リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

MPO-ANCA陽性の間質性肺炎

<Clinical scenario>
75歳女性の間質性肺炎MPO-ANCA66と高値を認めたため、紹介された。

尿蛋白・尿潜血(-)。発熱(-)、しびれ(-)、紫斑(-)。

< 疑問、発生!>
 
血管炎によるIPと考えるべきか、ANCA偽陽性と考えるべきか・・・


<Uptodate/Pubmed
 
Uptodateでは、Clinical spectrum of antineutrophil cytoplasmic antibodiesのなかにInterstitial pneumonia/interstitial lung diseasesの記載はなし。
 
Pubmedにてを検索すると、37件。
*1 AND "Lung Diseases, Interstitial"[Mesh]
 
Title checkで3つの論文のAbstractを読みました。
 
1. Respir Med. 2012 Dec;106(12):1765-70.
Interstitial pneumonia associated withMPO-ANCA: clinicopathological features of nine patients.
Tanaka T, et al.
Abstract
MPO-ANCAよく知られた小血管炎のマーカー。最近の報告ではIPが稀にMPO-ANCA陽性に関連する。しかし、組織所見についてはほとんど知られていない。私たちはMPO-ANCA陽性で明らかな原因のない間質性肺炎9例の外科的肺生検をレビューした。男女比6:3、年齢は中央値62.1歳。組織学的に8例がUIPパターンでしばしばNSIPの領域が合併していた。1例はDADを示し、2例はUIPの急性悪化を示唆するUIPDADの混合所見を示した。顕微鏡的なHoneycomb cystsはコモンだったが、Fibrotic fociは目立たなかった。最もよくある付加的な所見はSmall airway disease (9/9)、およびリンパ濾胞(7/9)。毛細血管炎、血管炎は1例もなかった。3例は顕微鏡的血尿を有したが、フォロー中にMPAに伸展したものはいなかった。死亡率は44%(フォローの中央値は39.1ヶ月)。MPO-ANCA+IPは組織学的にUIPパターン優位。血管炎は認めなかったが、小さい気道病変とリンパ濾胞がほとんどにみられた。MPO-ANCA陽性のIPIPFとは組織学的に異なる疾患であるかもしれない。死亡率は比較的高く、生命に関わるような急性悪化も起きうる。
 
これ重要。MPO-ANCA陽性のILD9例中血管炎の組織は1例もなし。UIP+NSIP8例、1例がDAD9例のうちMPAに伸展したものはなし。
 
2. Rheumatology (Oxford). 2011Nov;50(11):2035-43.
Interstitial lung disease andANCA-associated vasculitis: a retrospective observational cohort study.
Arulkumaran N, et al.
目的
ANCA関連血管炎+間質性肺疾患は稀な疾患である。両疾患が同じ患者におきることが認識されつつある。私たちの目的はILDAAVを有する患者の特徴とアウトカムを確認すること。
方法
retrospectiveな観察コホート研究。LondonHammersmith病院を受診したILDを有するAAV [GPA, MPA or CSS]を登録した。退院後、全ての患者をmulti-disciplinary vasculitis clinicでフォローした。患者のデモグラフィック、診断検査、治療、合併症、死亡率を登録した。
結果
ILDAAV患者(n=510)2.7% (n=14); 全例がMPO-ANCAを有し、臨床診断はMPAだった。MPA患者(n=194)7.2%の頻度。MPA+ILDの患者とMPAのみの患者で生存に有意差はなかった。
結論
医師はこの臨床的な合併に気づくことは重要であり、ILDをはAAV、とくにMPO-ANCA陽性の全ての患者において考慮すべきである。ILD患者が全身性血管炎に移行するかもしれない可能性も覚えておくべきである。
 
日本の診断基準になれている日本のリウマトロジストには当たり前ですよね。この度はIPだけでMPO-ANCA陽性がほしいので、とばします。
 
3. Nihon Kokyuki Gakkai Zasshi. 2007Dec;45(12):921-6.
[Prevalence ofmyeloperoxidase-anti-neutrophil cytoplasmic antibody (MPO-ANCA) in patientswith interstitial pneumonia].
Shiraki A, et al.
 
