EUVASによる、CYCLOPSより「上」のスタディについて触れておきましょう。
「上」というのはクレアチニンの値のことです(笑)
MEPEXは、Cr> 5.8のANCA関連血管炎において、血漿交換が有効かどうかを検討したRCTです。
JASNはResultsから記載されていておもしろいですね。でも、RCTはちゃんとMethodから読みましょう。
読み方は、南郷先生のthe SPELLに沿っています(ポイントのみ下線にしています)。
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Inclusion criteria
(1) Chapel Hillコンセンサス会議から導入された基準にてウェゲナー肉芽腫症、または顕微鏡的多発血管炎と診断される
(2)組織学的証明のあるpauci-immune壊死性and/or 半月体形成性糸球体腎炎。ただし、その他の腎症はないこと
(3) 血清Cr > 500 mol/L (5.8 mg/dl).
Exclusion criteria
年齢<18 or >80 歳、不十分な避妊、妊娠、悪性腫瘍の既往、B型肝炎抗原血症、HCV抗体+、HIV抗体+、その他の全身性自己免疫性疾患、GBM抗体+または腎生検IgG染色で線状の陽性、入院24時間以内に人工呼吸器管理を要する肺胞出血のようなlife-threateningな腎外病変、2週間より以前の透析、1年前のCrが>2.3mg/dl、二次的な原因による腎不全、組織学的に証明された壊死性・半月体形成性腎炎の既往、2週間以上のCY・AZP(アザチオプリン)、>500 mgの静注mPSL、1年以内の血漿交換、>3ヶ月の経口PSL、試験で用いる薬へのアレルギー
Drug Regimens
両群ともCY2.5mg/kg/日(>60歳なら2mg/kg/日)で開始し、3ヶ月の時点で1.5mg/kg/日に減量。6ヶ月で中止し、AZP 2 mg/kg/日に変更。経口PSLは1mg/kgで開始し、10週間後までに0.25mg/kg/日に減量し、3ヶ月後に15mg/日5-12ヶ月から10mgに減量する。ステロイドによる胃炎、真菌感染症、PCPの予防は提案はされたが、強制ではない。
メチルプレドニゾロン(mPSL)静注グループはmPSL1000mg/日を登録日より開始し、月に1回、3ヶ月続けた。
Plasma Exchange Procedure
血漿交換のやり方は参加する施設によって様々であったため、医師は血漿ろかor遠心分離、血管のアクセス方法、抗凝固剤、連日or隔日かついてはその施設のやり方でよいこととした。以下はプロトコールで強制とした。登録から14日以内に計7回の血漿交換をすること、1回の血漿交換のボリュームは60ml/kgとすること、5%アルブミンでボリューム交換をすること。強制ではないが、腎生検後などの出血のリスクがある患者では、血漿交換の最後に新鮮凍結血漿で凝固因子を補う事が勧められた。
Evaluations
0, 1.5, 3, 6, 9, and 12ヶ月で評価し、採血、BVASで評価した。(略)
Outcome Measures
Primary outcome
・3ヶ月後における腎機能の回復。これは患者が生きていて、透析中でなくて、Cr<5.8 mg/dlであることと定義。
Secondary outcome
・12カ月後の患者の生存
・末期腎不全(ESRD);腎機能の回復がなく6週間以上透析が行われていること。
・Crが改善した患者における12ヶ月後のCr値
・副作用
Statistical Analyses
Randomizationはpermuted blocks of 4を用い、国、および無尿or48時間以内に透析を要しそうかどうかで層別化され中央割り付けされた。最初のデータは記録に記載され、中央コンピュータの登録に提出された。(略)
mPSL静注で予測された腎機能の回復の割合は50%で、血漿交換群において20%のさらなる改善を検出できるようデザインされた。10%のdropoutを見込んで、0.05の有意差とpower of 0.8を検出するためには150例が必要とされた(←検出できる統計学的パワーが80%になるように、という意味kかと思われます)。
