リウマチ膠原病のQ&A

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SLEのpDC、単球のIFN産生は異なる刺激によってもたらされ、血清IFNα、SLEDAIに関連する

Inhibition of mTOR suppresses IFNa production and the STING pathway in monocytes from systemic lupus erythematosus patients

Goh Murayama, et al

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32160289/

 

Objective:目的SLEの病態においてIFNα↑が重要。TLRの活性化に伴うIFNαの主な産生細胞は形質細胞様樹状細胞 (pDC) とされているが、SLEにおいてcyclic GMP-AMP synthase (cGAS) やstimulator of IFN genes (STING) による刺激を受けて、どの細胞がIFNαを産生するかは分かっていない。cGAS-STING経路刺激下での骨髄系細胞のIFNα産生能について検討した。

Methods: SLE患者およびHCの末梢血単核球をcGAS-STINGの刺激因子である2'3'c-GAMPで刺激した時に末梢血単核球から放出されるIFNα量を、細胞内サイトカイン染色とフローサイトメトリーで測定した.STINGの発現とTBK1とのco-localizationは、フローサイトメトリーまたは共焦点顕微鏡で調べた。IFNαへのin vitro曝露によるIFNα産生とSTING発現への影響、およびin vitroRapamycin処理によるIFNα産生とSTING、pTBK1、IRF3発現への影響を検討した。

Results: cGAS-STING経路の活性化により、単球、conventional DC、pDCからIFNαが産生された。IFNαを産生する単球の頻度は、SLEの疾患活動性と正の相関があった。STINGの発現とTBK1との共局在は、SLE患者の単球で増加した。IFNαへの先行曝露は、単球のIFNα産生能を増強した。Rapamycin標的経路 (mTOR) を阻害すると、単球からのIFNα産生が抑制され、STINGの発現とその下流分子がダウンレギュレートされた。

 

Conclusion: STING経路の活性化によりループス単球からのIFNα産生が亢進することは、SLEの病態と関連している。mTOR経路の抑制は、STINGの発現亢進とそれに続く単球によるIFNαの産生を抑制した。

 

SLEは複数の組織障害を引き起こす。IFNaを含むI型IFNはSLEの病態に重要である[1, 2]。SLE患者の末梢血単核細胞 (PBMC) では、I型IFNまたはIFN誘導性遺伝子が増加し、IFNaのレベルは疾患活動性と関連している[3-12]。I型IFNの過剰発現や投与はマウスやヒトでループスを発症させた[13-18]。IFN産生には、核酸センサーの活性化が重要である。Toll様受容体 (TLR) および環状GMPAMP合成酵素 (cGAS) -stimulator of IFN genes (STING) 経路は主要なDNA認識因子である。DNAが結合すると、cGASは2'3'-cGAMPを合成してSTINGに結合し、リン酸化依存的にTANK結合キナーゼ (TBK) 1およびIFN調節因子 (IRF) 3の活性化をもたらす。また、STINGは炎症性サイトカインやI型IFN遺伝子の転写に必要なNF-κBを活性化する[19]。STINGの機能獲得型変異はSLE様症状を引き起こし[20, 21]、SLE PBMCは高いcGASレベルを発現した[22]。しかしSLEにおけるcGAS-STING経路の制御は十分に理解されていない。

 

pDCはTLR7/TLR9シグナル伝達経路を通じて大量のIFNaを産生する[23-26]。SLEでは、自己抗体とDNA/RNAからなる免疫複合体や、ウイルスや細菌由来の核酸pDCのIFNaを誘導する[27-30]。我々は以前、TLR7アゴニスト刺激に伴うループスpDCのIFNa産生能の増強を示したが、これは疾患活動性や血清IFNa濃度と相関していた[31]。さらに、TLR7刺激はpDCからのIFNa産生を誘導したが、cDCや単球からのIFNa産生は誘導しなかった。ループス血清中の高レベルのIFNaを考えると、他の細胞は異なる経路の刺激によってIFNa産生に寄与しているかもしれない。