Abstract
MPO-ANCAは血管炎患者に頻繁にみられる自己抗体。血管炎症状を欠くMPO-ANCAIPの数名の患者を経験したが、その意義は不明である。私たちは膠原病を有さない69名のIP患者のMPO-ANCAを測定し、そのアウトカムを観察した。MPO-ANCA陽性は5例で陽性であり、陽性率は7.2%だった。MPO-ANCA陽性の患者は陰性と比べRFの陽性率が高かった。ANA陰性とRF陽性の感度と特異度は80%87.7%2例がMPA+ILDの患者を合併し、3年生存率はMPO-ANCA全体の患者で40%IP患者のMPO-ANCAは治療戦略を決める上で有用。
 
2/5が血管炎を発症しており、Tanaka 20110/9とは対照的です。
 

つぎに、気に入った1,3のManuscriptを読みます。 

最初の論文(Tanaka 2011)Resultを訳します。Methodは簡単に言うと、富山大学の病理部に相談のあった外科的肺生検の組織をレビューして、診療録より臨床データを解析したというものです。MPO-ANCA>20EUを対象としています。
 
Clinical findings
3つの施設より富山大学病院の間質性肺炎の病理コンサルテーションに送られた272例のうち、224例が肺生検の時にMPO-ANCAを測定された。その224例のうち9例がMPO-ANCA高値。PR3-ANCAも生検時に多くの患者で測定され、219例中4例が陽性 1例のみ、Patient 2MPO, PR3-ANCAとも陽性だった。生検時にはその他の自己抗体のデータも得られ、陽性はRF, 50/222; ANA,41/227; SS-A, 20/216; Jo-1, 10/231; RNP, 6/151;Scl-70, 2/215 and SS-B, 1/194MPO-ANCA高値を示した患者の平均年齢は62.1歳で男性優位(6:3)3例は顕微鏡的血尿を有し、健康診断で指摘された2例は無症状であった。肺機能検査は9例のうち6例で拘束性障害を示した。フォロー期間は19-72ヶ月(平均39.1)。4例はフォロー中に死亡。そのうち2例は急性悪化であった(Table 1)。生存期間の中央値は46ヶ月 (Fig. 3)。入手できるフォローのデータにおいて、MPAに伸展した患者はいなかった。しかも顕微鏡的血尿を呈した3例もフォロー中にMPAにならなかった。腎の所見はあっても軽微であったため、腎生検は行われなかった。MPO-ANCAを含むLaboTable2
 
Table 1 
 
 
 
 
イメージ 1
 
 
 
Figure 3
 
イメージ 3

 
 
Radiological findings
HRCTは全例で施行され、各の画像パターンはTable2に示す。最もコモンな所見は両側性のすりガラス状陰影(GGO)を背景とした網状粒状影。CT所見は6例でUIPパターンであり、網状陰影を伴う蜂巣肺を示した。Patient3は蜂巣肺を伴わないGGOが優位なNSIPパターンを示した。Patient 1は浸潤影の斑な分布を示すOPパターン。Patient 8間質性肺炎の急性悪化に一致する網状粒状影とびまん性のGGOPatient 9DADを疑う牽引性気管支拡張を伴うGGOを示した。
 
Table 2
 
イメージ 2


 
2のShiraki 2007@日本呼吸器学会誌も重要です。Case1MPO-ANCA295だった78歳女性は6ヶ月後に腎障害を認め、MPAと診断され、Case2MPO-ANCA32だった75歳男性は41ヶ月後に腎障害を認め、MPAと診断されました。


 
 
Clinical scenarioの答え>
 
ANCA関連血管炎として間質性肺炎が発症したというよりは、間質性肺炎の症例においてMPO-ANCAがたまたま陽性になったと考えた(AAVの診断においては偽陽性)。

MPAに伸展しない限り、血管炎としての管理は必要ないと判断し、通常の間質性肺炎の管理を依頼した。


 

 

 ps;↓でGCAのreviewを執筆させていただきました!


 

 

以下でEGPAのreviewを執筆をさせていただきました!

 


 

 

ps;↓ですが、執筆協力しております!

 

*1:interstitial[title]) AND (anca or"antineutrophil cytoplasmic" or "anti-neutrophil cytoplasmic"