リウマチ膠原病のQ&A

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ヒドロキシクロロキン(HCQ)で長期間治療中の患者における網膜症のリスク;SLE

The risk of toxic retinopathy in patients on long-term hydroxychloroquine therapy.

Melles RB, Marmor MF.

JAMA Ophthalmol. 2014 Dec;132(12):1453-60.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25275721/

 

Methods

Kaiser Permanente Northern California (KPNC) は約340万の多様な人口を含む高度健康組織。>20年の電子医療記録を用いて、2009年以降全ての患者のデジタルの眼科画像をレビューすることが出来るようになった。KPNCのIRBの承認後私たちは2009.1月現在、5年以上HCQを内服している患者の薬剤データベースを問い合わせした (n = 3482)。空白期間は最大1年まで許容した。私たちは診療録レビューによって得られたデータを集める予定であったため、個々の患者のIC記録はIRBによって必要と判断されなかった。

 

Inclusion criteriaは信頼できる中心視野検査またはSD-OCT (2361 patients [67.8%])。これらは眼底変化が出る前の網膜症を検出しえる検査だ。. 除外されたのは眼底検査だけでスクリーニングされた654例 (18.8%)、screening検査を受けなかった348人(10.0%)。過去にクロロキンを投与されていたか、黄斑変性や糖尿病性網膜症のような有意な網膜症を有していたため119例 (3.4%) が除外された。登録or除外された患者層は同様であった (e Table in the Supplement).

 

眼底検査とSDOCTの所見は軽症から重症までFigure 1に示した. 視野は白または赤色のtargetを使うことができ、全てが標準的な装置を用いて行われた (Humphrey perimeter; Carl Zeiss Meditec). The SD-OCTの記録は標準的な装置を用いて行われた(Spectralis; Heidelberg Engineering). 視野検査 or SDOCT の網膜毒性は特徴的なダメージで判定され(Figure 1)、著者2人ではっきりと確認された. 視野検査において網膜毒性は傍中心窩の部分的or完全な輪状暗点を意味した。SDOCTではこれは主に傍中心窩の網膜の外側の菲薄化と光感受性のouter segment marker lines (ellipsoid zone and interdigitation zone)を意味した。

 

ほとんどの患者 (2020 [85.6%])はコンピューター管理の処方システムの後にHCQを内服し始めており、処方された錠剤の数から計算された。残り(341例 [14.4%])はHCQをKPNCに登録される前あるいは薬局システムが開始される前、平均4.5年前より内服し始めていた。それらがさらに何年使用されていたかは処方量より計算され、薬局データベースで追跡した時の平均コンプライアンスで補正された。この論文を作成する間、理想体重として 明白に言えない限り、投与量は理想体重に対する使用量で表された(つまり、処方量ではなく消費量)Throughout this article, dosage is expressed as use (ie, consumption rather than prescribed dosage) relative to real bodyweight unless explicitly stated as ideal body weight. 理想体重は簡単な計算式で計算された: for women, 100 lb for the first 5 ft of height, plus 5 lb for every inch of height over 5 ft; and for men, 110 lb for the first 5 ft of height, plus 5 lb for every inch of height over 5 ft (for women, 45 kg for the first 1.5 m of height, plus 2.3 kg for each 2.5 cm of height over 1.5 m; and for men, 50 kg for the first 1.5mof height, plus 2.3 kg for each 2.5 cm of height over 1.5 m).14

 

私たちはHCQ療法中の平均GFRをthe 4-variable Modification of Diet in Renal Disease equationを用いて評価した: GFR = 175 × Serum Creatinine Level−1.154 × Age−0.203 × (0.742 if Female) × (1.210 if Black).15患者は彼らのプロブレムリストにstage3,4,5の表記があるか、彼らの平均GFRが60未満であれば腎臓病を有すると考えられた有意な肝疾患は患者の診療録で慢性肝炎の診断があるか、平均の菅酵素レベルが正常上限の倍より高い値であれば決定された。

 

