リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

ステロイド性骨粗鬆症(GIOP)におけるテリパラチド

 
<はじめに>
 
ステロイド骨粗鬆症(GIOP)で、アレンドロネートをはじめとするビスフォスフォネート製剤は第一選択の薬剤とされていますステロイド骨粗鬆症ガイドライン、2006年)。
 
一方、テリパラチドは効果は優れるものの、皮下注射で高価な薬剤ですから、アレンドロネートよりも敷居が高いのは事実しょう。
 
では、効果の違いがどのくらいであれば、ビスフォスフォネート製剤を優先することが妥当と言えるでしょうか?
 
違いが大きければ、アレンドロネートよりもテリパラチドを第一選択薬とするべきでしょうし、わずかであれば、わざわざ皮下注射の指導をしなくてもビスフォスフォネート製剤を優先していいでしょう。
 
その程度は医師や患者さんの考え方によって違うはずです。
 
答えとなるRCTのAbstractのみ訳しました。
 
 
<テリパラチドはアレンドロネートよりも腰椎骨折を減らす>
 

Effects of teriparatide versus alendronate for treating glucocorticoid-induced osteoporosis: thirty-six-month results of a randomized, double-blind, controlled trial.  Saag KG, et al.
Arthritis Rheum. 2009 Nov;60(11):3346-55.
 
OBJECTIVE:
GIOPの治療において骨への同化作用薬、テリパラチド(20μg/日)を骨吸収抑制薬のアレンドロネート(10mg/日)と比較すること
 
METHODS:
この研究はプレドニゾン5mg以上相当量をスクリーニングの少なくとも3ヶ月前より内服している患者428例(22-89歳)を対象に行った36ヶ月のRCTである。測定した項目は腰椎とhip boneの骨密度の変化、骨のバイオマーカーの変化、骨折の発生率、安全性である。
 
RESULTS:
テ群におけるベースラインからのBMDの増加はア群において有意に高かった。36ヶ月の時点において腰椎で11% vs 5.3%Total hip5.2% vs 2.7%、大腿骨頸部で6.3% vs 3.4% (P < 0.001 for all)
・テ群ではNT-type1 procollagen propeptide (PINP)Osteocalcin (OC)の値の上昇の%の中央値が1ヶ月後から36ヶ月後まで有意に増加し、C-terminal telopeptide of type 1 collagen (CTX) の値は1ヶ月後から6ヶ月後まで有意に増加した。ア群ではPINPOCCTXの値の上昇の%の中央値が6ヶ月後まで有意に増加し、36ヶ月間を通し、ベースラインよりも低い値を保った(P < 0.001)。
・腰椎椎体骨折はテ群においてア群よりも有意に少なかった(3 [1.7%] of 173 versus 13 [7.7%] of 169; P = 0.007)。腰椎圧迫骨折ははじめの18ヶ月が多かった。
・非椎体骨折では両群間に有意な差はなかった(16 [7.5%] of 214 vs 15 [7.0%] of 214; P = 0.843).
・テ群では投与直前の血清Caの上昇が多かった (21% vs 7%, P < 0.001)
 
CONCLUSION:
この結果は、36か月間GIOPをテリパラチドで治療された患者はアレンドロネートを投与された患者よりも骨密度がより増加し、椎体骨折が少なくなることを示唆している。
 
※18ヶ月時の報告
Teriparatide or alendronate in glucocorticoid-induced osteoporosis. Saag KG, et al.
N Engl J Med. 2007 Nov 15;357(20):2028-39.
 
BACKGROUND:
GIOPの予防と治療においてビスフォスフォネート療法が現在の標準的治療だ。ステロイド剤を長期内服し、骨折のリスクが高い患者においてAnabolic therapy (骨に対し同化作用をもつをもつ治療)に関する研究は欠落している。
 
METHODS:
ステロイド剤(プレドニゾン相当量を5mg以上)を少なくとも3ヶ月内服している男女428例(22-89歳)を対象に18ヶ月のRCTを行い、テリパラチドをアレンドロネートと比較した。214例がテリパラチド20μg/日、214例がアレンドロネート10mg/日を投与された。Primary outcomeは腰椎の骨密度の変化。Secondary outcomeは大腿骨頸部のtotalBMDの変化、骨代謝のマーカーの変化、骨密度が変化するまでの時間、骨折の発生率、および安全性。
 
RESULTS:
・最終評価時において、腰椎の骨密度の平均(+/-SE)はテ群においてア群よりも増加していた(7.2+/-0.7% vs. 3.4+/-0.7%, P<0.001)。有意差は6カ月までに達成された。12ヶ月時にはテ群においてより大腿骨頸部のtotalの骨密度が増加した。
・椎体骨折はテ群においてア群よりも少なかった(0.6% vs. 6.1%, P=0.004);非椎体骨折の発生率は二群の間で同様であった(5.6% vs. 3.7%, P=0.36)。
・テ群においてより多くの患者が血清Caが少なくとも1回上昇していた。
 
CONCLUSIONS:
骨折のリスクが高い骨粗しょう症患者において、テリパラチドを投与した患者では、アレンドロネートを内服する患者よりもより骨密度が増加した。
 
 
<リウマトロジストのコメント>
36ヶ月のデータをもとにNNTを計算してみます。
 
RCTの妥当性ですが、Methodは18か月時の論文を参考にしました。
Randomizationは性、場所、過去のビス剤の使用に応じ層別化されたBlock randomizationが用いられ、1:1に割り付けられました。
両群間に差はなく、Double blindでした。ITT解析かどうかは不明です。サンプルサイズは計算されていました。
 
追跡率 = 342/428 = 79.9%と、脱落が2割超と多目です。
 
アレンドロネートは週1回にするべきではなかったかと思うのですが、コンプライアンスが悪そうなのはお互いさまですかね。
 
いくつかの問題点はありますが、3年でほぼ8割追跡されているので、NNTを計算してもよいと判断します。
 
腰椎椎体骨折はテリパラチド群1.7%、アレンドロネート群7.7%(P = 0.007)なので、
→ Absolute risk reduction = 7.7% - 1.7% = 6%
→ Number needed to treat = 100/6 = 16.6
→ 17人(3年)
 
結構大きいですね。
 
プラセボに対してではなく、標準のアレンドロネートに対して、NNT 17(3年)ですから、この薬のパワーはかなりのものと言えるでしょう。