リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

PM/DMの糸球体腎炎②

(つづき)
70歳女性のPM、尿蛋白++蓄尿UPCR1.2g、糸球体由来の尿RBC20/hpfを認めました。PM/DMの糸球体腎炎の可能性について検討中です。

 
The spectrum of renal involvement inpatients with inflammatory myopathies.
Medicine (Baltimore). 2014 Jan;93(1):33-41.
 
CKD in Patients With IM(略)

The Spectrum of Nephropathies Documented by Kidney Biopsy in Myositis Patients
・フランスの腎センター10施設において腎生検を施行した筋炎症例14例(男性7、女性7PM 6DM 5AS3例)を同定した (Table 5)。全例ともその他の自己免疫疾患(sarcoidosis, SSc, SLE)IM関連の悪性腫瘍らしい臨床・検査所見を認めなかった。腎生検を行った理由は蛋白尿 (1.2-7.0 g/d) (n=13), and/or AKI (SCr: 200-737 Kmol/L) (n=5), and/or CKD (n = 3) (eGFR: 34-46 mL/min) (Table 4)。顕微鏡的血尿は8/11 (72.73%)8(57%)では腎の異常が筋炎診断6ヶ月以内に見つかった。
・腎生検で分かった病理パターンは以下の通り(Table 5): 免疫複合体関連の糸球体腎炎 (n = 4)であり、IgA腎症(IgAN) 2例、膜性腎症2例、そのうち1例は半月体形成性の膜性腎症であった(Figure 2 A)DM (n=2)PM (n=3)5例では血管病変が優性であった。
・高血圧の既往がない4例(34-70歳)は重症の急性血管病変による重症のAKI (SCr: 200-570 Kmol/L)を呈した。最初の患者 (Table 5, Patient 6)は正常血圧で糖尿病を有する68歳男性で、AKI (SCr:420 Kmol/L)を呈した。腎生検は葉間動脈内膜の浮腫性の肥厚を示し、間質の線維化と虚血性の糸球体病変を伴った (Figure2B)。この患者は最終的にESRDに進行した。血管病変を呈した2 (Table5, Patient7)は正常血圧の67歳女性。PMの悪化(横紋筋融解症、肺病変)とAKI (SCr:570Kmol/L)を呈した。腎生検の結果、慢性の動脈硬化性変化の背景に葉間動脈内膜の浮腫性の肥厚が加わっていた (Figure 2C)。二つの葉間動脈に軽度のリンパ球浸潤を認めた (Figure 2D)。患者は透析を要し、AKIが出現した2年後に死亡した。3番目の患者 (Table 5, Patient 5)は正常血圧の55歳男性。PM(横紋筋融解症と間質性肺炎)とAKI (SCr: 200 Kmol/L)を呈した。腎臓の病理は葉間動脈の著名な浮腫性肥厚を呈し、血管内腔の閉塞を起こしていた。この患者はESRDに至った。4番目の患者(Table 5, Patient 8)は正常血圧の34歳男性であり、DM (横紋筋融解症, 間質性肺炎), 軽度の蛋白尿(0.8 g/dで始まり後に1.2 g/d), 血尿。病理学的検査において弓状動脈の顕著な線維性肥厚がみられた(Figure2F)。彼は軽度のCKD (eGFR: 54 mL/min)に進行した。血管病変が主体であった最後の患者はPM70歳男性(Table 5, Patient 9)。高用量ステロイドを開始して3ヶ月後、AKI (SCr: 737 Kmol/L)を呈した。腎生検の所見として明らかなものは広範な小動脈の動脈硬化であった。
・残りのケースには限局した区域性の糸球体硬化性病変(n = 2), 微少変化群 (n = 2), 慢性尿細管間質性腎炎 (n = 1)
 
 
 
 
 
TABLE 5. 本研究における腎生検で確認された腎症を有するIM 14例の臨床・検査所見

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・これら14例のうち11 (78.6%) CKDに伸展した。最終フォロー時において、免疫複合体に関連した糸球体腎炎を呈した4例のうち2例がCKD (median eGFR: 39.5 mL/min)に至った。血管病変が主体であった5例のうち、4例がESRDに、1例はCKD (eGFR: 50 mL/min)に至った。最後の群(n=5)では、4例が平均eGFR 33.8 mL/min (27-44 mL/min)CKDに進行した。

 
TABLE 6. 過去の報告における腎生検で確認された腎症を有するIM患者の臨床・検査所見
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・文献検索でIM患者において腎生検で証明された腎症15例の報告例を集めた (Table 6)。これらにはIgAN (n = 7), 膜性腎症 (n = 1), 膜性増殖性糸球体腎炎(n = 1), pauci-immuneの半月体形成性腎炎 (n = 2), 微小変化群(n = 2), 限局性区域性糸球体硬化性病変 (n = 1), 急性間質性腎炎(n = 1)。腎疾患は筋炎発症の早期に診断され、10(66%)6ヶ月以内であった。腎臓のアウトカムはすべてが報告されているわけではなかったが、少なくとも3 (20%) CKDに至った。 

  
<まとめ>
・フランスのコホート研究、PM/DM150例(平均フォロー期間4.1±4.5年)においてAKI16 (10.7%)CKD31 (20.7%)尿蛋白(>0.3 g/d)の頻度は検査された86例中26(30%)に認めた
 
・腎生検を施行されたのは14例(150例の9.3%)。免疫沈着型の糸球体腎炎が4例で、IgA腎症2例、膜性腎症2例(1例は半月体形成性)。高血圧の既往がない4例において強皮症のTMAのような血管病変;葉間・弓状動脈の浮腫性の内膜肥厚を伴う重症AKI。残りはmiscellaneous
 
 
Scenario caseの経過>
腎生検は施行できなかったが、ステロイドとアザチオプリンで治療し、2ヶ月以内に尿蛋白は正常化した。Cr上昇を伴わず、ATNで代表されるAKIではなさそうであった。糸球体腎炎の候補としては、IgA腎症、膜性腎症、微小変化群などの可能性を考えた。