リウマチ膠原病のQ&A

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EULAR recommendations for RA 2019(関節リウマチの推奨)②

EULAR recommendations for RA 2019を勉強しています

https://oiwarheumatology.hatenablog.com/entry/2020/02/22/154626

 

では、本文の解説文より、2016年からの変更があった項目についての解説を訳します。

 

B. Treatment decisions are based on disease activity, safety issues and other patient factors, such as comorbidities and progression of structural damage.

治療は疾患活動性、安全性、そして、構造的破壊の進行、合併症といったその他の患者のファクターに基づくいて決定されるべきである。

 

2016年の推奨に加え、変更は行っていないが、この指針はbDMARDs、tsDMARDsを使用する事を考慮する時にはとくに大切。JAKiの帯状疱疹感染のリスクが日本や韓国のようなアジアで顕著に高いことはこの指針に含まれる。この指針は肥満やVTEの既往に関連するVTEのリスクに関するありふれた議論にも向けられている。この目的において「リスク」という用語がより明白でこの包括的指針によいのではないかという議論があったが、comorbidityとsafety issuesという用語がリスク評価を元々含んでいるということで合意に至った。例えば肥満もcomorbidityに含まれる。こういう審議を説明文に記述することでこの指針を変えない事が決定された。

 

D. Patients require access to multiple drugs with different modes of action to address the heterogeneity of RA; they may require multiple successive therapies throughout life.

患者はRAの不均一性に向け、様々な作用機序の薬剤へのアクセスを要する。

 

この新しい指針を作成することはRAの治療薬の数が増加していることを考慮して、必要であり、またタイムリーと考えられた。私たちは今やTNF, IL-6, CD80/86, CD20, JAKのような分子標的のファミリーを認識している。これらの分子のいくつかをターゲットとした多くの薬剤をもって。RemissionやLDAを目指すこと(推奨2,3を参考)はひょっとすると、ときに3ヶ月毎といった早いタイミングで薬剤間の変更(cycling)することを要するかもしれない。戦略の指針に見合う改善(推奨2,3を参考)が十分でなければ。

さらに、一つの薬剤に失敗しても同じクラスに属する別な薬剤に変更すること、すなわち同じ分子をターゲットとすることがまだ有効でありえる。そのため患者、リウマトロジスト、支払者はたくさんの有効的な薬剤選択が治療目標の達成にしばしば必要となることを知っておくべきだ。これは必ずしもコストの超過を被るものではない。なぜならうまくいっていないDMARDを継続する事はその他のDMARDに変更することと同じくらい高価であるからだ。この項目はもうひとつの大切なRAの特徴に向けられたものだ:RAは生涯続く原因不明の疾患であり、その他の慢性疾患と同様、ほとんどの患者において現在のところ治すことができない。しかし、現在私たちが入手できるすべてのスペクトラムを用いた治療選択を適切に行うことで、大多数で寛解、最低限LDAに持ち込むことはできる。すなわち薬剤投与中の寛解が私たちが通常達成できるベストな状態であるのだ。その後の薬剤減量が現実的であることを含めて。薬剤減量のアプローチは推奨11、12に記載されてあるが、患者、リウマトロジスト、支払者、社会が多くの患者が治療をやめることができないであろうこと、そして生涯の治療を要することに気づくべきだ。新しいDMARDを開始した50%までの患者が効果不十分あるいは有害事象のために12-18ヶ月以内にやめなければならない。実際のところ、私たちの現在の治療薬、治療戦略の全てを使っても多くの患者が治療ターゲットに到達していない。しかし多数の薬剤に失敗した患者の10-20%は別な薬剤を使えばいまだによい治療効果が得られる。現在の治療アプローチの主な弱点は個々の患者を最も適切な治療薬に向けてすぐに層別化するバイオマーカーがない事だ。大切なこととして、これらの考察は予測マーカーを検索する必要性を強調する;しかし相当な患者(約20-30%)が現在の治療選択の全てに抵抗性であるため、新しい治療法がやはり開発されなければならない。委員会のメンバーの中では100%がこの指針とその言葉と位置に同意した。LoA 9.9 (0.4).

 

8.If the treatment target is not achieved with the first csDMARD strategy, when and poor prognostic factors* are present, a bDMARD† or a tsDMARD‡ should be added.

