<Clinical scenario>
セルセプト(MMF)投与中のSLE患者。幸いなことに下痢はなく、むしろ便秘に対して酸化マグネシウム1.0gを投与中。
「添付文書に、併用したらいけないと書いてあったんですけど....」
という質問あり。
リウマトロジスト 「えっ!?知らなかった....」
添付文書を見ると、たしかに以下の記載!
⑵併用注意(併用に注意すること)
薬剤名等 マグネシウム及びアルミニウム含有制酸剤
臨床症状・措置方法本剤の作用が減弱するおそれがある
機序・危険因子 併用により本剤の吸収が減少したとの報告がある
< 疑問、発生!>
<Uptodateにて>
mycophenolateを調べると、以下の記載あり
Magnesium Hydroxide: May decrease the serum concentration of Mycophenolate. Risk D: Consider therapy modification
根拠となった研究は引用されておらず、、、
<Pubmedにて>
mycophenolate magnesium hydroxide
を検索すると、2件ヒットしました。
ひとつはpharcokineticsの研究で、もうひとつはreviewでした。後者は前者を引用していただけでした。ですので、前者の論文を読んでみることにしました。
Effects of food and antacid on the pharmacokinetics of single doses of mycophenolate mofetil in rheumatoid arthritis patients.
Bullingham R, Shah J, Goldblum R, Schiff M.
Br J Clin Pharmacol. 1996 Jun;41(6):513-6.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8799515/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2042632/pdf/bcp_0363.pdf
酸化アルミニウム1200 mg、酸化マグネシウム600 mgを含むマーロックス※という制酸剤を内服した場合、mycophenolate acidは空腹時と比べAUCが15%、Cmaxが37%減少するとのことでした。
Figure 1(a)
●空腹時、■食後、▲制酸剤(AlO+MgO)
※マーロックス
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00057738
<Scenario caseの経過>
患者さんには以下のように説明した。
「 酸化アルミニウムとの合剤ではMMFの血中濃度が少し下がるため、効果が想定されているよりも落ちる可能性は報告されています。
ただし、酸化マグネシウム単剤ではこの相互作用は分かっていないようです。もし単剤で相互作用があったとしても、お薬の血中濃度が逆に上昇して副作用のリスクが上がるというわけではないようです。
このまま両剤とも継続したほうがよいと思いますが、いかがでしょう。 」