リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

最初にTCZ、ABTで治療されたRA患者は2剤目にどの薬剤へのスイッチが良いのか?

TNFiファーストの時代からTCZやABTから始めるというプラクティスもありな時代です。

 

リウマトロジストもfirst bioはTNFiに限らず、活動性が高く若い患者ではTCZ、高齢者ではABTを提案することがよくあります。

 

では、それらのbioで開始して無効中止や副作用中止に至った場合、2剤目にはどの薬剤を提案することが妥当なのでしょうか。

 

TNF阻害薬、それともABT or TCZ?、それともJAK阻害薬?

 

Drug retention of secondary biologics or JAK inhibitors after tocilizumab or abatacept failure as first biologics in patients with rheumatoid arthritis -the ANSWER cohort study.

Ebina K, et al.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32162152/

 

Objectives: この多施設後ろ向き研究の目的は最初にTCZ or ABTで治療されたRA患者における2nd biologic (bDMARDs)の継続率を明らかにすることである。

 

Method:

2001 to 2019年の間、TCZ (n = 145) or ABT (n = 76)のいずれかで治療され、その後TNFi, TCZ, ABT, JAKi(TCZからの移行例のみ)にスイッチされた患者(女性81.0%, 年齢59.5歳, 罹患期間8.8年; RF陽性75.4%; DAS28-CRP 3.7; 併用PSL量 6.0 mg/day (使用は51.8%)、MTX量 8.0 mg/週 (56.1%); 81.9%が最初のbDMARDsを無効のため中止)。

 

Kaplan-Meier法を用いて可能性のある交絡因子をCox proportional hazards modelを用いて24ヶ月後の薬剤の継続率と中止理由を評価した。

 

Results:

TCZスイッチ群では「無効」に関する薬剤の継続率は、TNFi 59.5%, ABT 82.2%, JAKi 84.3%であり、TNFi vs. ABTで有意差があった (P = 0.009)。

 

ABTスイッチ群では「無効」に関する薬剤の継続率がTNFi (79.6%)とTCZ (92.6%) (P = 0.053)。

 

TCZ群においてnon-toxicな理由および寛解のための中止を除外した全体的な継続率はTNFi 49.9%, ABT 72.7%, JAKi 72.6%であり、TNFi vs. ABTでは有意差があった(P = 0.017)。

 

ABT群においてnon-toxicな理由および寛解のための中止を除外した全体的な継続率はTNFi (69.6%) and TCZ (72.4%)であり薬剤間における有意差はなかった(P = 0.44)。

 

Conclusions:

TCZで治療された患者ではABTへのスイッチはTNFiと比べ高い継続率があった。

 

ABTで治療された患者ではTCZへのスイッチはTNFiと比べ有効性に関連する継続率が高かった。全体的な継続率は同等であったが。

 

Key point; 本研究は最初にTCZ or ABTで治療されたRA患者において2剤目として用いられたbDMARDs or JAKiの継続率を明らかにするために行われた最初の多施設後ろ向き研究である。

 

 

Table 1. TCZで最初に治療され2剤目に変更された患者のbaselineの臨床データ

 

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Fig. 1 TCZからのスイッチ群における補正された薬剤継続率(性年齢、罹患期間、併用PSL、併用MTX、治療期間、TCZの中止理由で補正)。

(a)無効に関する薬剤の継続率、(b)non-toxicな理由と寛解を除外した場合の継続率。

 

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Table 2. TCZからのスイッチ群における各薬剤の治療中止のHazard ratio(Cox proportional hazards modelを用いて性年齢、罹患期間、併用PSL・MTX、TCZ治療期間、TCZ中止理由で補正した)

 

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Table 4. Hazard ratio for treatment discontinuation in ABT-switched cases (Cox proportional hazards modelを用い、性年齢, 罹患期間, 併用PSL・MTX, ABT治療期間, ABT中止理由で補正)

 

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 <リウマトロジストのコメント>

リウマトロジストは、1st bioのTCZが失敗に終わった場合、2剤目としてETNまたはJAKi(トファシチニブ)を提案することが多かったです。

 

しかし、ABTへの変更、すなわち「TCZ→ABT」は「TCZ→TNFi」群と比べ無効中止が少なく、全体的な継続率も高かったということですので、今後はABTも有力な選択肢として提案できそうです。ただし、ETNは「TCZ→TNFi」群76例中17例のみですので(Table 1)、厳密にETNだけの効果を知ることはできませんが。

 

なお「TCZ→JAKi」につきましては、Table 2で「TCZ→TNFi」に対して有意差はついていませんので、ちょっと残念な結果です。やはり作用機序が似通っているということなのでしょうか。

 

TCZ後はTNFiやJAKiよりもABTを提案した方がよいのかもしれません。

 

1st bioのABTが失敗した場合、「ABT→TCZ」は無効中止は少ないものの、全体的な継続率は同じということですので、副作用中止が多かったことによるのかもしれません。Table 4をみるかぎり、有意差はついていないようですが(HR 2.8, 95%CI=0.6-13.1)。