<Scenario case>
19歳女性が発熱(40℃台まで5日間)、強い掻痒(かゆみ)を伴う全身性の皮疹にて入院した。
ROS; 咽頭痛(+)、関節痛(-)
皮疹は強い掻痒を伴う紅色の丘疹で、四肢、胸腹部、背部に多発。
腋窩、鼠径に1cm大有痛性リンパ節(+)
造影CT;肝脾腫、表在リンパ節腫脹。悪性腫瘍を疑う所見はなし。
発熱が1週間以上続けば、2 Majorを含む5項目以上となり、分類基準を満たします。
しかし、、
(症例は架空です)
< 疑問、発生!>
掻痒性の皮疹であれば、ASDを否定してよいか?
<疑問が生じたらまずは・・・>
UptodateのClinical manifestations and diagnosis of adult Still's disease - Rashを見ます。
ASDの典型的な皮疹は一過性で、サーモンピンク色、斑点または斑状丘疹性発疹であり、発熱時に出現する傾向がある。皮疹はおもに体幹と四肢を侵すが、手掌、足底にも見られるし、時には顔面にも見られる。皮疹が皮膚への刺激によって誘発される、ケプネル現象が見られるかもしれない。ASDの皮疹はぴったりした衣服にさらされる領域において探すべきである。ベルトのラインや乳房の下部など。皮疹はしばしば薬疹と間違われる。
→ 掻痒の有無については記載が不十分でした。
<Uptodateで分からないときは・・・>
Pubmedで調べましょう。
掻痒、痒いの単語を適当にならべて・・・
*1 AND "Still's Disease, Adult-Onset"[Mesh]
を検索したところ、11件ヒットしました。
その中でASD36例における皮疹に焦点をあてた報告を発見!!
しかも、同じアジアの台湾からの報告です!
Evanescent and persistent pruritic eruptions of adult-onset still disease: a clinical and pathologic study of 36 patients.
Semin Arthritis Rheum. 2012 Dec;42(3):317-26.
Abstract
Objective:
Methods:
・1998-2009年の間、私たちの病院でASDと診断された患者全ての皮膚病変の臨床病理的所見をレビューした。
・診断はYamaguchi criteriaに基づく。
Results:
・全部で36名(男性6例、女性30例)、発症年齢は17―67歳(平均35.7歳)。
・一過性の皮疹は31例(86%)、PPEは28例(78%)に見られた。
・PPEは通常発症時に見られ、広範囲に出現し、掻痒性の紅斑で蕁麻疹様の丘疹・皮疹、あるいは紫から褐色の頂点がフラットな(苔癬様)丘疹・皮疹。体幹、頸部、顔面、四肢の伸側にみられる。
・PPEは臨床的に蕁麻疹様丘疹 (n = 21)、苔癬様丘疹 (n = 18)、顕著な線状・皮膚描記症様 (n = 11)、皮膚筋炎様 (n = 7), 色素性痒疹様 (n = 4)、苔癬様アミロイドーシス様 (n = 2)と分類された。
・臨床活動性スコアは全体として5.78±1.11 (範囲4-8)、皮膚筋炎様のPPE 6.57±0.98、皮膚筋炎様でないPPE 5.57±1.07 (P = 0.0314)。
・5例が死亡し、3例は皮膚筋炎様のPPEであった。
・病理学的に一過性皮疹(8検体)は表層性の血管周囲のリンパ球・好中球浸潤を示し、PPE(32検体)では表皮の表層に孤立性または群集状の壊死性角化細胞が見られ、真皮上層・中層にリンパ球・好中球の浸潤を伴っていた。
Conclusions:
私たちのASD患者においてPPEはコモンだった。PPEの臨床的、病理学的所見を認識することでASDの診断が容易になるかもしれない。したがって、ASD患者の非典型的な皮疹があれば、生検をするべきである。非常に独特な病理所見によってこれらの皮疹を速やかに分類することが可能であるためだ。
(この論文は写真が多くて分かりやすかったです。ぜひ原著を!)
< こたえ >
成人スティル病36例において、一過性の皮疹は31例(86%)、持続的掻痒性皮疹は28例(78%)に見られた。前者は発症時に見られやすいとのこと。
もちろん、基準は基準なので、定義に合う皮疹しかカウントできませんけどね。。。
<Senario caseの経過>
初診から1週間後、掻痒を伴う皮疹は消失し、発熱は持続。 ANAは陰性であった。
発熱時に非掻痒性の淡い紅色の皮疹を認めた。
ps;↓ですが、執筆協力しております!
*1:pruritis or pruritic or itching