リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

SLEとバクタ

SLE患者にバクタの副作用が多いことは以前お話したとおりです。
 
ニューモシスティス肺炎の予防薬としては、バクタ以外にもベナンバックス、アトバコンなどの選択肢もあり、どれを使うべきかは議論のあるところです。
 
そこで、SLE患者にバクタを用いる前に、副作用が起きるか否かを予測できないものかを調べてみることにしました。
 
Pubmedtrimethoprim sulfamethoxazole lupusを検索
 
Englishlimitsして、44件ヒットします。
 
この中で、以下の二つを読んでみました。
 
RNP抗体陽性の患者は25%に発熱をはじめとするバクタの副作用が起きます。n=312例の膠原病患者を対象とした多変量解析にて、抗RNP抗体が唯一の危険因子であるとされております。
 
NAT2 halotypeの話は現在まで臨床応用されていませんが、魅力的ですね。大規模な解析がほしいところです。
 
 
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4. Positivity for anti-RNP antibody is a risk factor for adverse effects caused by trimethoprim–sulfamethoxazole, a prophylactic agent for P. jiroveci pneumonia, in patients with connective tissue diseases
Mod Rheumatol 2013 Jan;23(1):62-70
 
膠原病患者において抗RNP抗体はニューモシスティス肺炎の予防薬、ST合剤による副作用の危険因子である。
 
Abstract
Objectives
Trimethoprim–sulphamethoxazole (TMP–STX)は免疫不全患者におけるニューモシスティス肺炎(PCP)の予防のために用いられる薬剤であるが、重症の副作用を起こすこともある。この研究の目的は膠原病患者においてTMP–STXの副作用の危険因子を同定することであり、副作用の臨床所見を述べることである。
 
Methods
TMP–STXPCPの予防のために用いた539例の患者のカルテ (膠原病312, 肺疾患227)をレトロスペクティブにレビューした。HIV感染患者は除外した。危険因子を決めるため、単変量解析・多変量解析を行った。
 
Results
TMP–STXによる副作用は膠原病患者312例中22例(7.05%)に起きた。肺疾患では2.64%だったが。
・副作用の発生はその他の膠原病と比べSLE (11.0 %)MCTD (33.3 %)で有意に高かった。
・副作用は抗RNP抗体陽性の患者の25%に起きた。単変量解析の結果、SLEMCTD、抗RNP抗体が膠原病患者における副作用の危険因子であった。さらに多変量解析を行い、唯一抗RNP抗体陽性のみが副作用の危険因子であることが分かった。
膠原病、とくに抗RNP抗体陽性の患者における副作用の特徴は発熱などの全身性の炎症であった。
 
Conclusions
RNP抗体は膠原病患者におけるTMP–STXの副作用の危険因子である。発熱などの全身性の炎症が膠原病患者、とくに抗RNP抗体陽性患者における同剤の副作用の特徴かもしれない。
 
 
Fig.3
抗RNP抗体陽性の患者はTMP-SMXの副作用が高率である。
 
イメージ 1
 
 
 
 
 
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12. Association of the diplotype configuration at the N-acetyltransferase 2 gene with adverse events with co-trimoxazole in Japanese patients with systemic lupus erythematosus.
N.
Arthritis Res Ther. 2007;9(2):R23.
 
co-trimoxazole (trimethoprim-sulphamethoxazole)はニューモシスティス肺炎の予防と治療において有効な薬剤であるが、しばしば副作用が起こる。
・予防投与の量であっても。この試験の目的はSLE患者の個々においてco-trimoxazoleを理想的に用いることができることである。そのため、私たちはsulphamethoxazole代謝酵素をコードするNAT2遺伝子のpolymorphismを調査した。
166例のSLE患者のうち、入院し、co-trimoxazoleの予防投与を受けた54例がこのコホート試験に含められた。副作用は18例に起きた;薬を中止するに至った重症の副作用は2例だけであった。これらの2例にその他の施設から紹介された重症の副作用を経験した3例を加え、コホートの対象とし、症例対象研究で解析した。TaqMan法を用いて遺伝子型を決め、最尤法を用いてハロタイプを推測した。
コホート研究ではNAT2*4 haplotypeを持たない患者においてひとつ以上持っている患者にくらべて副作用が多かった (5/7 [71.4%] vs 13/47 [27.7%]; P = 0.034; 相対リスク 2.58, 95%信頼区間1.34-4.99)
・症例対象研究においてNAT2*4halotypeを持たない患者の割合は重症の副作用を呈した患者において、これを経験しなかった患者と比べ有意に高率であった(3/5 [60%] vs 6/52 [11.5%]; P = 0.024; オッズ比11.5, 95%信頼区間 1.59-73.39)。私たちは日本人SLE患者においてNAT2*4 haplotypeがないことはco-trimethoxazoleの副作用と関連すると結論づけた。
 
 
 

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