リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

ビタミンD欠乏① ―定義、臨床所見―

ビタミンD欠乏についてUptodateで勉強したので、Upしておきます。
 
 
 
Vitamin D deficiency in adults: Definition,clinical manifestations, and treatment
 
 
DEFINING VITAMIN D SUFFICIENCY —
Vitamin Dが足りているかどうかは25-hydroxyvitamin D (25[OH]D or calcidiol)の濃度を測定することで評価される。骨格の健康のために適切な25(OH)D濃度がどの程度であるかは議論されるところ。
Uptodate編集者を含む何人かの専門家は血清25(OH)D濃度20-40 ng/mLを好む。一方、その他のUptodateの編集者、このトピックの著者を含むその他の専門家は25(OH)D濃度を30-50 ng/mLに維持することを好む。このようにコンセンサスが得られている濃度は30-40 ng/mL20 ng/mL未満は骨格の健康に最適とは言えない。骨格以外の健康のために最適な25(OH)D濃度は確立されていない。
the Institute of Medicine (IOM)25(OH)D>20 ng/mLを支持する。これらの推奨は骨の健康に関連するエビデンスに基づく。その他の専門家 (内分泌協会、国立骨粗鬆症基金、国際骨粗鬆症基金、アメリカ老年医学協会)は高齢者には転倒と骨折を最小限にするために最低30 ng/mLが必要であることを提案する。
25(OH)D濃度の安全な上限値としてIOMによるシステマチック・レビュー十分なデータがないため決められないと結論した。しかし、25(OH)D>50 ng/mLの濃度にはいくつかの懸念がある。つまり高用量のビタミンDで治療される患者に骨折が増えるというデータ、>30-48 ng/mLの濃度が癌(例、膵臓前立腺)と死亡に関連する可能性を記載した相反する試験に基づくものである。
・商品化された測定法は総25(OH)Dを測っているが、なかには25-hydroxyvitamin D2 and 25-hydroxyvitamin D3を別々に報告するものもある ()
 
7-dehydrocholesterol7-デヒドロ・コレステロール)→(皮膚で紫外線のもとで)→Cholecalciferol(コレ・カルシフェロール);Vitamin D3
食事・サプリメント→Cholecalciferol(コレ・カルシフェロール);Vitamin D3
食事・サプリメント→Ergocalciferol(エルゴ・カルシフェロール);Vitamin D2
 
Vitamin D2, D3
→肝臓にてCalcidirol(カルシジロール);25(OH)D
→腎臓にて1,25(OH)D(カルシトリオール)
→腸管のCa吸収↑、骨吸収↑、腎からのCaIP排泄↓
 
・臨床的に重要なのは総25(OH)D濃度。血清25(OH)Dの値は測定方法によって異なる。測定法が多様であることはいまだに大きな問題であり、国際的に標準的を広く導入する必要がある。liquid chromatography/tandem mass spectrometry (LC/MS)、またはa comparable high-performance liquid chromatography (HPLC)によって標準的に測定されるVitamin Dが最も正確。
25(OH)Dの至適濃度を決めるためのいくつかの基準がある。この基準にはVitaminDによってPTHを最大限に抑制し腸管からのCa吸収を確保する腎臓における1,25OH-Dの産生、骨折などの臨床的なエンドポイントを防ぐための適切なレベルが含まれる。25(OH)Dのレベルが低下すれば腸管からのCaの吸収が低下し血清Caは低下する。結果として血清PTH濃度は上昇し、25(OH)Dから1,25(OH)Dへの転換を刺激し、Caの吸収を維持する (Figure 1※)
PTHを最大限に抑制するための25(OH)D濃度の評価は非常に多彩であるが、いくつかの報告はその濃度を27.5-30 ng/mLの範囲としている。しかし、その他の専門家は25(OH)DによるPTHの抑制がVitamin Dの広範囲な濃度にわたって連続的に持続するという命題を支持しており、>20 ng/mLであれば腎機能が正常である限りPTHを抑制するのに十分である。
25(OH)Dの値がかなり下がると、たとえPTH濃度が高くても1,25(OH)Dへの転換のために基質が十分でなくなる。こうなってしまう25(OH)D濃度はおおよそ4.4 ng/mL (11 nmol/L)。このように血清25(OH)D濃度>4.4 ng/mLCaの吸収効率に大きく関係する。
・至適な25(OH)D濃度は骨折の減少というような臨床的エンドポイントで定義されることもある。いくつかの臨床研究において25(OH)D濃度28-40 ng/mLを達成するためのVitamin D補充は骨折リスクを減らす。しかしながら、もうひとつの研究では25(OH)D>40 ng/mLを持続的に保つための1回の高用量VitaminD1年に150万単位)投与で治療された患者では骨折リスクが高かった。
 
