リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

リウマチ科を受診する内分泌疾患

リウマトロジストの目の前を何度となく通り過ぎて行ったであろう。。
 
 2010年)
 
●● 副腎不全を診断しよう! ●●
 
Uptodate17.3の”副腎不全におけるACTHに対する反応の評価”をまとめました。Critically illである場合、診断や治療に関するconsensusは得られていないということでした。以下はCritically illでない場合(=慢性副腎不全)に関する記載です。※はリウマトロジストのコメントです。mcg=μ(マイクロ)
 
1)早朝(6-8時)のコルチゾール値(RIA)は副腎不全を除外するのに有用な検査である。
・血清コルチゾール > 11mcg/dL → 重大なHPA不全を持っている可能性は低くなる。
・血清コルチゾール < 3mcg/dL   副腎不全らしくなる。
・血清コルチゾール 3-11mg/dL   グレーゾーンなのでACTH試験へ。
 
 
2)標準高用量ACTH試験・・250mcgのコートロシンを経静脈的に投与し、その直前、30分、60分後にコルチゾールを測定する。
コルチゾールの正常な反応の最低値は18-20mcg/dl(増加分ではなく、投与30分、60分後の値)
コルチゾール値が投与前後に関わらず20mcg/dl以上であれば、正常な副腎機能を示唆する(筋注の場合、16mcg/dl以上は正常;高用量だから筋注でもOK
 
1mcgのコートロシンを用いる低用量ACTH試験も、標準高用量ACTH試験と同様有用とされていますが、250mcg製剤を1/250にする手間があります。低用量は生理的なACTH濃度に近くなり、わずかな副腎不全も検出することがあるようです。
 
 
それではどういう患者に副腎不全を疑って、早朝コルチゾールRapid ACTHをすればよいでしょうか。以下に” 成人における副腎不全の臨床所見(UTD17.3)”をまとめました。
 
●● 副腎不全を疑え! ●●
 
1)副腎クライシス(急性)
1.原発性副腎不全・・ショック、腹部圧痛、発熱
2.両側性副腎外傷、出血、梗塞・・低血圧~ショック(>90%)、腹痛・側腹部痛・腰痛・胸下部痛(86%)、発熱(66%)、食欲不振・吐気・嘔吐(47%
3.下垂体卒中・・慢性(以下)に似るが、急性に起きることも。腫瘍の高速による下垂体卒中は強い頭痛、視野の異常
 
2)慢性原発性副腎不全(副腎↓下垂体↑)
コモンなのは慢性疲労(運動で悪化、安静で改善)、筋力低下、食欲不振、体重減少。
1.消化器症状;吐気、嘔吐、腹痛、下痢・便秘
2.低血圧;姿勢によるめまい、失神
3.電解質異常;低Na85-90%)、高K、高Ca(稀)
4.低血糖;感染、発熱、アルコール摂取のない成人に起きることはまれ。小児には多い。
5.色素沈着;褐色の色素沈着が全身に起きるが、顔、頸、手背のような日光露出部、圧や摩擦にさらされる肘、膝、脊椎、MCP、腰、肩に目立つ。手掌のしわ、本来色素沈着する腋窩や臍なども。
6.性機能不全
7.骨格筋症状・・筋肉痛・関節痛
8.耳介軟骨の石灰化
9.精神症状・・器質脳障害、記憶障害、混乱、せん妄、うつ、精神病
10.白斑
 
3)二次性(下垂体↓)・三次性副腎不全(視床下部↓)
慢性原発性と同様の症状であるが、色素沈着を欠く。脱水はなく、低血圧も目立たない。