リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

nr-axSpA はASと違うか?

TNF阻害薬の登場によって、強直性脊椎炎(AS)の治療が満足できるものに変わりました。
 
関節リウマチの分類基準が治療の進歩によって改訂されたように、ASもより早期の病態でもって治療をはじめようと考えるのは妥当なことです。
 
2009年にASAS分類基準が提唱され、X線上の仙腸関節変化で定義されるNew york基準を満たすのを待たずに、axial SpAと分類できるようになりました。
 
このASAS分類基準において、MRIで検出される仙腸関節炎は最も重要視されます。
 
しかし、MRIでのみ検出される仙腸関節炎は将来必ずASになるのでしょうか?
 
この度ご紹介するのは、ASAS分類基準を満たすaxial SpAでX線変化がないもの(nonradiographic axial SpA)がASの早期病変とは言えないかもしれないことを提唱した論文です。
 
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Do Patients With Non-Radiographic Axial Spondylarthritis Differ From Patients With Ankylosing Spondylitis?
Arthritis Care Res (Hoboken) 2012;64(9):1415-22
 
 
Non-radiographic axial SpAの患者は強直性脊椎炎(AS)の患者と違うのか?
 
Objective.
仙腸関節and/or脊椎に構造的変化を有する軸性脊椎関節炎(axial SpA)は強直性脊椎炎と分類される。
・そのような変化がない患者はnonradiographic axial SpA (nr-axSpA)に分類される。
・両者の違いについてはよく分かっていない。
 
Methods.
・TNF阻害薬で治療を受けていない軸性SpAの連続した患者100名におけるデータを臨床像、ラボのパラメーター、脊椎X線、脊椎MRIについて比較した。
・健康状態を評価するために標準的な臨床評価方法を用いた。
 
Results.
・AS56例で診断され、nr-axSpA44例だった。
・炎症所見はnr-axSpAよりもAS患者において有意に高く、平均CRP8.0 vs 3.8mg/L
ASの疾患活動性スコアは各々2.2 vs 2.8MRIにおける脊椎炎症病変は2.0 vs 0.0
・両群における有意な違いは性(男性の比率がAS 76.8% vs nr-axSpA 31.8%)。
・臨床上の変数はAS患者とnr-axSpA患者で差はなかった(Bath ASDAI, Bath ASFI, ASQOLQ, SF36において)。
 
Conclusion.
・Nr-axSpAは男性の割合が少なくASに比べると炎症の程度が低いことで特徴づけられた。
・両群とも健康状態、疾患活動性、身体機能における差はなかったが、炎症の程度では違いがあった;全てにおいてAS患者で高かった。
Nr-axSpAの患者の多くが何年もの間構造的破壊を有していないため、私たちはこれらの患者はX線変化の出ていないAS患者とみなすべきでなく、むしろnr-ax SpAであるということを提唱する。
 
Table 1
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Figure 1
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