Racial differences —
・骨格とそれ以外の健康のために至適な25(OH)D濃度は分かっていない。一般人口や特定の民族で積極的に確立されてはいない。Black Americansは骨折のリスクが低く、骨密度が高く、VitaminDがその他の民族と比べ低い。(略)
 
PREVALENCE —
・ビタミンD不足の頻度は用いられる基準によって異なる (<20 or <30 ng/mL)
2005-2006年のthe National Health and Nutrition Examination Survey (NHANES) では20歳以上の成人において41.6%25(OH)D<20 ng/mL。多変量解析ではHDLコレステロール低値、健康状態不良、牛乳を飲まないことがVitaminD低下に有意に独立して関連した。
2000-2004年の調査において>70%VitaminD<32 ng/mL
Vitamin D低値の頻度は世界的に増加しているかもしれない。世界の異なる地域におけるVitaminD値のレビューにおいてVitaminD< 30 ng/mLは研究された全ての領域でよくあった。Vitamin D<10 ng/mLは南アジアと中東で多かった。米国のあるデータにおいて25(OH)D濃度が1988-2004年の30-24 ng/mLから2004-2006年の24-19.9 ng/mLに低下した。(略)
 
CAUSES —
VitaminD不足にはいくつかの原因がある;摂取不足、吸収不足、日光曝露の減少、肝臓での異化亢進、体内での合成低下(肝臓での25ヒドロキシ化、腎臓での1ヒドロキシ化の低下)、VitaminDが作用する終末臓器の抵抗性 (table 1)1-αヒドロキシラーゼ不足また終末臓器のVitaminD抵抗性の患者では典型的には血清25(OH)Dが正常範囲内であり、減少していない。
 
OPTIMAL INTAKE TO PREVENT DEFICIENCY —
2010年、the Institute of Medicine (IOM)は正常健常人のためのCaVitaminD摂取の必要量に関する報告を発表した。1-18歳の子供、妊婦、70歳までの妊娠していない女性におけるVitaminDの推奨摂取許容(Recommended Dietary Allowance, RDA)600国際単位であり、71歳以上では800単位。このように定期的に有効な日光曝露を受けていない全ての成人が毎日少なくともVitaminD3(コレカルシフェロール)600-800国際単位を摂取すべきだ。
・家にいがちな高齢者とその他の高リスク群はこの摂取であれば25(OH)D低値であるかもしれない。より高い摂取量が必要かもしれない。このためアメリカ老年医学協会と米国骨粗鬆症基金65歳以上の高齢者には骨折と転倒のリスクを減らすため少し高い投与量、各々少なくとも1000国際単位、800-1000国際単位を推奨する。
VitaminDの必要量の推定は部分的に日光曝露量と不足を定義するのに用いた標準によって様々。The IOM委員会はVitaminDの摂取量の参照値を作るにあたり、日光曝露が最少であると仮定し、人口の少なくとも97.5%の需要を満たすために必要な目安として、「少なくとも20 ng/mL」と決めた。その他の専門家は高齢者の最低値を30 ng/mLとした。
IOMによる食事の参照値は一般人口の骨の健康におけるVitaminDCaの良好な効果を調査したデータに基づく。VitaminDの骨以外のアウトカムにおける利益を支持するエビデンスは一貫していない。原因になるかどうかについても結論が出ていない。十分なデータがないのである。そのため、摂取の参照値の基礎として提供することができない。
 
