リウマチ膠原病のQ&A

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EULAR recommendations for SLE 2019 ② (全身性エリテマトーデスの治療)

全身性エリテマトーデス(SLE)のEULAR推奨2019の勉強をしています。

https://oiwarheumatology.hatenablog.com/entry/2020/05/29/000000

 

この度は本文のTreatment of SLE(全身性エリテマトーデスの治療)を勉強します。参考文献は一部のみ示しております(いつか読みたい....)。

 

 

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Figure 1はSLEの治療で使用される様々な薬剤を疾患の重症度で層別化してサマライズしたもの。Online supplementary table 5は論文中に記載された薬剤の推奨される投与量を概要を示す(かなり↓に示す)

 

 

Treatment of SLE

Hydroxychloroquine

HCQはSLEの全ての患者に推奨される。SLEにおける多数の有効性のエビデンスがある。コンプライアンス不良は稀ではないが。薬剤の血中濃度コンプライアンスを評価するために使用しうるが、薬物レベルをルーチンでモニターすることを推奨できるほどのデータがまだない。長期のHCQ治療による網膜毒性についての懸念のため、より感度の高いスクリーニング検査の使用が行われるようになった。網膜の異常は20年続けて投与された場合10%を超える(36 37)。網膜症の主な危険因子は長期の使用(5年間の使用毎にOR 4.71)、投与量(100mg/日増量するごとにOR 3.34)、慢性腎臓病(補正OR8.56)、既存の網膜病変・黄斑病変(37)。現在のエビデンスからは毒性のリスクは5mg/㎏実際体重よりも低い量では非常に稀であることが示唆されており、一日量はこの閾値を超えるべきでない。注目すべきことにSLEにおけるHCQの効果は6.5 mg/kg/日の処方量での研究で確立されたものであるため、より低い量でこれに匹敵する臨床効果があるかどうかは確認される必要がある。長期寛解が続く患者では投与量を減らしても良いかもしれない。このストラテジーに公式にフォーカスした研究はないが。抗マラリア薬の代替薬、quinacrineの選択はHCQによる網膜障害を有する患者の皮膚症状には考慮できる。

37) http://www.jrheum.org/content/44/11/1674

 

 

Glucocorticoids

ステロイド剤は急速な症状の改善を提供しうるが、中長期的な目標はプレドニゾン7.5mg/日以下まで減量すること、あるいは中止することとすべき。なぜなら長期のステロイド療法は非可逆的な臓器障害を含む様々な有害な作用をもたらしうるからである。リスクは7.5mg/日以上であれば大きく増加する。しかし低用量でも有害であることを示唆する研究もある。この目的において2つのアプローチが考えられる:(1)重症度と体重に応じ様々な量の静注メチルプレドニゾロン(MP)パルス療法の使用。ステロイドのnon-genomic effectsの有益性があり、内服ステロイド剤をより少ない量で開始し早く減量できることができるかもしれない(46, 47)、(2)ステロイドの減量と最終的な中止を促すための早期の免疫抑制剤の導入(以下参照)。高用量の静注MP(通常250mg~1000 mgを3日間)はしばしば急性の臓器が脅かされる疾患(腎炎や神経精神障害)に対して使用される。感染症を除外した後に。

46) https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/acr.23322

47) https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1568997217301416?via%3Dihub

 

 

Immunosuppressive (IS) drugs

免疫抑制剤の開始によってより急速なステロイドの減量が可能となり、疾患の再燃を予防するかもしれない。薬剤の選択は主要な病型、患者の年齢、挙児の可能性、安全性、コストによる。メトトレキサート(MTX)とアザチオプリン(AZA)はステロイドとHCQの治療の後に症状の改善が不十分な患者に考慮されるべき。またはHCQの使用経験が豊富で比較的安全なプロフィールに基づいてHCQ単独の治療で十分ではなさそうな時にも考慮されるべき。出版されたエビデンスはAZAよりもMTXで通常強い。後者の方が妊娠の可能性があるときには適しているが。ミコフェノ―レート・モフェチル(MMF)は腎炎や非腎炎のSLEにおいて有効な強力な免疫抑制剤である(神経精神ループスにはそうではないが)。非腎症SLEを対象とした最近のオープンラベルのRCTにおいてMMF腸溶剤は寛解を達成し、再燃を減らす上でAZAよりも優れていた(54)。しかしその催奇形性(妊娠6週間以上前より中止しなければならない)、AZAやMTXよりも高いコストのため、生殖可能年齢の女性の非腎症の症状において全般的に勧めることの制限となっている。シクロフォスファミド(CYC)は臓器が脅かされる(とくに腎症、心・肺、神経精神ループス)に考慮されるべきであり、再発性のメジャーでない症状において唯一レスキューとして考慮されるべき。その生殖器に対する毒性のため生殖可能年齢の女性と男性に使用する時は注意して用いるべき。GnRH誘導体はCYCによる卵巣のリザーブの枯渇を弱めるので、閉経前のSLE患者では推奨される。卵巣の凍結保存の可能性についての情報は治療前に説明されるべき。悪性腫瘍、感染症のようなCYCのその他のリスクも一緒に考慮されるべき。

