<Clinical scenario>
40歳男性が2週間前からの皮疹、関節痛、下血にて入院した。
バイタルは保たれているが、顔面蒼白で冷や汗あり、右腹部に強い圧痛と筋性防御を認めた。
両下肢、両前腕に紫斑が多発しているが、関節炎はなし。
造影CTにて、空腸に強い粘膜浮腫を認めた。
診断方法は?治療は?
※症例は架空のケースです。
<治療法を調べる>
1)Uptodateで
Clinical manifestations and diagnosis of Henoch-Schönlein purpura (IgA vasculitis)
CLINICAL MANIFESTATIONS IN CHILDREN
HSP (IgAV)の発症年齢は6-7歳。以下はイタリア、台湾、米国のretrospective reviewの結果。
■Purpura —全例が呈したがoverestimationの可能性あり(皮疹がないと登録すらされないかもしれないため)
■Arthralgia/arthritis — アメリカとイタリアでは3/4。台湾では43%
■Abdominal pain — 仙痛は約1/2。消化管出血は20 to 30%
■Renal disease —21 – 54%
CLINICAL MANIFESTATIONS IN ADULTS
大人のHSPも子供と同じ。でも二つだけ違うところがある。
■Intussusception is rare in adults.
■Adults are at increased risk for developing significant renal involvement including end-stage renal disease
2)同じくUptodateで治療を調べます(小児での話が主と思われるが)。
Management of Henoch-Schönlein purpura (IgA vasculitis)
Glucocorticoids
HSPへのステロイド使用はcontroversial。GI involvementのあるHSP経口投与しても吸収できないかもしれない。NSAIDsやステロイド剤の利益がないことは吸収不良によるものかもしれない。報告されたステロイドの利益は以下;
■Shortened duration of abdominal pain
■Decreased risk of intussusception
■Decreased risk of gastrointestinal procedures (endoscopy, imaging, and surgery)
■Decreased risk of recurrence
■Decreased risk of renal involvement
3 RCT(※)と12 retrospective reportsを含むシステマチックレビューにおいて、ステロイドの効果が検証され、上述のアウトカムに取り組んだ。著者の結論は腹痛の期間を短くし、持続性の腎疾患への進展を減らすかもしれないということであった。しかし、この研究には以下の制限があり、解釈に注意が必要だ;すなわち、多くがretrospectiveな研究であり、腎疾患の定義やステロイドの投与量・方法が様々であった。実際、フィンランドの小児223例の前向き研究では腎炎発症時におけるプレドニゾンの効果は認められなかったし、6カ月以内の使用した場合でもそうであった。同様に別のメタ解析ではプラセボか対症療法を受けた子供と比べ、14-28日間プレドニゾンを投与された子供において、6カ月時および12ヶ月における腎疾患のリスク(各々3 studies)に変わりはなかった。
HSPにおける長期のステロイドの効果がないことを考慮し、私たちは食事摂取ができない、あるいは日常生活に影響するほどの重症患者、入院を要するような患者に限り、プレドニゾンPSN1-2mg/kg/d(max60-80mg/d)を使用することを提案する。内服できない場合、メチルプレドニゾロンmPSL0.8-1.6mg/d(max64mg/d)を静注してもよい。静注のmPSLは内服の九州に影響するような粘膜下の浮腫・出血による活動性GI病変を有する患者において早期には有効かもしれない。私たちは腎疾患の予防目的でステロイドを使用することを勧めない。現在得られるデータはそのような目的での介入を支持しないからだ。
※3 RCTでは,PSN1-2mg/kgを2-3wksのみ治療されていました。
Gastrointestinal complications
腸重積が最もコモン。頻度は強い腹痛で入院した患者の3.5%。ひとつの研究でステロイドが腸重積を予防したことを暗示したが、ステロイドで頻度が減らなかったというstudiesもある。GIの合併症が低いためであって、nが足らなかったためかもしれない。(略)総じて、腸重積のリスクは小さく、この目的だけで早期のステロイド治療を早期から行ってしまうのは正当ではない。さらに腸重積が起こったのちにステロイドを使えば、ひょっとすると、治療によって腸管の生存能力を弱めて、患者を危険にさらすことになるかもしれない。
3)孫引き
ステロイドの投与方法を調べるため、メタ解析の論文に引用された2つのRCTの投与方法を読みました。
そのref11
PSN 1.0 mg/kg/d(bid) for 14 days
→0.5 mg/kg/d for 1wk
→0.25 mg/kg/d once on alternate day for 1wk
そのref9
PSN 2.0 mg/kg/d for 7 days
→1.5 mg/kg/d for 7 days on day8,9
→1.0 mg/kg/d for 7 days on day10,11
→0.5 mg/kg/d for 7 days on day12-14
いずれも短期間(2-4wks)で中止されています。
4)成人HSPのGIの治療を調べるため、PubmedでHSPのMeSHとAdult とmelena or gastrointestinal or abdominalを検索しました;293件ヒットしましたが、はじめの1ページ目に、最新のreviewがありました。
Dermatol Online J. 2012 Oct 15;18(10):9.
Fatal Henoch-Schonlein purpura in an adult related to bowel perforation: report and review of the literature.
Miniter U, Bae-Harboe YS, Powers JG, Campbell SM, Goldberg LJ.
この報告はperforationで死亡したHSPを報告し、Discussionに過去に報告されたいくつかの死亡例を記載し、ref23にHSP+GI involvementを呈した日本人15例の文献レビューを紹介しました。
Table 2にあるように、4/15でopeを要し、opeをしていない2例が死亡しました。治療として、13/15でステロイド剤が投与され、8例がパルス療法でした。3例に第13因子が補充されました。2例はステロイド剤なしでもAliveとのこと。1例は整腸剤とビタミンC、1例はopeのみでした。
5)以上まとめると、小児例では高用量ステロイド(パルスではなく)の使用はGI病変に有益かもしれないこと、成人例は非常に稀であり、GIの重症の合併症に対する治療法として確立されたものはないことが分かりました。ステロイドの投与期間は2-4週間とされています。
治療は現場の判断でよいのだと思います。経過観察、高用量ステロイド、パルス療法のいずれも間違いではありません。
<Scenario caseの経過>
Henoch-Schönlein purpura (IgA vasculitis)を疑い、皮膚生検を施行した。
見た目がshockyであったため、ステロイドパルス療法(mPSL1g)を施行した。翌日、著名に改善した。
Day2より高用量ステロイドを開始し、改善した。3-4週間の終了の予定とした。
入院1週間後、皮膚生検の結果が返り、IgA沈着を伴う小血管炎と判明したため、HSPと診断した。第13因子は軽度低値で返ってきたが、下血はすでに治まっていた。
ps;↓でEGPA診断に関するreviewを執筆させていただきました!
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