リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

EULAR recommendation 2013-その1-

201310月、EULAR recommendations for RAの論文が出版されましたね。
 
Recommendationの部分のみ訳します。
 
注目すべき、低用量ステロイドに関する推奨を-その2-に示します。
 
包括的な指針
A. 関節リウマチ(RA)患者の治療は最善のケアを目的とし、患者とリウマトロジストによって共有された決断に基づいてなされるべきである。
 
B. リウマトロジストはRA患者のプライマリーケアを行う専門医である。
 
C. RAは個人的・社会的・医療的に高いコストをもたらす。これらのコストの管理は治療を担当するリウマトロジストによって考慮されるべきである。
 
 
推奨
1.DMARDsによる治療はRAの診断がつき次第、開始されるべきである。
 
2.治療の目的はすべての患者において寛解や低疾患活動性というターゲットの達成であるべきである。
 
3.モニタリングは活動性RAでは頻繁(1-3ヶ月毎)であるべきである;もし治療を開始して最大3ヶ月までに無効である場合、あるいは6ヶ月までにターゲットが達成されない場合は治療を調整すべきである。
 
4.メトトレキサート(MTX)は活動性RA患者における最初の治療に含むべきである。
 
5.MTXが禁忌の症例(あるいは早期の不耐)にはスルファサラジン、またはレフルノマイドを(最初の)治療に含めることを考慮すべきである。
 
6.DMARDを投与されていない患者ではステロイドの投与にかかわらず、csDMARDs(従来の合成DMARDs)の単独、あるいはcsDMARDsのコンビネーションで用いられるべきである。
 
7.低用量グルココルチコイドは最初の治療ストラテジーの一部に6ヶ月までは考慮されるべきである(一つ以上のcsDMARDsと一緒に)。しかし、臨床上、実行可能な範囲でできるだけ早く減量されるべきである。
 
8.もし最初のDMARDの治療によって治療のターゲットが達成されない場合、予後不良因子がないのであれば、別のcsDMARDを用いたストラテジーに変更することを考慮すべきである;予後不良因子があれば、bDMARD(生物学的製剤のDMARD)の追加を考慮すべきである。
 
9.MTX and/or その他のcsDMARDの治療に反応しない患者においてはステロイドの有無にかかわらず、bDMARDsTNF阻害薬、アバタセプト、またはトシリズマブ。特定の環境下においてはリツキシマブ)をMTXとともに開始されるべきである。
 
10.もし、最初のbDMARDに反応しなければ、別のbDMARDで治療されるべきである;もし最初のTNF阻害薬*に反応しない患者の治療は別のTNF阻害薬でもよいし、作用機序の異なる生物製剤でもよい。
 
11.トファシチニブは生物製剤の治療に反応しない場合に考慮してもよい。
 
12.もし患者がステロイドを減量後も寛解を維持している場合、bDMARD§の減量を考慮してもよい。とくにcsDMARDと併用されている場合。
 
13.寛解が長期に持続する場合、患者と医師に共有された決断のもと、csDMARDを注意深く減量することを考慮してもよいかもしれない。
 
14.治療を調整する必要がある場合、関節破壊の進行、合併症、安全性の問題のような疾患活動性とは別の要素も考慮されるべきである。
 
 
*TNF阻害薬;アダリムマブ、セルトリズマブ、エタナセプト、ゴリムマブ、インフリキシマブ、biosimilarsEMA and/or FDAのような承認のプロセスを経て認可されているような)
特定の環境とはリンパ腫の病歴や脱髄疾患を含み、添付のテキストに詳細を記載されてある。
減量とは投与量を減らしたり、適応のある範囲内で投与間隔を広げてもよい。
§ほとんどのデータがTNF阻害薬についてのものであるが、投与量の減量や間隔を広げることは作用機序の異なる生物製剤にも妥当であると仮定した。
 
DMARD, disease-modifying antirheumatic drug; EMA, European Medical Agency; EULAR, European League against Rheumatism; FDA, Food and Drug Administration; MTX, methotrexate; RA, rheumatoid arthritis; TNF, tumor necrosis factor
 
 
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リウマトロジスト自身、EULAR recommendation for RAを読むのは初めてです。
 
これまではアメリカ寄りで、ACR guideline(20082012)を参考に診療を行っておりました。今回、EULAR recommendationをちゃんと読んでみようと思ったきっかけとなったのは、「早期のステロイド使用を推奨している」というリウマトロジストの師匠からのニュースでした。ACR  guidelineはステロイドについては触れていないだけに一大事です。
 
なんとなく、「ステロイドを使うのはもう時代遅れだ」みたいな傾向が最近、リウマチ専門医のなかにあったのではないでしょうか。
 
とくに、バイオ世代とベテランとの間で、見解の違いがあったように思うのです(リウマトロジストはその中間と自負しております)。
 
その問題の解決に迫る内容であればよいのですが・・・
 
それでは、そのステロイドに関するリコメンデーション7の訳に飛んでみましょう!