54) https://ard.bmj.com/content/76/9/1575

 

 

Biological agents

SLEにおいてB細胞をターゲットとした薬剤の有益性を支持するエビデンスがある(62-66)。ベリムマブは最初の治療(HCQとプレドニゾロン免疫抑制剤の有無を問わず)に対し十分な反応がない腎外病変(現在進行形の疾患活動性や頻回の再発)において考慮されるべき。持続的な疾患活動性を有する患者がベリムマブの利益を受けるかもしれない:より改善しそうなのは疾患活動性が高い患者(例、SLEDAI>10)、プレドニゾン量>7.5mg/日、血清学的な活動性(C3↓、C4↓、抗dsDNA↑)で、皮膚、筋骨格、血清学的異常がもっともよくなりやすい。

65) https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/art.30613

66) https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0140673610613542?via%3Dihub

67) https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0896841117304389?via%3Dihub

 

複数のRCTでnegativeな結果であったリツキシマブ(RTX)は現在のところオフラベルでのみ使用される。その他の免疫抑制剤やベリムマブに抵抗性の重症の腎症・非腎症SLE(おもに血液学的と神経精神的な症状)に対して、またはこれらの薬剤が禁忌である患者において使用される。原則としてRTX投与までに免疫抑制剤2剤以上が失敗している必要がある。ただし、おそらくRTXがSLEと孤立性自己免疫性血小板減少症の両方に効果を示した重症の自己免疫血小板減少と自己免疫性溶血性貧血は例外とすべきだ(74-76)。LNではRTXは典型的にはCYCやMMFといった第一選択薬で失敗した時や再発性の疾患に対して考慮される。より最近ではLUNAR trialのposthoc解析において、LNに対してRTXによる完全なB cell depletionは78週時の完全改善のOddsが高いことに関連した。

74) https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0961203315578764

75) https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/art.27541

76) https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S2352302615000034?via%3Dihub

 

 

 

Supplementary Table 5. Recommended doses of drugs mentioned in the EULAR recommendations

 

Drug

Recommended dose

Dose adjustment  in CKD

Glucocorticoids

Mild-Moderate disease: Start with ≤ 0.5 mg/Kg/day with gradual tapering

Severe/Organ-threatening disease: Consider IV MP pulses 250-1000 mg/day for 1-3 days - Continue with PO 0.5-0.7 mg/Kg/day with tapering

All circumstances: Avoid starting with 1 mg/Kg/day oral prednisone - Keep maintenance prednisone dose at ≤ 7.5 mg/day

No

Hydroxychloroquine

≤ 5 mg/Kg/day (usually 300-400 mg/day)

In patients in remission, consider tapering to 200 mg/day

Yes

Methotrexate

10-25 mg/week in 1-2 doses

Yes

Azathioprine

2-3 mg/Kg/day in 2-3 doses

In patients in remission, consider tapering to < 2 mg/day

Yes

Mycophenolate mofetil

Severe/Organ-threatening disease or “Induction” therapy in LN: 3 g/day in 2 doses

Mild-Moderate disease or “Maintenance therapy” in LN: 1-2 g/day in 2 doses

Yes

Cyclophosphamide

“Induction” therapy in LN: IV 500 mg on weeks 0, 2, 4, 6, 8 and 10 (Euro-Lupus regimen)

Organ- or life-threatening disease: IV 0.75-1 g/m2 BSA/month for 6 months (NIH regimen) - Avoid continuation after this period

Yes

Cyclosporine A

1-3 mg/Kg/day or 100-400 mg/day in 2 doses

Avoid overall

Tacrolimus

0.05 to 0.1 mg/Kg/day or 2-4 mg/day in 2 doses - Titrate to target blood concentration 4-6 ng/ml 12 hours after dose

Yes

Intravenous immunoglobulin

1 g/Kg/day for 1-2 days

No

Rituximab

1000 mg on days 1 and 15 - re-administration every 6 months or “on-demand”

No

Belimumab

IV: 10 mg/Kg on weeks 0, 2, 4, then every 4 weeks

SC: 200 mg weekly

No

 

IV: Intravenous; MP: Methylprednizolone; PO: Per os; LN: Lupus nephritis; BSA: Body surface area; NIH: National Institutes of Health; SC: Subcutaneous

 

 

ps;↓ループス腎炎のrecommendationsはこちら

 

EULAR recommendations for LN 2019 ①

https://oiwarheumatology.hatenablog.com/entry/2020/06/03/000000

 

EULAR recommendations for LN 2019 ② (ループス腎炎にはステロイドパルス??)

https://oiwarheumatology.hatenablog.com/entry/2020/06/05/001550

 

EULAR recommendations for LN 2019 ③ (ループス腎炎にはステロイドパルス!!) 

https://oiwarheumatology.hatenablog.com/entry/2020/06/08/000000 

 

ps

↓SLEの緊急病態

 

 

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