リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

寛解の基準 - DAS28よりもSDAI -

この論文に出会って、電子カルテのシステムをDAS28→SDAIに変更しました。
 
 
Arthritis Rheum. 2011 Mar;63(3):573-86.
American College of Rheumatology/EuropeanLeague Against Rheumatism provisional definition of remission in rheumatoidarthritis for clinical trials.

Felson DT, SmolenJS, Wells G, Zhang B, van Tuyl LH, Funovits J, Aletaha D, Allaart CF, Bathon J,Bombardieri S, Brooks P, Brown A, Matucci-Cerinic M, Choi H, Combe B, de Wit M,Dougados M, Emery P, Furst D, Gomez-Reino J, Hawker G, Keystone E, Khanna D,Kirwan J, Kvien TK, Landewé R, Listing J, Michaud K, Martin-Mola E, Montie P,Pincus T, Richards P, Siegel JN, Simon LS, Sokka T, Strand V, Tugwell P,Tyndall A, van der Heijde D, Verstappen S, White B, Wolfe F, Zink A, Boers M;American College of Rheumatology; European League Against Rheumatism.

 
※この論文にはSDAIを提唱したSmolenも、DASを提唱したvan der Heijdeも名を連ねています。ACR; EULARのコンセンサスのようです。
 
Abstract
OBJECTIVE:
RAにおける寛解は実現可能なゴールになりつつあるが、広く普及した寛解の定義は存在しない。厳しいが達成可能であり、臨床試験においてアウトカムメジャーとして一様に適応できるような基準である。この研究はそのような寛解の定義を開発するために行われた。
 
METHODS:
ACREULAROutcome Measure in Rheumatology Initiativeのメンバーで構成された委員会がプロセスをガイドするため、予め指定されたRA臨床試験の解析をレビューするために開かれた。A committeeconsisting of members of the American College of Rheumatology, the European LeagueAgainst Rheumatism, and the Outcome Measures in Rheumatology Initiative met toguide the process and review prespecified analyses from RA clinical trials.委員会は厳しい定義を要求した(活動性がもしあってもほとんどないこと)。そして最低限関節カウントと急性期反応物質の値を含むCore set寛解の定義に使うことを決めた。寛解に一致するであろう各々のCore setのレベルを選択できるようにメンバーが調査され選定された。Members were surveyed to select the level of each core set measurethat would be consistent with remission. 候補となる寛解の定義を検査した。その定義には疾患活動性の指標を用いた定義はもちろん、Booleanアプローチの個々の寛解の数を構成するものを含んだ。寛解の定義を選ぶために臨床試験のデータが、患者の報告したアウトカムへの負荷的な寄与を調べるため、後のX線上、機能上良いアウトカムを予測する指標の能力を調べるために調査された。
 
RESULTS:
寛解の定義の調査は出版された閾値における指標とCore set1以下(TJC, CRP, 0-10スケールのGlobal assessment)において提示された。Surveyresults for the definition of remission suggested indexes at publishedthresholds and a count of core set measures, with each measure scored as 1 orless (e.g., tender and swollen joint counts, C-reactive protein [CRP] level,and global assessments on a 0-10 scale). 解析は患者申告のアウトカムを含む必要があることを示唆した2年間のフォローのデータの調査によって、多くの定義の候補が後のX線上、機能上良いアウトカムを予測する点において同等であった。DAS28に基づいた寛解X線上の良いアウトカムをその他の候補と同じほど予測しなかった。これらの結果とその他の考察を基に私たちは患者のRA寛解に至ったと定義されうるのは以下の二つの定義に基づくものとすることを提案する:(a) TJCSJCCRP(mg/dl)、患者の全般評価全てが1以下であること、あるいは(b) SDAI ≤ 3.3
 
CONCLUSION:
私たちは二つの寛解の定義を提案する。ともにRA臨床試験において一様に適用され、広く普及しうるものである。私たちはこれらのうちの一つを各々の臨床試験のアウトカムとして選ぶこと、両方の結果を報告することを推奨する。
 
Table 2. X線変化の良いアウトカムを予測するための寛解基準の候補の能力
 
イメージ 1
 
→ DAS28<2.6はLR+ 1.0と骨破壊を予測できません。
 
Table 3. 骨破壊、HAQとも良いアウトカムを予測するための寛解基準の候補の能力
 
イメージ 2
 
→ DAS28<2.6はLR+2.2。SDAI<3.3はLR+4.8, Boolean基準は7.2
 
 
 
<リウマトロジストのコメント>
DAS28がSDAIよりも関節破壊を予測しなかったことは分かるような気がします。
 
DAS28は腫脹関節数(SJC)の√(ルート)にかけられる係数が圧痛関節数(TJC)の係数の半分なのです。
 
腫脹は圧痛よりも大切でしょう・・・
 
※計算式
 
DAS28= 0.56 × √TJC + 0.28× √SJC+ 0.70 × ln(ESR)+ 0.014 × 患者VAS
 
SDAI = TJC + SJC + 患者VAS + 医師VAS + CRP
 
 
SDAIを使ってみて良かったことは、数値から関節の状態やVASが想像できること。
 
「DAS28<3.2にしましょう!」と言われてもぱっとしませんが、SDAI≦11にすることは関節炎や患者VASがどうなっているのかがイメージできます。
 
実を言うと、リウマトロジストはSDAIにも不満があります。医師VASが患者VASと同等に扱われていますが、以前より「医師VASは関節炎の評価には要らない」と考えております。
 
その理由は
・医師VASはその他の変数に影響されて決まるであろうこと
・主観的な変数であり、再現性があるかどうかが分からないこと
・医師の間によっても大きな差があるであろうこと
 
リウマトロジストはそのような変数で関節炎を評価することは患者さんに申し訳ないので、
 
ほとんどの場合、「医師VAS = 患者VAS」 にしています。
 
こうすることで、少なくとも医師による評価の差はなくなるのではないでしょうか。
 
SDAIに文句があるならLetterでも書けよって話ですけどね(笑)。
 
※2016.1/7追記;28関節に含まれていない足趾、足を医師VASに反映してもよいのかなと思いました。そうすれば、28関節の欠点を補うことができるのかなと思いました。
 
※2021/10/7現在
Physician's VASも関節炎の悪化に伴って(比例するように)増えなければならないのではないかと考えるようになりました。すなわち、両手関節炎があれば+2~+4点つくので、医師VASは10点(100㎜)のなかで2点(20㎜)増えるように加点をしております。ただし、上述のように28関節に含まれない足関節炎、足趾の関節炎があっても同様に2点ずつ増やします。この通りにしていくと、上限が10点なので、すぐ10点に到達してしまいますが、多くの患者さんが9点以内に収まっています。正解はないので、リウマチ専門医によっても異なるのでしょうね。