Rapamycinのメカニスティックターゲット (mTOR) は、多様な環境および細胞内シグナル (成長因子や栄養素など) を感知し、細胞の増殖と代謝を調整するserinethreonine キナーゼである [32] 。mTORの阻害剤であるRapamycinが免疫抑制作用を示すことが初期の研究で証明され、最初は腎臓移植に、最近ではSLEに臨床応用されるに至った。Rapamycinの免疫抑制効果は、まずT細胞応答の阻害に起因し、さらにB細胞や骨髄系細胞にも拡大した[33]。mTORの阻害は、S6キナーゼの脱リン酸化によってpDCからのI型IFNの産生を阻害し、TLRとMyD88の発現を低下させることが報告されている[34]。一方、cGAS-STINGを介したIFNa産生の制御におけるmTORの関与は、未だ不明である。

我々は、2’3’-cGAMPによるcGAS-STING経路刺激後の骨髄系細胞のIFNa産生能について調査した。ループス単球はcGAS-STING経路の活性化によりIFNaを産生し、IFNa産生単球の頻度はSLE疾患活動性と正の相関があった。さらに、STINGの発現とTBK1などの下流分子との共局在が増加した。IFNaへの先行曝露は、単球のIFNa産生能を増強した。最後に、mTOR (mechanistic target of rapamycin) 経路を阻害すると、単球のIFNa産生が抑制され、ループス単球におけるSTINGとその下流分子の発現増加がダウンレギュレートされた。

 

Methods

Human samples

フローサイトメトリー解析には、SLEと診断された患者36人[女性34人、男性2人、年齢 (四分位範囲) 中央値39.6歳 (22.0-50.0) ]と健康対照 (HC) 26人[女性24人、男性2人、年齢中央値38歳 (23.0-47.0) ] (Table 1) 。western blotting解析では、SLE患者4名とHC3名を対象とした (Supplementary Table S1, available at Rheumatology online) 。共焦点顕微鏡による解析は、SLE患者15名とHC11名を対象とした (Supplementary Table S2, available at Rheumatology online) 。末梢血は、順天堂大学の地方倫理委員会のガイドラインに従ってインフォームドコンセントを得た後、SLE患者およびHCから採取した。SLEは、米国リウマチ学会のSLEの基準に従って診断された。疾患活動性はSLE疾患活動性指標2000 (SLEDAI-2K) により評価した。HCsは自己免疫疾患の既往がなく、免疫抑制療法を受けたことがない者とした。ヒトを対象とした研究に関する倫理指針に従って、すべてのSLE患者およびHCからICを取得した。患者の年齢、性別、治療内容はTable 1に示す。新鮮なPBMCは、BD Vacutainer CPT Mononuclear Cell Preparation Tubes with Sodium Heparin (BD Biosciences, Franklin Lakes, NJ, USA) を用いて密度勾配遠心法により全血から分離された。

 

Cell culture 細胞培養

PBMCは、10%ウシ胎児血清、2mM L-グルタミン、50U/mlペニシリン、50lg/mlストレプトマイシン (すべてThermo Fisher Scientific製) を含むRPMI 1640培地 (Thermo Fisher Scientific, MA, USA) 中、96-well flat-bottom platesで、5%CO2培養器中37℃で培養した。PBMCをrecombinant human IL-3 (100ng/ml;PeproTech, Rocky Hill, NJ, USA) 、TLR7アゴニスト、imiquimod  (R837)  (100ng/ml;InvivoGen, San Diego, CA, USA) または2’3’-cGAMP  (50 lg/ml; InvivoGen) により6時間刺激を受けた。細胞内サイトカイン染色には、GolgiPlug  (100ng/ml BD Biosciences) を刺激の最後の3時間の間に添加してサイトカイン分泌をブロックした。IFNa前処理実験では、PBMCをIFNa (100U/ml)  (R&D Systems) で24時間培養した後、2’3’-cGAMPで刺激した。シグナル伝達分子の細胞内染色のために、PBMCをIFNa  (100U/ml)   (R&D Systems) または2’3’-cGAMP (50lg/ml) で2時間培養し、PBMCまたは選別単球を2’3’-cGAMP (50mg/ml) の存在または不在下でRapamycin (100nM)  (ENZO Life Sciences, Plymouth Meeting, PA, USA) で培養した。

