リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

そのRA患者さんはEarlyですか? それともEstablishedですか?

(2011年9月)
 
ついに、RA診療に6番目のBiologicsGolimumabが承認されてしまいました。
 
5剤だけでも混乱しているというのに。。
 
遅ればせながら、5剤についてUpdateしておきます。
 
 
いずれのBioとも、概ね二つずつ大切なRCTがあります。
 
すなわち、まずはMTXを始めとするDMARDsに耐性のEstablished RA(病歴2-3年以上)におけるRCTが行われ、次いでMTX-naïveEarly RA2-3年以内)におけるRCTが行われるという大原則があるのです。
 
EarlyEstablishedの最大の違いは、Earlyは関節破壊が急速に起きるが、Establishedはむしろ緩やかに進行するという点です。
 
みなさまの目の前の患者さんはEarlyですか? それともEstablishedですか?
 
以下、現在得られているEvidenceを箇条書きに示します。効果=骨破壊の抑制、安全性=重症感染症を目安にしました。また、安全性は大規模で、Double blind期間の長いRCT(≧1年)を参考にしています。
 
 
Established RA
・骨破壊の抑制
Established RAにおいてIFX@2年)、ETN@3年)、ADA@1年)、ABT@1年)、TCZ@1年)各々とMTXの併用群はコントロール群(ETNのみMTX、それ以外はプラセボ)と比較し骨破壊を抑制した1-5)。このうち、骨破壊のreverseを認めたのはIFX@2年)、ETN@3年)のみであり(日本の投与量ではETNのみ)、ADA@1年)も骨破壊はゼロに近かった。
 
・重症感染症(注)
Established RAにおいてIFX@2年)、ETN@3年)、ABT@1年)各々とMTXとの併用群はコントロール群(上述のとおり)と比較し重症感染症のリスクを上げなかった1,2,4)TCZ@1年)とMTXの併用の安全性は有意差検定なされていなかったが5)TCZ単剤(@1年)ではDMARDs群と比較し有意差はなかった6)ADAMTXとの併用は@半年ではリスクを上げなかったが7)@1年では上げた3)
 
Early RA
・骨破壊の抑制
Early RAにおいて骨破壊を抑制したという試験はIFX@1年)、ETN@1年)、ADA@2年)、ABT@1年)においてあるが8-11)TCZにおいてはない(※)。骨破壊をreverseしたという報告はいずれのbioにおいてもない。
 
・重症感染症(注)
Early RAにおいてIFX@1年)は、MTX群と比較し、重症感染症のリスクを上げた7)ETN@1年)、ADA@2年)、ABT@1年)はMTX群と有意差がないか、同等であった9)10)11)ADA群(@2年)はADA単剤と比べるとリスクを上げた10)TCZには適切なスタディがない(※)。
 
 
(注)最近のRCTは副作用について有意差検定をしていないものが多いです。例えば、以下の4) AIM5) LITHE11) AGREE。これはRCTのサイズ(n)がそもそもX線変化の差を検出するよう算出されたものであり、稀な副作用の差を検出するほどのパワーを有していないためです。
 
イメージ 1
 
Reference
1) ATTRACT
 
2) TEMPO
 
3) DEO19
 
4) AIM
 
5) LITHE
 
6) SAMURAI
 
7) ARMADA
 
8) ASPIRE
 
9) COMET
 
10) PREMIER
 
11) AGREE
 
TCZは世界的には遅れをとっており、Early RAにおけるRCTは進行中です。
 
 
 
(略語)
IFX; Infliximab、レミケード、抗TNFαモノクローナル抗体(キメラ型)
ETN; Etanercept、エンブレル、可溶性TNF受容体
ADA; Adalimumab、ヒュミラ、抗TNFαモノクローナル抗体(完全ヒト化)
ABT; Abatacept、オレンシア、T細胞選択的共刺激調節剤(CTLA4, CD80/86拮抗薬)
TCZ; Tocilizumab、アクテムラ、抗IL6受容体モノクローナル抗体(ヒト化)