リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

リウマチ性疾患におけるCMV肺炎(2)

SLE加療中にサイトメガロウイルスCMV)肺炎を合併した症例を経験したが、リウマチ性疾患においてCMV肺炎の診断について述べられたレビューはない。
※その1
 
移植領域におけるCMV肺炎のレビューにたどり着いた。。。
 
Clinical manifestation, diagnosis, and treatment of cytomegalovirus infection in lung transplant recipients (Uptodate)
 
Introduction
βヘルペスウイルスグループのメンバーである、CMVは肺移植後の患者において病気や死亡に関わる重要な原因である。CMV感染症は細菌性肺炎についで二番目に多い感染症である。
 
Epidemiology
最初のCMV感染は感染細胞や体液の直接吸引を含む身近なコンタクトで成立する。初期感染の後、CMV感染は一生体内に存在する。ポピュレーションスタディCMV seropositivityが若い成人で徐々に上昇していることを示した。移植後のCMV感染は以下のうちのひとつで成立する。
CMV+のドナーからの臓器を介して
CMV+のドナーの血液産物を介して
CMV+のレシピエントの潜在性感染の再活性化によって
CMV感染者との身近なコンタクトによって
 
Guideline
固形臓器の移植におけるCMVの管理のためのガイドラインが移植協会の国際CMVコンセンサスグループによって出版され、2013年には別のガイドラインアメリカ移植協会によってアップデートされた。
 
これに加え、肺移植後レシピエントのCMV感染の管理のためのリコメンデーションが2005年に出版された。以下の議論はこれらの書類に基づく。
 
Infection versus disease
CMV infectionCMV diseaseは同義ではない;感染した患者の全てが臨床的に明らかに発病するわけではないからだ。
CMV infection・・・症状や所見の有無にかかわらず、CMV複製の証拠で定義される。
CMV disease・・・CMV感染の証明とそれによる症状や所見で定義される。CMV症は発熱・倦怠感・白血球減少・血小板減少のようなウイルス症候群として発症したり、組織浸潤による病態として発症することもある。
 
Clinical features
CMV diseaseと拒絶反応はよく似ているが、移植後の発症のタイミングが鑑別に役立つかもしれない。CMV乾癬は移植の翌週に起きることは稀。予防投薬をしていない場合、最初のウイルス血症の検出、CMV肺炎の発症は平均約40日と55日である。これに対し、急性の拒絶反応はいつでも起き、CMV感染が起きないような早期におきることもある。CMV症は典型的には予防投薬なしの場合、移植後3ヶ月以内、予防投薬をしている場合は中止後3ヶ月以内に起きる。
 
CMV syndrome・・・CMV症候群の患者は臨床症状を呈するが、末期の臓器障害をもたらさない。典型的には発熱、倦怠感、筋力低下、筋痛、関節痛がある。多くの患者がウイルス血症の間、白血球減少と血小板減少を呈する。
 
Tissue invasive disease(組織浸潤病)・・・肺炎が肺移植後の組織浸潤による病態のなかで、最もコモン。肝炎、胃腸炎、大腸炎も起きうるが。肺炎は急性の拒絶反応と早期には紛らわしいため、診断上のジレンマを招く。ともに微熱、息切れ、空咳、肺機能の低下をもたらす。時期の違いは記述の通りあるが。CMV肺炎は様々なX線変化に関連する;斑orびまん性のすりガラス状陰影、斑な浸潤英、小結節性の陰影、これらのコンビネーション。よりコモンではないが、気管支血管束の肥厚、Tree-in-bud所見、網状影、少量の胸水もある。
 
Diagnosis
肺移植後のCMVの管理をするためには適切な診断ツールが欠かせない。いくつかの入手できる検査法としてSerologyhybrid capture assay (HCA), PCR定性・定量pp65抗原血症、培養、組織学がある。CMV複製を検出するテクニック(CMV viral loadpp65抗原血症)はここ数年で随分進歩した。
CMV infectionやCMV diseaseが疑われる患者はCMV複製の血液検査を受けるべし。肺炎のような組織浸潤の病気を有する患者はTBLBを行うべし。
末梢血におけるCMV複製を検出する方法を選ぶことは施設によって様々。Viral load testing (PCR, or HCA) と抗原血症の両方とも有用であるが、PCRがよく用いられる。私たちも全血のPCR定量法を好んで用いる。様々な検査法が標準されていないため、一旦特定の検査法や臨床検体を決めたら、同じ方法でモニターするべきだ。CMVCMV症を治療されている患者では、CMV検出の検査は毎週繰り返すべきだ。
 
1)Serology・・・術後の予防投薬の必要性を確認するため、レシピエントは移植前にCMV抗体を測定すべきであり、ドナーも移植までに検査すべきだ。IgGのみでよく、IgMIgM+IgGを測定すべきでない。
 
