診断推論のアプローチには、
・仮説演繹法(候補をいくつか挙げ、臨床情報から確率を吟味する)
・徹底的検討法(VINDICATE-P)
・パターン認識(ひらめくように診断する方法)
があるとされています(誰も教えてくれなかった診断学、野口善令著)。
では、この病気はどうでしょう。
一例でも勉強しておけば、いつかひらめくように(パターン認識で)診断できます!
<Senario case>
※実際のケースを一部アレンジしております。
#30歳女性
【主訴】 両下腿~足の浮腫
【現病歴】
2週間前~右第1MPに疼痛あり、その後左第1MPに疼痛あり。
1週間前~左かかと部、左足裏の異常感覚と疼痛、右踵が腫れた。
その晩、両足関節より末梢および膝に発赤出現。両膝に腫脹があった。両)前腕および膝、足関節周辺に掻痒感を伴う紅斑が出現。
2日前、膝から下全体の腫脹が増悪、紅斑も残存。
1日前、腕の掻痒感を伴う紅斑が残存していたため近くの皮膚科受診。
今朝-下腿浮腫が増強し、歩行困難に。当院に紹介。
症状は夕方に増悪。今痛いのは下腿、右手関節。
激しい運動はしていない。
【既往歴】特記事項なし
【内服】なし
【アレルギー】アレルギー性鼻炎
【社会歴】機会飲酒 喫煙なし
ROS
(-)Raynaud、口腔乾燥、日光過敏、発熱、寝汗、体重減少、しびれ、咳、痰、息切れ、筋肉痛、腹痛、食欲低下、
身体所見
発熱なし。循環、呼吸よし。
元気良い
結膜、咽頭;異常なし
頸部;リンパ節腫脹なし。甲状腺腫大なし。
心音、肺音;異常なし
表在リンパ節;腋窩、鼠径部にリンパ節腫脹なし。
背部;脊椎叩打痛なし。CVATなし。
四肢;両膝以遠のPitting edema;両下腿1+、両足背2+
両膝にあってもわずかな関節腫脹があるかもしれない。
両手は手関節の背側で腫脹がある。
両大腿、腓腹部に把握痛あり
足底に神経障害なし。
両踵の外側に小紅斑散在
●Eo1500
(A/P)
#両膝以遠の浮腫
#好酸球上昇
<Senario caseの経過>
Non-episodic angioedema with eosinophiliaを疑った。初診時は経過観察としたが、10日後の再診時には浮腫増強し、Eo11000とさらに上昇。皮膚生検にて皮下組織の好酸球浸潤を認めた。初診から2週間後より症状は改善傾向を認めた。
<診断名>
Angioedema with eosinophilia
(欧米ではEpisodicと前置きがつきますが、日本では繰り返さない症例が多くNon-episodicと前置きされます)
最初の報告(Gleich syndromeともよばれています)
日本からの報告
韓国からの報告(アジア人はNonepisodicなのですね)
写真)こんな感じに腫れます