リウマチ膠原病のQ&A

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Multicentric reticulohistiocytosis - その2 -

(↓のつづき)
 
Best Practice & Research Clinical Rheumatology 26 (2012) 543–557
 
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 Multicentric reticulohistiocytosis 
多中心性細網組織球症
 MRH - その2 -
 
 
病理
MRHの診断は皮膚結節and/or滑膜組織の特徴的な組織学的所見に基づいてなされる。典型的には多くの単核の組織球と直径50-100mmの多核巨細胞からなる。それらの細胞質はエオジン好性で、PAS染色陽性となる。はっきりとした粒状あるいはスリガラス状に染まる。核はバラバラに配置するか、末梢に整列したり、中心あたりに集まることもある。その他の炎症細胞も存在するが、少ない。早期の病変に歯巨細胞は少なく、好酸球、リンパ球、組織球が多いと報告されている。後期になるほど、巨細胞の数が増え、最終的にリンパ球と巨細胞は減少し、線維芽細胞が増え、線維化組織に置き換わる。細胞の細胞質のコラーゲンの貪食像であると報告する著者もいる。
細胞に沈着した物質を解明するため、様々な組織化学研究が行われた。方法は異なるが、その結果は脂肪(おもに中性脂肪とリン脂質)の非特異的な脂肪とその他のPAS陽性のジアスターゼ抵抗性の物質の集積であることを提示していおり、このことはグリコーゲンやムコ多糖類以外の多糖の存在を示唆する。
免疫組織学的な所見は様々であり議論されるところではあるが、より信頼のおける報告では単核球も多核巨細胞も単球・マクロファージ由来であることを支持する。実際、CD68CD45の表現がもっとも普遍的であり、これらの細胞において信頼できるマーカーである。それらを検査した全ての研究において陽性であったと報告されている。S100CD1aFactor13aの陰性とともに、これらのデータはランゲルハンス型組織球性でない疾患に一致する。さらに、増殖する細胞が活性化マクロファージに寄って産生されるサイトカイン、とくにTNFαIL1bIL6に染まることが分かっており、これらはMRHにおいて血清中でも上昇し、治療で減少する。これらのデータはMRHがマクロファージの反応性のプロセスであり、前炎症性サイトカインが限局性に局所ならびに、血液中にも放出され、それによって全身性の症状が説明されるかもしれない。
最終的に、多核巨細胞は破骨細胞系のマーカー(TRAP and cathepsin)に強く染まる、破骨細胞の分化を示すことが報告されており、メタロプロテアーゼの細胞表面にあるCD10に陽性であることが報告されている。メタロプロテアーゼの活動性は関節破壊を説明しうる。
 
検査
MRHに診断的な検査や特異的な検査はない。約半数の患者において血沈の中等度の上昇と軽度の貧血が見られる。高脂血症については一貫しておらず、5-30%のケースが軽度から中等度の高コレステロール血症を有する。RF陽性、ACPA陽性、抗γグロブリン血症、抗核抗体陽性は稀であり、その他の自己免疫疾患を除外することができる。関節液検査は少数例にしかなされておらず、結果も様々であった;細胞数の範囲も広く、軽度の炎症から高度な炎症まで、様々なタイプの細胞を伴って、滑膜炎が存在するかもしれない。通常、中等度の活動性のケースにおいては単核の細胞とリンパ球が、より炎症の強い滑液貯留に多角の顆粒球が見られる。
 
レントゲン
画像検査はMRHの診断に重要な役割を持っており、注意深い画像の読影と正確な臨床所見とともにこの疾患の正確な診断のカギとなる。
MRHの関節炎は典型的にはびらん性である。浸潤性肉芽腫性のプロセスが起きていることを示す、骨びらんは始めはよく限局しており、関節の辺縁から関節表面全体に急速に拡大する。これらの変化は関節裂隙の拡大、軟骨の損失と軟骨過骨の吸収に至る。骨粗鬆症と骨周囲の骨形成がほとんどのケースでなく、その他の炎症性関節炎と異なる点である。最も特徴的な関節炎の場所は手指野指節間関節(IP)、とくにDIPである。DIP75%ものケースにおいて障害される。
関節炎は非常に急速に進行し、無力なオペラグラス変形に至る。手のの関節炎も明らかである。足趾では、手の所見と似ており、全ての手指足趾が同様の変化をとる。脊椎では両側性の対称性の骨びらんが仙腸関節と横突起間関節に出現し、骨性の強直は軟骨下骨の効果を伴わずに出現する。重度の破壊を伴う環軸椎の関節炎が報告されている。
 
鑑別疾患
皮膚所見がなければ診断はチャレンジングであり、MRHの患者はしばしば誤診されている。MRHの鑑別疾患は骨びらん性多関節炎の全ての原因、とくにFibroblastic rheumatism、乾癬性関節炎、erosiveな変形性関節炎、高齢者の痛風、関節リウマチを含む。このトピックの詳細な解析は我々の過去の報告において記載した。
 
治療
稀な疾患であり、比較試験が現実であるため、MRHの治療は経験に大きく依存している。MRHself-limitingな疾患であると考えられるかもしれないが、急性期の永続的な後遺症は身体的にも精神的にも無力な状態にさせる。これらの理由で、この疾患はより積極的に治療をすべきであると勧められている。
NSAIDsHCQ(200-400mg/)、およびステロイドが症状を抑えるのに良い薬であるが、それらでは寛解や疾患のアウトカムを修復するようには見えない。いくつかのケースでは、メトトレキサー(7.5-25mg/w)、クロランブシル、シクロフォスファミド(2.2mg/kg/day6-18ヶ月)によって、とくに早期に治療された時に寛解導入されている。MRHのわずかなケースがアザチオプリンに反応し、レフルノミドに反応したケースも一例報告された。一般にステロイドMTXの併用が関節炎をコントロールするのに有効なようだ。一方、シクロフォスファミドやクロランブシルの導入は皮膚病変により効果的なようだ。
最近、TNFα阻害薬に劇的に反応することが報告されている。多数の薬剤にが無効であった患者においてドラマチックな臨床所見、レントゲン所見の改善がエタナセプト(25mg*2/w)、インフリキシマブ(5mg/kg)、およびアダリムマブ(40mg、隔週)によって観察されている。しかし、抗TNF製剤は均一に有効であるわけではない。とくに関節所見において。これらのケースでは異なるクラスにスイッチすることによって改善のチャンスが与えられるかもしれない。TNF阻害薬で治療された比較的小規模なケースのレビューにおいて、TNF阻害薬、MTXプレドニゾロンで同時に治療することが有効である傾向があるようだ。早期の治療はさらなる改善をもたらすかもしれず、window of opportunityのような疾患の早期の時相を表している。臨床医はTNFα阻害薬を併発する悪性腫瘍の発生率とMRHに関連するツベルクリン反応の陽性率が高いことを考慮して細心の注意を払って使わなければならない。
皮膚病変と関節炎はamino-bisphosphonates、すなわちアレンドロネート(10mg iv6週間、ついで1ヶ月に110mgに減量)とゾレドロニク酸(4mgを繰り返し静注)によっても改善している。ビスフォスフォネートの効果は破骨細胞様のマクロファージに対する陰性効果によるものかもしれない。その作用とはそれらの細胞を壊死and/orアポトーシスに誘導すること、皮膚と滑膜組織をこれらの細胞浸潤から防ぐということによる。
さらに、日光から守る着物やサンスクリーンが皮膚病変の治療に有効かもしれない。
 
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