 

Flow cytometry

細胞染色はZombie YellowTM Fixable Viability Kit  (BioLegend, San Diego, CA, USA) を用い、ヒト細胞表面抗原に対するモノクローナル抗体のcombinationを用いた:抗CD11c-Alexa700、抗HLADR-V500、抗CD19-APC-H7  (BD Biosciences) 、抗CD14-ECD、抗CD56-APC (Beckman Coulter, Brea, CA, USA) 、抗CD123-FITC、抗CD123-PV421、抗 CD3-PerPCy5. 5、抗CD3-PV605、抗CD56-PV421、抗CD56-PerCPCy5.5 (BioLegend) 、抗CD19-PE (TONBO Biosciences, San Diego, CA, USA) 。次に以下を用いて細胞内染色を行った;BD Cytofix/Cytoperm Fixation/Permeabilization Solution Kit  (BD Biosciences)  and anti-STING-Alexa Fluor 647  (BD Biosciences) , anti-IFNa- APC  (Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, Germany) , anti-IRF3-Alexa Fluor 647  (BD Biosciences) , anti-Phospho- TBK1 (pTBK1) -PE  (Cell Signalling Technology, Danvers, MA, USA) , anti-Phospho-mTOR-PE  (eBioscience, San Diego, CA, USA)  or isotype control antibodies.単球はCD3-CD19-CD14+として同定した。cDCはCD3-CD19-CD14-CD56-HLADR+CD11c+として、pDCはCD3-CD19-CD14-CD56-HLADR+CD11c-CD123+として同定した。データはFACS LSR Fortessa (BD Biosciences) で取得し、FlowJoソフトウェア (TreeStar Inc.、Ashland, OR, USA) を使用して解析した。

 

IFNa measurement

IFNa濃度は、VeriKine-HS Human IFNa Alpha All Subtype ELISA Kit (PBL Assay Science, Piscataway Township, NJ, USA) を用いて、製造者の説明書に従って測定した。

 

Confocal microscopy 共焦点顕微

manufacturer’s instructionsに従って、抗CD14マイクロビーズ (Miltenyi Biotec) を用いてPBMCから単球を精製した。IFNa、Rapamycinまたは2’3’-cGAMPで前処理した/しない精製単球を、Thermo Shandon Cytospin 4 (Thermo Fisher Scientific) を用いて顕微鏡スライドに紡ぎ出した。単球を4%パラホルムアルデヒドで固定し、Triton X-100 (PBS中0.2%Triton X-100) で透過化した。非特異的な背景染色は、Image-iT FX Signal Enhancer  (Thermo Fisher Scientific) によってブロックされた。細胞を一次抗体:anti-STING (R&D Systems, Minneapolis, MN, USA) 、anti-TBK1 (Abcam, Cambridge, UK) およびanti-LC3B (Sigma-Aldrich, St.Louis, MO, USA) とともにインキュベートした後、洗浄して二次抗体とともにインキュベートした: Alexa488-donkey抗マウスIgG、Alexa594-ドンキー抗ヤギIgG、Alexa647-ドンキー抗ウサギIgG (Jackson ImmunoResearch Laboratories, West Grove, PA, USA) 。細胞核はDAPI (Sigma-Aldrich) で染色し、Fluoromount/ Plus (Diagnostic BioSystems, Pleasanton, CA, USA) でマウントした。サンプルはFM1000D共焦点レーザー走査型顕微鏡 (オリンパス、東京、日本) で可視化し、FV10-ASWビューア (オリンパス) で解析した。共焦点解析のために、10個の単球の平均ピアソン相関係数をImageJで計算した。

 

