-1.97)1.42 (1.13-1.78)1.23 (1.06-1.43)

 
 
 
<リウマトロジストのコメント>
まとめると、
 
有意にリスクが高い
Serious AEs – CZP 1.44
Serious infections – ADA 1.69, IFX 1.42
Discontinuation due to AEs– CZP 1.67, IFX 2.04
 
ほぼ有意にリスクが高い
Serious infections – CZP 1.98 (0.99-3.96)
Discontinuation due to AEs – ADA 1.38 (1.00-1.89)
 
有意にリスクが低い
Discontinuation due to AEs – ETN 0.72
 
 
リウマトロジストが生物製剤を使うとき、もっとも注意していることは感染症です。
 
Serious infectionsでほぼ有意なデータが出たCZP 1.98 (0.99-3.96) のもとのデータを見てみます(Figure 4)。
 
Serious infectionsCZP群では41/1580、プラセボ群では6/565でした。
 
この集団におけるNNH (Number needed to harm) を計算してみます。
 
NNH = 1/(0.0259 - 0.0106) = 65.3 → 66人
 
どういうことかといいますと、
 
100人を治療した場合、2.59人に重症感染症が発生し、コントロール群では1.06人に発生します。
 
したがって、薬で発生したと考えられる重症感染症は100人治療して1.53人になります。
 
何人治療すれば1人の重症感染症を余分に経験するかというと、100 ÷ 1.53 = 65.3 と計算でき、66人となります
 
つぎに、NNHを計算する時は、どのくらいの期間でNNH = 66人なのかを一緒に述べた方がよいとされています。
 
メタ解析に使われたRCTを以下に示します。
 
Fleischmann, ARD2009; n=220CZP111)で期間は24
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19015206
 
Smolen, ARD2009; n=619492)で期間は24
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19015207
 
Weinblatt, Rheumatol2012; n=1063851)で期間は12週間
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22923753
 
Choy, Rheumatol2012; n=247126)で期間は24週間
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22344576
 
 
これらの平均は17.7週間になります。
 
すなわち、リウマトロジストの計算によると、
 
CPZにおけるSerious infectionsのNNHは66(約18週間)となりました。
 
 
ps; 厳密にはCPZのOdds ratioは1をまたいでいますので、仮想のNNHと理解してくださいね。