Primary outcomeはITT解析で行われ、死亡を大抵、腎機能の回復の失敗と見なした。3ヶ月後の腎機能の回復をPearsonカイ二乗検定で、腎生存率、生存率をLog-rank testで比較した。
(略)
二群間の全ての有意差は<0.05を有意と考えた。中間解析は行わない。
Results
151例がスクリーニングされ、9例が抗GBM+またはmPSL>500mg投与のため除外され、4例が拒否し、ひとつのセンター(1例)が除外された。計137例がmPSL静注(n=67)or血漿交換(n=70)にランダムに割付けされた。両群の背景に有意差なし(table1)。全例が組織学的な診断がなされた。
12ヶ月後、腎機能が回復したが、後にESRDとなった患者が両群2例ずつあった。生存していて透析をしていない患者はmPSL群では全体の43%(29/67)、生存者の57%(29/51)、血漿交換群で全体の59%(41/70)、80%(41/51)。12ヶ月たってESRDになるhazard ratio (血漿交換群/mPSL群)は0.47 (95% CI;0.24-0.91; P=0.03)。3ヶ月後ESRDになるリスク(mPSL 41% vs PE 59%)の低下は22% (95% CI;6.2-39)、12ヶ月後ESRDになるリスク(mPSL 43% vs PE 19%)の低下は24% (95% CI;6.1-341)。腎機能の改善は血漿交換と多変量解析にて有意に関連したが(p=0.04)、層別化、年齢、診断、ANCAサブタイプとは関連しなかった。
Adverse Events
3ヶ月後、12ヶ月後の生存率はmPSL群で84%(56/67)、76%(51/67)、血漿交換群で84%(59/70)、73%(51/70)(log rank test P=0.68; Figure 2B)。主な死因は感染症(n=19)、肺胞出血(n=6)、心血管系疾患(n=4)。患者の生存率は両群で有意差はなく、層別化、年齢、診断orANCAサブタイプにも影響を受けなかった。6週を超えて生存した患者において、腎機能の回復は6週以降12ヶ月までの生存率の上昇に関連した(p=0.005; Figure 2C)。
122人の患者に計244の副作用が起きた(Table 3)。Severe or life-threateningな副作用はmPSL群48%(32/67)、血漿交換群50%(35/70)(p=0.80)。白血球減少と感染症が最多。コモンではないが、重症の血小板減少、血栓症が血漿交換群にのみ見られ、処置に関連した。
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このRCTは、Randomization、ITT解析、追跡率(100%)とも問題なく、信頼できそうです。唯一文句をつけるなら、盲検化されていないことくらいでしょうか。ここは倫理的にできないでしょうから、目をつむります。
mPSLの代わりに血漿交換をすることで、Number needed to treat(NNT;何人治療すれば一人に治療の効果を認めるか)はいくらになるでしょうか。両群とも100人ずつ治療したと仮定すれば、求められます(でしょ!)。
NNT=100/16=6.25
1年後の生存率はmPSL群76%、血漿交換群73%と変わりありませんでしたが・・・
ちなみに、この研究はmPSLとの比較試験であって、placebo群との比較ではないため、純粋な血漿交換の有効性は分かりません。また、mPSLの効果を否定するものでもありません(placebo群があったら、それより成績が良いかも)。
では、日本ではどうなっているでしょう・・・
MEPEXは「海外の結果」ではありますが、信頼してよさそうなRCTです。
自分が患者なら・・1年後の透析回避できる確率が16%上がるという治療法は説明してもらいたいと思います。
ps;リウマトロジストのこのセッティングの経験はたったの一例です。透析導入されて2週間のRPGNの60台の方に、PSL1mg/kg+CY(1.7mg/kg)と血漿交換を行って、透析離脱に成功しました。日本の現状と海外のエビデンスを説明して同意を得てから治療を始めました。
ps;↓でEGPA診断に関するreviewを執筆させていただきました!
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