Western blot analysis

単球はanti-CD14 microbeadsを用いてPBMCから精製した。HCおよびSLE患者からの単球は、Halt Protease Inhibitor Cocktail, EDTA-Free  (Thermo Fisher Scientific) を含むM-PER Reagentで溶解された。タンパク質濃度は、Coomassie Plus Protein Assayキットを用いて、manufacturer’s instructionsに従って定量した。次に、4-15% Mini-PROTEAN TGX Precast Protein Gels  (Bio-Rad) にサンプルあたり3.75 mgの総蛋白質を負荷した。The lysates were subjected to SDS–PAGE, and western blotting was performed with anti-STING rabbit mAb (Cell Signalling Technology)  and anti-b-actin pAb  (MBL). lysetes?をSDS-PAGEに供し、anti-STING rabbit mAb (Cell Signalling Technology) およびanti-b-actin pAb (MBL) を用いてwestern blottingを実施した。ブロットは、manufacturer’s instructions (Thermo Fisher Scientific)に従い、SuperSignal West Dura Extended Duration Substrateを用いた強化されたchemiluminescence assayで可視化した 。シグナルは、LAS 4000 (GE Healthcare) を用いて検出し、ImageJを用いて定量化した。

 

Statistical analysis

データはGraphPad Prism  (GraphPad, Inc., La Jolla, CA, USA)  を用いて解析し、グループ間の差はKruskal-Wallis test followed by Dunn's multiple comparisons test、Mann-Whitney U test、一元配置分散分析と Tukey multiple comparison test、Unparent t test、またはpaired t testによって解析された。有意水準は、P <0.05。2つの変数間の関連は、スピアマンの相関によって分析された。

 

Results

cGAS-STING stimulation enhances IFNa from SLE monocytes, cDCs and pDCs

cGAS-STING刺激によりSLE患者の単球、cDC、pDCからのIFNaが増強される。

cGAS-STINGの活性化がIFNaを増強するかどうかを評価するために、SLEおよびHCのPBMCを2’3’-cGAMPで刺激し、IFNa産生 (IFNa+) 細胞頻度を分析した。SLE患者では、PBMC中のIFNa+細胞の頻度がHCと比較して有意に増加した (1.130  (0.9223)  % vs 0.126  (0.2724)  %)  (Fig. 1A, Supplementary Fig. S1A) 。我々は以前、TLR7リガンドで刺激されたSLE pDCからのIFNa産生の亢進を証明した。SLEでは、imiquimodで刺激したPBMCのうちIFNa+細胞の頻度も増加したが (図1A) 、2’3’-cGAMPで刺激したPBMCのうちIFNa+細胞の頻度は、imiquimod刺激と比較して高いことが示された。全pDCの頻度はPBMCの中で0.1%-0.5%であったことから、pDC以外の細胞もIFNa産生に寄与していると推測された。予想通り、2’3’-cGAMP刺激により、SLEでは単球が95.3  (8.132)  %のIFNa+細胞を構成した (Fig. 1B, Supplementary Fig. S1A) 。また、単球、cDC、pDCに占めるIFNa+細胞の割合を、HCとSLE患者の間で比較した。SLEでは、これらの細胞サブセットの中でIFNa+細胞の割合がHCと比較して有意に増加していた (Fig. 1C, Supplementary Fig. S1B) 。

Figure 1A, 1B, 1C



2’3’-cGAMP-induced IFNa in monocytes positively correlates with SLE disease activity

単球における2’3’-cGAMP誘導性IFNaは、SLEの疾患活動性と正の相関がある。

我々は以前、pDCによるIFNa産生が、SLEの疾患活動性およびIFNa血清レベルと関連していることを報告した。imiquimodで刺激したIFNa+pDCの割合は、SLEDAIや血清IFNa濃度と正の相関があることを確認した (Fig. 1D) 。2’3’-cGAMPで刺激した場合、IFNa+monocytesの割合はSLEDAIと正の相関があったが、IFNa+cDCとIFNa+pDCは正の相関がなかった (Fig. 1E) 。2’3’-cGAMPで刺激されたIFNa+monocyteおよびIFNa+cDC頻度は、血清IFNaレベルと正の相関があった (Fig. 1F) 。しかし、IFNa+pDC頻度は、2’3’-cGAMPで刺激した場合、血清IFNaおよびSLEDAIと正の相関があった (Fig. 1F) 。

Fig. 1D, 1E, 1F

 

 