治療目標が最初のcsDMARDの戦略で達成されなければ、予後不良因子がある場合は‡bDMARD†かtsDMARD‡を追加すべきである。

 

2016年ではこの推奨は以下のとおり、「治療目標が最初のcsDMARDの戦略で達成されなければ、予後不良因子がある場合はbDMARDかtsDMARDの追加を考慮すべきである;現在のプラクティスはbDMARDを開始することであろう」。したがって2019 updateでは2つの大きな変化がある。まず委員会はJAKisの長期的な効果と安全性に関する新しいエビデンスのため、bDMARDsをtsDMARDsよりも優先する記載を改訂した。つぎに、bDMARDは考慮されるべきから、追加すべきに推奨された。

最初の変化については、委員会はbDMARDsとtsDMARDsが平均して同等の効果を有することに同意をし、それがゆえに効果の面からはこれらの薬剤のいずれも優先順位を付けなかった。非劣勢試験としてデザインされた2つの研究がadalimumabに比べbaricitinib or upadacitinibの統計学的優越性を示したが、委員会にとって臨床試験におけるわずかな差がどれほど全体的に重要かという事を考えると、tsDMARDsのbDMARDsに対する優越性は十分に確診的とは言えなかった。さらに、この結論は最近提示されたデータにも支持される。filgotinib+MTXはあらかじめ決められた目標であるadalimumabと比較した時のDAS28<3.2について非劣性であることが示されたが、優越性は示されなかった。secondary endpointのいくつかについてsuperiorityが見られたが[83]。大切なことに、これらの研究で腫脹関節のような様々な炎症マーカーが二群間で差がなかった。上述した、これまで分かっていなかった臨床的重要性とともに。

3番目のJAKi、peficitinibは有意な効果を示した臨床試験が行われた日本で承認された[84 85];全体的な研究において効果は同様に明らかでない。おそらく高いプラセボ効果のために[86]。

4番目のJAKi、upadacitinibは様々なRA populationsにおいて併用と単剤でテストされるphase III trialsに行った。このクラスの文書化された有効性に加えて。;upadacitinibは同時にUSAのFDAによって15mg/dayで承認された。JAKisで治療された患者に血栓症が起きたという警告とともに[87];またEuropean Medicines Agencyはupadacitinibについてはpositiveな意見を示した。

5番目のfilgotinibはphase III trialの結果の出版が待たれいて、この薬は現在定期的な評価を行われているところだ。

安全性に関しては、最後の委員会までに分かっていることと、さらに帯状疱疹のリスク[26]のような現在のSLRで裏付けられることを超えて、すなわち血栓症のような新しい安全性の問題がbaricitinib (4mg/day)、tofacitinib(5mg2回/dayでも、とくに10mg2回/dayでも、血栓塞栓症のリスクのある患者や高齢者で特に)において出てきた。tofacitinibに関するこれらの後者のデータは現在進行中のA3921133 (NCT02092467)の中間解析から出てきた。この試験は少なくとも一つの心血管系リスク因子を有するRA患者において主要な心血管系イベントと悪性腫瘍に関して、tofacitinib 5mg2回、10mg2回をTNF阻害療法と比較した試験だ[90]。血栓塞栓イベントはupadacitinibでも観察された[91,92]。血栓塞栓症はとくにこれらのイベントのハイリスクの患者において多い(安全性SLRを参考)。過去に血栓塞栓症の既往がある者、BMIが高い者、ホルモン治療中の患者、高齢者[88,93]。そのため、JAKiは血栓塞栓症のある患者には注意をして使用すべき。さらに現在の情報はこのリスクに関して言えば最終版ではなく、さらに新しくなるものである。どのメカニズムが子のリスクを生むのかについては分かっていない;これは研究の主なターゲットとすべきだ。

したがって、患者が最初の治療戦略で治療目標を達成せず予後不良因子がある場合に、どの薬剤を選択すべきかという決定は禁忌の集計、患者の好み、コストに基づくべきだ。

bDMARDかtsDMARDを考慮すべきとするよりも追加すべき、とした二番目の変化は以前よりも、併用療法の強い支持(item 9)を意味する。過去数年でSLRsがbDMARDsの中では同様の有効性であるというエビデンスを示した。このことはEMAやUS-FDAで認可されたbiosimilarsもはっきり含んでいる[27]。MTXまたは(その他のcsDMARDs)で失敗した後のcsDMARDsの有効性に関する新しい研究は最後のupdateから行われていないが、最後のupdateの議論の間、このアプローチの利益は限定的で骨破壊の進行が生じるかもしれないという十分なエビデンスが見つかった[94 95]。biosimilarsが出現して多くの国でbDMARDとtsDMARDのコストが下がったことを加味して、委員会のmンバーはこの推奨が強化されるべきであると感じた。参加者の数名は予後不良因子(item 7)を有さない患者にでさえ適応しようと提案したが、この提案は委員会の中で共調されなかった。一方で、最初のMTXで反応しなかった予後不良因子を持たない患者において、csDMARD(+GC)に比べてbDMARDやtsDMARDのAdd-onが利益があることを直接調査した研究はなかった; これは予後不良因子を有する患者においてですらなかった。これはresearch agendaの一部につながる。新しい記述は参加者の95%に承認された。全般的な効果についてのLoEは1a (regarding its primary use in patients with poor prognostic factors: 5), SoR A (D), LoA 9.3 (1.0).

