抗ARS抗体(抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体)が保険収載され、当院でも2014年4月より測定できるようになりました。
抗Jo-1抗体、抗PL-7抗体、抗PL-12抗体、抗EJ抗体、抗KS抗体をまとめて、測定しいずれかが陽性なら、陽性となります。どれが陽性だったのかは分からない、抗OJ抗体・抗Zo抗体は測れないという欠点がありますが、Jo-1抗体しか測れなかったことを思うと、ありがたいですね。
抗ARS抗体に関しては以下がよくまとまっており、リウマトロジストは参考にさせていただいております。
最近の抗ARS抗体に関する論文を見つけました。フランスからの大規模な報告(n=202)ですが、予後に関する興味深いものです。Abstractのみ訳します。
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Patients with non-Jo-1 anti-tRNA-synthetase autoantibodies have worse survival than Jo-1 positive patients.
非Jo-1の抗tRNA合成酵素抗体を有する患者の予後はJo-1陽性の患者よりも悪い。
OBJECTIVE:
METHODS:
・臨床データは前向きに集めたデータベースとカルテのレビューから抽出した。Jo-1と非Jo-1の間の生存がlog rankおよびCox比例ハザード法を用いて比較された。
RESULTS:
・Jo-1抗体陽性の患者における診断の遅れの中央値は0.4年で非Jo-1陽性の1年より短かった(p<0.001)。
・全コホートにおけるもっともコモンな死因は肺線維症49%、肺高血圧症11%。補正をしていない5年、10年生存率はJo-1抗体陽性患者で90%と70%、非Jo-1の抗体陽性患者で75%と47%であった。
・非Jo-1の抗体陽性患者のJo-1抗体陽性患者と比較したときのハザード比は累積生存に関しては1.9 (p=0.01)、イベントフリー生存に関しては1.9 (p=0.008)。
・最初の診断時の年齢、診断の遅れ、民族、および膠原病の診断が生存に影響を及ぼした。性は影響を及ぼさなかった。
CONCLUSIONS:
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同じ著者による報告で、Jo-1よりもPL7/12の予後が悪いとする報告があります。
Kaplan meyer曲線で見る限り、10年で約90% vs 約75%、20年で約70% vs 50%弱くらいです。