Increased STING expression and co-localization with TBK1 in SLE

SLEにおけるSTINGの発現量増加とTBK1との共会合

2’3’-cGAMPとSTINGの結合は、STINGを活性化し、I型IFNを誘導する下流シグナル伝達経路の重要なキナーゼ蛋白であるTBK1との相互作用を可能にする。次に、SLEにおけるSTINGの発現をフローサイトメトリーで評価した。SLE単球のSTING発現は有意に増加し (Fig. 2A) 、HCと比較してSLE pDCおよびcDCで高い傾向にあった。また、単球におけるSTINGの発現をウェスタンブロッティングで解析した。STINGのタンパク質発現は、SLE単球で有意に増加した (Fig. 2B) 。さらに、STINGのTBK1との共局在は、HCと比較してSLE単球で増加した (Fig. 2C) 。

 

Figure 2A, 2B, 2C



IFNa pretreatment enhances IFNa production in 2’3’-cGAMP-stimulated monocytes

IFNa前処理は、2’3’-cGAMP刺激単球のIFNa産生を促進する

SLEにおいて、IFNa血清レベルは2’3’-cGAMPで刺激したIFNa+monocytesの頻度と相関していたので、次に、HCからの単球によるIFNa産生に対するIFNaの影響を評価した。IFNa前処理は、2’3’-cGAMP刺激単球のIFNa産生を増強し (Fig. 3A) 、単球のSTING発現を有意に増加し (Fig. 3B) 、単球のTBK1とのSTING共局在を有意に増加した (Fig. 3C) 。これらの実験に使用した単球は、健康なコントロールに由来するものである。

 

Inhibition of IFNa production by rapamycin in SLE

SLEにおけるRapamycinのIFNa産生抑制作用

STINGはautophagyによって分解されることが知られている[35]。そこで、STING発現の増加がループス単球におけるautophagyの障害と関連しているかどうかを検討した。mTORはautophagyの抑制に重要な役割を担っており、リン酸化mTOR (pmTOR) の発現がSLE単球で上昇し、SLE患者のcDCおよびpDCで増加する傾向があることがわかった(Fig. 4A)。mTOR阻害剤であるRapamycinをin vitroで処理すると、SLEおよびHC単球のpmTORレベルが低下した (Fig. 4B)。Rapamycin処理は、SLE単球、cDCおよびpDC、ならびにHC cDCおよびpDCからのIFNaを抑制した (Fig. 4C)。Rapamycin処理は、2’3’-cGAMP刺激した選別SLE単球によるIFNaの産生を抑制した (Fig. 4D)。

 

Rapamycin downregulates the cGAS-STING pathway in SLE

RapamycinはSLEのcGAS-STING経路をダウンレギュレートする

cGASSTING経路へのオートファジーの寄与を明らかにするために、STING、pTBK1およびIRF3の発現に対するRapamycin処理の影響を評価した。STING、pTBK1およびIRF3の発現は、Rapamycin処理によりSLE単球、cDCおよびpDCにおいて減少した (Fig. 5A–C) 。Rapamycin処理により、STINGがオートファゴソームマーカーであるLC3Bと共会合することで、オートファゴソーム経路へのリクルートが促進されるかどうかを、ループス単球で調べた。2’3’-cGAMPは、オートファゴソームの形成とオートファゴソームへのSTINGの動員を誘導し (Fig. 5D) 、これはRapamycinによってビヒクルと比較して増強された。

 

Discussion

我々は、SLE患者において、cGAS-STING経路の活性化により、単球、cDC、pDCからIFNaが誘導され、それらの頻度が有意に増加することを明らかにした。IFNa産生の単球の割合は、SLEの疾患活動性と正の相関があった。さらに、HC単球をIFNaに曝露すると、IFNa産生、STING発現、TBK1共局在が促進されることが明らかになった。最後に、RapamycinはSLE単球のIFNa産生を阻害し、STINGの発現と下流分子を減少させた。

IFNaを含むI型IFNはSLEの病態に重要であり[1, 2]、pDCは主要なIFNa生産者であると考えられている[23-26]。実際、SLE患者において、TLR7アゴニストで刺激すると、pDCが唯一のIFNa生産者であることがわかった[31]。一方、単球は主要なIFNa産生細胞であり、cGAS-STING経路で活性化されると、IFNa産生SLE単球の頻度は疾患活動性と相関する。ループス単球は、通常型T細胞および自然免疫型T細胞に対して強力な抗原提示細胞へと分化することが報告されている[36-38]。今回の発見は、SLE患者において単球がIFNaの重要な産生細胞であるという別の側面を示している。