 

10. If a bDMARD# or tsDMARD## has failed, treatment with another bDMARD† or a tsDMARD‡ should be considered; if one TNF inhibitor therapy has failed, patients may receive an agent with another mode of action or a second TNF inhibitor.

bDMARDsとtsDMARDsが失敗に終われば、その他のbDMARDかtsDMARDを考慮すべきだ;もし一つのTNF阻害薬が失敗すれば、患者は別なMOAを受けてもよいし、二番目のTNF阻害薬を受けてもよい。

 

この推奨の最初の部分は変わっていない。二番目の部分は文章を変えて少し変更を行った:今回、委員会はanother MOAをa second TNFiの前に置いた。この修正は別なMOAがsecond TNFiよりも有効であるとするいくつかの登録データ、観察研究、RCTの報告に基づく[98–100]。しかし、これらと同様な他の研究はbiasが高いかもしれない。過去のSLRに述べられているように、TNFisにIRの患者を対象としたRCTのメタ解析はsecond TNFiと異なる薬剤クラスの変更との間で有効性に差を示さなかった。これらは比較が別々で、head-to-head研究ではないが。この推奨はTNFiの失敗に関連した推奨だけではなく、その他のbDMARDやtsDMARDの失敗でも言えることである。TNFi投与の失敗の後TNFiの効果は長期に得られる[101-103].SLRの時には以下のデータはなかった(1)IL6R阻害薬の失敗後のIL-6R阻害薬(eg, sarilumab after failure of tocilizumab), (2) JAKis 失敗後のJAKi(eg, baricitinib after IR to tofacitinib or (3) tsDMARDs失敗後のbDMARDs。しかしその後、最近の臨床試験のpost-hoc解析はTCZ失敗後のsarilumabはいくらか有用であることを示唆した[104]、JAKiにIR後のTNFi使用の研究が出版され、TNFi後にJAKiにスイッチするのと同様の全体的なアウトカムを示した[105]。言うまでもないがsecond TNFiが失敗した成分のbiosimilarでなく、分枝的に別なTNFiのことである。委員会メンバーの中で、84%が記述の変化に同意した。LoEはTNFisに効果不十分の患者では1aのままであった;JAK inhibitionはいくつかのbDMARDの失敗後のRCTで研究された91 106。LoE 1a, SoR A; LoA 8.9 (1.2).

 

11. If a patient is in persistent remission after having tapered glucocorticoids, one can consider tapering bDMARDs
or tsDMARDs, especially if this treatment is combined with a csDMARD.

もし患者がステロイドを漸減した後でも寛解が持続していれば、bDMARDsまたはtsDMARDsの減量を考慮してよい。とくにcsDMARDと併用されている場合は。

 

このアップデートで、tsDMARDという用語が各の試験のデータに基づいて含まれた[107]。それ以外にこの推奨は変わっていない。議論の中で、委員会のメンバーは提案された順序を強調した(まずGCをやめること、ついで治療ターゲットが持続する場合はbDMARDsやtsDMARDsを減量すること)。2010年の推奨ではすでに導入され、以降持続しているこの指針を繰り返すことで、反論するデータも入手できないため、委員会はbDMARDsやtsDMARDsの減量や間隔の増加の開始の前に持続的な寛解が必要であることにはっきりと賛同した。bDMARDsの中止はしばしば再発と関連すること、それゆえに多くの委員会メンバーが中止よりも減量や間隔増加のように減量して経過を見ることを好んだであろう;しかし再燃した大多数(>80%)の患者が過去の治療の再開でよいアウトカムを得た[107 108]。

「持続的」という用語の定義は得られない。3,6,12か月の寛解持続がそのような定義により適切であるかということを調査した研究はない。いくつかの研究は6ヶ月の寛解をこの目的に使用された。しかしこれはresearch agendaの一部にならなければならない。いくつかの研究は再発リスクがbDMARDsの減量の前にdeep remission or stringent remissionを達成していない事に明白に関連することを示した[107, 109–112]; しかし、これは試験の結果が相反するため最近のSLRで明白に確立されたものではない[113]。bDMARDs減量後の再燃は関節破壊の進行と関連する。とくに疾患活動性が長期に増加することになる場合。ダメージの進行は短期間の再燃では見られないかもしれない[115]。重要なことに関節破壊の少しの進行でも年余を経て有意なものになったり、不可的な身体障碍に至るものかもしれない[115]。

このように持続的なACR-EULAR remissionは再燃のリスクが最も低いことに関連し、LDA(かつて寛解と呼ばれていたその他のより弱い状態)の間の減量は高い再発リスクのために推奨されない[114]。さらに減量は関節破壊がある患者では慎重に行われなければならない。こういう患者は完全にbDMARDsを中止することで関節破壊の進行リスクが高いため。減量では見えない?高い急性期反応物質や残った低い疾患活動性を有する患者でも同様114。この点において追加される議論のように、併用するcsDMARDを中止する間bDMARDs(またはtsDMARDs)を継続することが推奨された。しかし、この疑問を調査した最近のRCTは二つのストラテジーの間でアウトカムに差はなかった116; そのためコストと安全性の問題から委員会はやはりbDMARDとtsDMARDをcsDMARDよりも最初に減量することを支持する。参加者のうち93%がこの変更に同意をした。LoE 1b, SoR A, LoA 9.2 (1.0).

 

ps;執筆協力した書籍です