Groups at high risk for suboptimal intake —
・皮膚におけるVitaminDの産生は北緯の地域では年齢とともに低下する。さらにVitaminDの経口摂取は高齢者ではしばしば足らない。約半数の女性が食事からのVitaminD摂取が137国際単位未満と見積もられ、約1/465単位未満であった。VitaminD不足の患者の多くが相対的に低Ca血症を有し、血清PTH濃度が高い;これは二次的な副甲状腺機能亢進がVitaminD投与によって抑えられる。そのため、ほとんどの高齢者が補助的なVitaminDを要する。
VitaminD不足は以下を含む様々な人口においてコモン:
皮膚が浅黒い
肥満
フェニトインのようなVitaminD代謝を促進する投薬を受けている
入院患者
収容された人
さらに以下
保護的な服装や日光スクリーンの酷使によって日光曝露の効果に制限がある。
炎症性腸疾患とセリアック病による吸収不良
 
Candidates for 25(OH)D measurements —
・無症状の成人や妊婦におけるVitaminD不足のスクリーニングに関するデータはほとんどない。ほとんどの専門医が一般人口や妊婦において25(OH)Dの広範囲なスクリーニングを行うことは必要ではないと同意している。
・正常なリスクの成人に検査は必要ない。しかし、上述したリスクの高いグループでは25(OH)Dのターゲットとなる値を達成するために必要な推定の量を補充するために血清25(OH)Dの測定が適切である。ターゲットが達成されたかどうかを判定するために3-4ヶ月後に再度測定する。
・私たちは典型的には肥満、日よけ用の衣服の着用、吸収不良の病歴(セリアック病、炎症性腸疾患)、その他のVitaminD不足の危険因子のある妊娠女性においてVitaminDを測定する。
 
CLINICAL MANIFESTATIONS —
VitaminD不足の臨床所見はその程度と期間による。軽度から中等度のVitaminD不足の患者(25OH-D = 15~20 ng/mL)の大多数が無症状。典型的には血清Ca、リン、ALPが正常。
・血清PTH値は25(OH)D<20<10ng/mLの患者において各々40%51%もの患者で上昇していると報告された。VitaminD低値で二次的にPTH上昇している患者は骨の損失が加速するリスクが上昇する。骨の損失はDXA(dural-energyX-ray absorptiometry)における骨量低下、骨折で証明される。
・長期間の重症のVitaminD不足では腸管からのCaとリンの吸収も低下しており、低Ca血症が起きる。そのことで二次的にPTH亢進が起き、リン酸塩尿、骨粗鬆化をもたらし、遷延した場合成人では骨軟化症、小児ではくる病と骨軟化症をもたらす。症状は骨の疼痛、圧痛、筋力低下、骨折、歩行困難。消化管疾患または栄養不良、日光曝露不足による骨軟化症の患者は25(OH)D値が<10ng/mLになりやすい。
Caと骨の恒常性における役割に加え、VitaminDにはその他の多くの細胞外機能を調節しているのかもしれない。しかし、VitaminD不足と免疫学的、心臓血管疾患・代謝系との関係を確認するためのデータは十分でない。
 
EVALUATION —
VitaminD不足(25OH-D<20ng/mL、かつ>10ng/mL)の健常人はこれ以上の検査を行う必要はない。25(OH)D<10ng/mLの患者は骨軟化症発症のリスクがある。そのような患者では血清Ca、リン、ALPPTH電解質BUN、クレアチニン、Tissu transglutaminase antibody(セリアック病の評価のため)を測定する。レントゲンは骨痛があるような特殊な場合には必要。Uptodate編集者の幾人かは25(OH)D=10-20ng/mLの患者に同様な検査を行う。
・私たちは危険因子がVitaminD低値だけである患者には骨密度をルーチンには行わない。低VitaminDの患者は骨密度の結果に関わらずVitaminD補充を要する。しかし、多くの患者において既知の骨粗鬆症(骨密度に基づいてまたは骨折のため診断された骨粗鬆症)の評価の一部として血清VitaminD値が測定される。そのような患者では重症に低下したVitaminD値である患者ではとくにPTHが高い場合、骨粗鬆症の治療の必要性をVitaminD補充の後に再度検討すべきだ。重症のVitaminD不足の患者では骨軟化症の治療をCaVitaminD補充で行った後に著名な上昇が起きうる。そのため骨粗鬆症としての治療は不要になる。同様にセリアック病の治療をグルテン抜きの食事療法で行うと骨密度の有意な改善が起きる。
 
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