 

以前、我々は、SLE患者において、TLR9アゴニストで刺激したpDCのIFNa産生能がHCと比較して低下する一方、TLR7アゴニストで刺激したpDCのIFNa産生能はSLE患者で増強し、SLEDAIと正の相関があることを報告した。今回、SLE患者では2’3’-cGAMP刺激時のIFNa陽性pDCの割合が増加したが、この結果はSLEDAIと相関がなかった。このように、pDCや単球のIFNa産生能は、刺激の種類によって異なることがわかった。単球とpDCによる異なる刺激によるIFNa産生が、どのようにループスの病態に関与しているのか、さらなる研究が必要である。2’3’-cGAMPによる単球のIFNa産生の増強は、STING発現の増加とTBK1の共会合に関連していた。IFNaの曝露は、HC単球における同様の状況を模倣し、ループス患者におけるIFNaの上昇がcGAS-STING経路の増強に寄与していることが示唆された。IFN誘導性遺伝子IFIT3の異常な上昇は、SLE患者におけるcGAS-STING経路の過剰活性化と関連していた [39] 。さらに、IFNaはミトコンドリア代謝を調節し、autophagy分解を障害し、cGAS-STING経路によって感知されるミトコンドリアDNAの細胞質への蓄積をもたらした。したがって、IFNaによる細胞内DNA処理の調節障害は、cGAS-STING経路の構成的な活性化を加速する可能性がある[40]。

 

STING欠損のMRL/lprマウスでは炎症が亢進することが報告されている[41]。しかし、MRL/lprマウスでIFN受容体遺伝子Ifnar 1をノックアウトするとループス病が増強されたことから、MRL/lprマウスモデルは独自の病態を示すと考えられる[42]。一方、STINGの機能獲得型変異は、ループス様症状を引き起こすことが知られている[20, 21]。したがって、cGAS-STING経路の抑制は、ループスの発症を抑制するために有益であると考えられる。 mTORシグナルの活性化はSLEで報告され、治療標的として注目されている [43] 。RapamycinによるmTOR経路遮断は、動物モデルおよび患者におけるSLEの新しい治療戦略として最初に報告された [44, 45] 。最近のRapamycin第 1/2 相臨床試験では、12 ヶ月間の治療で活動性の SLE 患者の疾患活動性が改善したことが示された [46] 。mTOR の活性化は SLE T 細胞で最初に確認され、さらに B 細胞、マクロファージ、非免疫細胞 (肝細胞、血管再建細胞) へと拡大している [47] 。mTOR経路は免疫系の発達と機能に重要であり、mTORはTh1およびTh17細胞の分化、CD8tメモリー細胞の生存、CD4+CD25+FoxP3t Treg細胞の発達への干渉に関与しており[48-54]、またM1マクロファージの表現型をM2へとシフトさせている[55]。最近では、Rapamycinがマクロファージからの炎症性サイトカイン産生を抑制することが報告されている[40]。mTOR阻害はpDCによるI型IFNの産生を阻害することが報告されているが[34]、cGAS-STINGを介したI型IFNに対するmTORの効果は不明であった。ここで、RapamycinによるmTORの阻害は、SLE単球のIFNa産生とautophagyを介したSTINGの分解を深く抑制することを示した。mTORは、autophagy活性化キナーゼ複合体のようなautophagy開始UNC-5の抑制を通じてautophagyを抑制することが示唆されている[56]。STING経路はautophagyによって負に制御されていると考えられている[35]。最近、cGAS-STING経路によって誘導されるオートファジーは、cGASに結合する細胞質DNAの除去に重要であることが示された[57]。したがって、mTORの阻害は、その後、ループス単球におけるSTINGの発現亢進を低下させ、IFNa産生を抑制する。

 

ここで、我々はループス単球がcGAS-STING経路の増強と関連して、強力なIFNa産生能を有することを証明した。IFNa産生とcGAS-STING活性化の増強は、mTOR経路の阻害により抑制される。