2)CMV replication assay・・・CMV複製の検査にはPCR定量pp65抗原血症がある。
CMV viral load – PCRHybrid capture assaysがあり、臨床検体を用いて、各々、少量のCMV-DNADNA:RNA hybridsを検出し、定量する。CMV viral load assayはとくに自前で行う施設では、速やかに検査できる。検査結果は施設によって大きく異なる可能性があるため、患者をモニターする間は同じ検査法を用いることが大切だ。加えて、CMV DNAは典型的にはすぐに検出でき、血症よりも全血の方がより大量に検出される。そのため、毎回、臨床検体は一つに決めて行うべし。Viral load assayはウイルス血症を検出するだけでなく、BALや組織を用いて行うこともでき、このことは2010年の移植協会国際CMVコンセンサスグループにおいても提唱されている。
 
CMV pp65 antigenemia – CMV pp65 antigenemiaCMV pp65 lower matrix proteinに特異的なモノクローナル抗体を用いて末梢血の多角白血球のCMV蛋白を速やかに検出することを可能にする。陽性結果は細胞総数に対する染色された細胞数として報告される。結果は通常24時間以内に判明する。固定臓器の移植後のレシピエントにおいて役立つ;すなわち、ウイルス抗原血症はウイルス血症と関連するのだ。リミテーションとしてCMV抗原血症は好中球数<1000/mclでは用いることができないことが挙げられる。
 
Limitations – viral loadantigenemiaの結果の解釈は以下の通り問題をはらんでいる。最近までいずれも標準化されておらず、カットオフ値を決まっていなかった。そのため、移植センターは独自にカットオフ値を決めていた。2010年、WHOによる国際標準がCMVの標準化された量に触れており、これはNational Institute of Biological Standards and Controls in the United Kingdomより入手できる(CMV-DNAに限った話)。また、ウイルス血症は無症状のウイルス保持者から重症の組織浸潤病まで広い疾患に関連するため、陽性結果の解釈は臨床状況と臨床検体に応じてなされるべきだ。いくつかの組織浸潤病、とくに消化管と網膜症のケースでは末梢血を用いたCMV複製の証明は伴わないかもしれない。
 
3)Culture・・・BALの培養でCMVを検出することは活動性の感染症を診断するのに役立つかもしれない。しかし、肺にCMVがいるということは組織浸潤病でなくても起きうる。そのため、陽性であっても臨床状況に応じ判断されるべきだ。伝統的なtube cultureは数週間かかることもあるが、この方法は迅速シェルバイアル培養法に大きくとって代わられた。Tube cultureとは異なり、シェルバイアル法は組織培養の細胞変性変化を検出することによらない。その代わり、ウイルス複製の早期に表現されるCMV抗原を検出するために蛍光で標識したモノクローナル抗体を用いる。
 
4)組織学・・・気管支鏡を用いた肺生検は安全で信頼性の高い診断アプローチであり、感度が高い。CMV肺炎の診断に好んで用いられる。時に感染と拒絶反応の組織がオーバーラップすることがあるが、通常両者を区別することは可能だ。ウイルス抗原は免疫染色やin situ DNA hybridizationを用いて検出することができる。したがって、感度を最大限にするためにも、そういう方法は生検標本を用いて行うべきである。
CMV肺炎の確定診断には肺生検、気管支洗浄液、肺胞洗浄液で特徴的な封入体を証明することを要するが、その他の原因を除外できれば、ウイルス培養陽性と、特徴的な臨床像に基づいておおよその診断をつけることはできる。
 
※略しながら訳しています。一部、引用を省いております。
 
*********************************
 
リウマトロジストのコメント
 
免疫抑制剤(eq,カルシニュ-リン阻害剤)を用いて発生するCMV肺炎という意味ではHIV患者におけるCMV肺炎よりも、臓器移植後のCMV肺炎の方が参考になりそうだ。
 
CMV infectionCMV diseaseが疑われる患者はViral load testing (PCR, or Hybrid capture assay) とウイルス抗原血症の検査を受けるべし。基準値は決まっておらず、一つの検査法を決めたら、モニターのためにも同じ検査法を繰り返すこと。
 
ウイルス抗原血症はウイルス血症と関連しており、臓器移植後のレシピエントにおいて役立つ。
 
肺炎にはTBLBを行うべし。組織が得られれば、免疫染色やin situ DNA hybridizationを用いてCMV抗原を証明すべし。
 
新しいCMV培養法をシェルバイアル法と言う。特異性が高いわけではないので、陽性結果は臨床状況に応じ解釈されるべし。
 
CMV肺炎の確定診断には肺生検、気管支洗浄液、肺胞洗浄液で特徴的な封入体を証明することを要する、とされている。
 
エビデンスは乏しいが、移植領域の経験則を拝借すると、
 
CMV肺炎が疑われる患者には、CMV抗原血症やPCRといった血液検査に加え、TBLBやBALで封入体を見つける努力をしよう!