リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

非Jo-1の抗ARS抗体を有する患者の予後はJo-1陽性の患者よりも悪い。

抗ARS抗体(抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体)が保険収載され、当院でも2014年4月より測定できるようになりました。
 
抗Jo-1抗体、抗PL-7抗体、抗PL-12抗体、抗EJ抗体、抗KS抗体をまとめて、測定しいずれかが陽性なら、陽性となります。どれが陽性だったのかは分からない、抗OJ抗体・抗Zo抗体は測れないという欠点がありますが、Jo-1抗体しか測れなかったことを思うと、ありがたいですね。
 
抗ARS抗体に関しては以下がよくまとまっており、リウマトロジストは参考にさせていただいております。
 
最近の抗ARS抗体に関する論文を見つけました。フランスからの大規模な報告(n=202)ですが、予後に関する興味深いものです。Abstractのみ訳します。
 
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Patients with non-Jo-1 anti-tRNA-synthetase autoantibodies have worse survival than Jo-1 positive patients.
 
非Jo-1の抗tRNA合成酵素抗体を有する患者の予後はJo-1陽性の患者よりも悪い。
 
 
OBJECTIVE:
Jo-1陽性 vs Jo-1 tRNA合成酵素抗体陽性の患者における累積生存率を比較するため
 
METHODS:
・1985-2009年の間に評価された抗tRNA合成酵素抗体陽性の患者を膠原病の診断に関わらず含めた。
・臨床データは前向きに集めたデータベースとカルテのレビューから抽出した。Jo-1Jo-1の間の生存がlog rankおよびCox比例ハザード法を用いて比較された。
 
RESULTS:
・202名の患者が抗tRNA 合成酵素抗体を有した;122例がJo-1抗体、80例が非Jo-1抗体(35 PL-12; 25 PL-7; 9 EJ; 6 KS; 5 OJ)を有した。
・初診時に筋炎の診断があったものは83%40%、重複症候群・分類不能膠原病と診断されていたものが17%47.5%、全身性強皮症が0%12.5%であった(p<0.001)。
Jo-1抗体陽性の患者における診断の遅れの中央値は0.4年でJo-1陽性の1年より短かった(p<0.001)。
・全コホートにおけるもっともコモンな死因は肺線維症49%、肺高血圧症11%。補正をしていない5年、10年生存率はJo-1抗体陽性患者で90%70%Jo-1の抗体陽性患者で75%47%であった。
Jo-1の抗体陽性患者のJo-1抗体陽性患者と比較したときのハザード比は累積生存に関しては1.9 (p=0.01)、イベントフリー生存に関しては1.9 (p=0.008)
・最初の診断時の年齢、診断の遅れ、民族、および膠原病の診断が生存に影響を及ぼした。性は影響を及ぼさなかった。
 
CONCLUSIONS:
Jo-1の抗tRNA 合成酵素抗体陽性の患者はJo-1抗体陽性の患者と比べ生命予後が悪かった。
・生存の違いは部分的にはJo-1の抗tRNA 合成酵素抗体の陽性患者における診断の遅れが寄与しているものかもしれない。
 
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同じ著者による報告で、Jo-1よりもPL7/12の予後が悪いとする報告があります。
 
Kaplan meyer曲線で見る限り、10年で約90% vs 約75%、20年で約70% vs 50%弱くらいです。
 
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