リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

イタリアで重症COVID-19の患者63例にTocilizumabトシリズマブを使ってみたら

Pilot prospective open, single-arm multicentre study on off-label use of tocilizumab in patients with severe COVID-19

Sciascia, et al.

https://www.clinexprheumatol.org/article.asp?a=15723

 

Savino Sciasciaさんはたしかリウマトロジストだったと思うのですが、イタリアでTocilizumabトシリズマブをCOVID-19に使用されたという貴重な報告をなされました。とにかくご無事で何より....

(彼?によるSystematic reviewです:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24952022/

 

 

Methods 

・前向き、オープンラベルでTCZの保険外使用のsingle-arm multicentre studyを行った。COVID-19確定例の成人入院患者の重症例を対象として。Inclusion criteriaは以下。

 a) PCRで確認されたCOVID-19感染

 b) Room airでSpO2<93%またはPF ratio<300の肺病変

 c) 顕著な前炎症反応・血栓プロフィール;少なくとも以下の3つがあること;CRP>正常範囲の10倍;フェリチン>1000ng/mL;D-dimer>正常範囲の10倍;LDH正常範囲の2倍以上。※IL-6も測定した。

 

・TCZを8mg/kgの静注または324mg皮下注で投与;2回目の投与は63例中52例で行われた。投与方法はあらかじめ決められておらず入手できる薬剤に依存した。

 

・Primary end-pointはこの薬剤の安全性。

 

・Secondary endo-pointsは呼吸状態の改善とラボの改善。臨床的、ラボのパラメーターはDay 1, 2, 7, 14に測定された。

 

・ベースラインとフォローアップの変数の比較にT検定orMann-Whitney testが用いた。関連性はFisher検定で検証した。poor prognosis(死亡and/or PF ratioの改善がない事)の独立した危険因子を多変量ロジスチック回帰解析を用いた:年齢>70歳、発症~TCZ開始までの期間;ベースラインのLabo(IL-6、CRP、ferritin、D-dimer含む)。生存評価のためKaplan-meier曲線を作成した。

 

 

Results

・63例(56例が男性、年齢62.6±12.5)が登録され、入院後14日間フォローされた。

・36例がTCZ iv 8mg/kgを投与され、31例(91%)が第2コースを投与され、25例がiv、6例が162mg sc。

・29例がTCZ sc (324mg)を投与され、21例が162mg scを投与された。Table 1が主なベースラインのデータ。

 

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・14日目の死亡は11%(7/63)。投与ルートの間で死亡率の差はなかった;12.9% (4/31) vs 10.3% (3/29)。

・死亡例は全例2回目のTCZの投与を受け、最初のTCZ投与から1w以内に死亡していた(平均5±1.5日)。

・TCZに関連する中等度~重症の有害事象はなかった。

・入院時、25/63 (39.7%)が>38℃。1例を除く全例がTCZ投与から24h以内に解熱した。フェリチン、CRP、Ddimer、リンパ球数の改善を認めた(Fig.1)。一方でLDHは有意な変化を示さなかった。

 

Fig. 1

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・PaO2/FiO2比も改善した。フォロー中、均一していたわけではなかったが(Pa02/Fi02のmean±SDは入院時: 152±53; day 7: 283.73±115.9, day 14: 302.2±126, p<0.05)(Fig. 2)。

 

Fig. 2

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・入院時、5例が人工呼吸器を要し、1例はday 6に死亡した。Day 14になっても人工呼吸器管理を要したのは2例。D-dimerのベースラインは死亡を予測した(HR 5.01; 95%CI 1.04–29.17)。IL-6は死亡を予測しなかった。D-dimerの値によるKM曲線(Fig. 3)を示す。

 

Fig. 3

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・予測された通り、TCZの抗受容体効果によってIL-6の上昇を確認した。ほとんどはフォローアップ14日後に顕著になった(Fig. 4)。

 

Fig. 4

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・入院後6日以内のTCZの使用は生存の尤度に関連した(HR 2.2 95%CI 1.3–6.7, p<0.05)。

 

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