リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

AAVの弁膜症

70代男性がPR3-ANCA高値、腎障害で紹介された。
 
HT, HL, DM, smokingあり、降圧薬を投与中。
 
ネフローゼを認めたが、腎生検にて腎硬化症と判断された。心エコーにてSevere ARを認めた。
 
その他に血管炎を疑わせる所見なし。血液培養2set陰性。
 
(架空の症例です)
 
 
<疑問>
弁膜症はANCA関連血管炎によるものと言えるだろうか?
 
 
<疑問を解決する>
Pubmedaortic regurgitation ancaを検索したところ、10件ヒットした。その中で、最近のCase report and literature reviewFree journalを読んだ。
 
Case report
44歳男性のENTを呈したp-ANCA陽性のWG/GPAARに対し弁置換術を施行した。
 
Discussion
Pubmedを用い、以下のkey wordで検索したところ、19件、20例を抽出した。
Key words; valve, cardiac, heart, endocarditis, mitral, aortic, triscupid, pulmonary, ANCA, antineutrophil cytoplasmic antibodies, Wegener’s granulomatosis, microscopic polyangiitis, Churg Strauss
 
Table 2  患者の特徴と血管炎
・平均年齢はその他のAAVより若く(40 vs 47)、男性が多かった(80% vs 53%)。
・一例を除き全例がWGであり、腎臓、肺、耳鼻咽喉科領域の主な3領域の少なくとも一つの症状を伴った。目、皮膚、関節の障害は約半分。
・別の心疾患を有したのは20例中6例のみで、心膜炎・癒着、電動障害、冠動脈狭窄などであった。
 
イメージ 1
 
 
Table 3   弁膜症の詳細
・もっともコモンなのはARMR7例、AS1例が報告された。また、僧帽弁のmassによって軽度のMS、中等度のMSを来たした2例、弁不全・逆流を呈さず多発性の心房内腫瘤を呈した1例が報告された。
6例に複数の弁膜症を認めた。これらの弁膜症において報告された原因は以下の通り;疣贅、弁肥厚、便先行、単発性or多発性の心内膜腫瘤。
・弁膜症の半分(10例)は初期か診断時に存在した。残り10例のうち、6例では弁膜症が出現したのは免疫抑制療法中であった。これらの5例のうち2例において発症は治療開始1週間以内であり、治療開始前に病因的プロセスが進行していたことが疑われる。弁膜症が血管炎発症から1年以上たって発症したのは4例だけだった。
・弁置換術はほとんどの症例で必要だった。免疫抑制療法によって弁膜症が消失したのは2例だけだった;そのうち1例では二次的な左心室拡大と弁の委縮のため大動脈弁置換術を行った。
・病因はほとんどの症例で非特異的;例)炎症and/or(膿瘍、巨細胞、血管炎、肉芽腫を伴わない)瘢痕。2例では肉芽腫、壊死and/or微笑膿瘍が弁組織に認められた。
 
 
 
<疑問に対する答え>
・弁膜症を伴ったAAVの報告例20例はいずれも腎、肺、耳鼻咽喉科領域の少なくとも一つの症状を伴っていた。
 
・本例にはこれを認めなかったため、AAVに関連した弁膜症らしくはなかった。
 
・また、心血管疾患の危険因子を多数有していたため、むしろ、こちらとの関連を疑った。