群間比較は連続変数にはt検定、カテゴリー変数にはχ2検定で行われ、全ての報告された確率は両側検定で解析された。ORはロジスティック回帰検定で行われた

 

 

Results

Study Findings

私たちの結果はHCQ網膜症はこれまで認識されていたよりもずっと高い頻度であり、投与量、使用期間、腎疾患のような危険因子に影響されるということであった。また私たちの結果は投与量が危険を最小限にする方法を修正する必要があることを示唆した。私たちは新しい危険因子としてtamoxyfenの併用があることを見出した。これらのデータは患者に網膜毒性を避けながらHCQの能力を最大限にするための内科的、眼科的なプラクティスのための重要な関連事項を有する。

 

Table 1. Demographic and statistical overview

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Overall Risk

Table 1は私たちの患者の人口の臨床的特徴をリストしている。HCQを5年以上内服し、10-2視野検査 or SD-OCTを受けた2361のうち177例(7.5%)が網膜毒性の明らかな所見を示した (Figure 1). HCQ治療の適応となった内科的疾患は網膜毒性の頻度に有意に関連しなかった. 単変量解析で有意差を示した因子と年齢(リスクを高めることが想定される)について多変量解析が行われた(Table 1)。毎日の使用、期間、tamoxifen療法, 腎疾患, および低体重が網膜毒性と関連していたが、性年齢は関連しなかった。さらに単変量のlogistic回帰解析において個々の患者の網膜毒性のリスクを評価するために用いられる因子の効果の大きさを示した (Table 2). 網膜毒性を有していると診断された177例のうち98例がレビューできる眼底カラー写真を有しており、bull’s eyeの脱色素を示したのは31例 (31.6%)‘のみであった(Figure 1, bottom)。このことから私たちのscreening技術がより感度が高いことが確認された

 

Measurement of Real vs Ideal Body Weight

私たちは網膜毒性を検出するための実際の体重と理想体重の感度と特異度を調べるためROC曲線を描き (Figure 2A)、実際の体重がより良い予測因子であることを見つけた (ROC areaは実体重で0.78、理想体重で0.75; P = .03). 現在の投与量の推奨は理想体重あたり6.5mg/kgとアドバイスしているが人口データの解釈において役立つ実体重にも同等の価値を持たせることが大切だ.

 

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eFigure 1の実体重による使用と理想体重による使用を比較した患者の分布図を見ると理想体重6.5 mg/kgは回帰ラインに沿っておおよそ実体重5.0mg/kgに一致する(患者は典型的には約25%-30%実体重よりも重たい). この値はリウマチ科のプラクティスにおいても現実的である。なぜならほとんどの患者 (1828 of 2361 [77.4%])が実体重の5.0 mg/kgよりも少ない量を消費していたため。

 

eFigure 1. Comparison of daily hydroxychloroquine usage by weight to ideal body weight

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さらに実体重に関連する網膜毒性の頻度は体型からは本質的に独立している (Figure 2B)。

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一方で理想体重を使用するやせた個々においてこのリスクはずっと高くなる (Figure 2C). これらの所見によって私たちはこの論文における後のプレゼンを全て実体重あたり5.0mg/kgを賢明な使用と過剰な使用との境界線として用いている.

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Dosage and Duration

 Figure 3AのKaplan-Meier曲線は3つの異なる範囲の㎏あたりの投与量の人口における累積リスクを示したものである. 平均使用>5.0 mg/kgの患者は10年以内に10%の網膜毒性のリスクを有し、20年後には40%はおおよそ40%のリスクを有する. 4.0-5.0mg/kgの使用は最初の10年以内で<2%であるが、20年後には約20%のリスクとなる. これらの使用薬局での消費の情報に基づいており、患者の多様なコンプライアンスを考慮すると平均で約20%低かった。

 

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平滑化した推定ハザードはFigure 3Bに示す通りであり網膜症のない患者が年次的に網膜症の年間リスクが徐々に増加することを示している. <5.0 mg/kgの使用では子のリスクは最初の10年で1%であるが、20年後には4%に上昇し、5.0 mg/kgを超える量では2-3倍高い.

Figure 3Cはより直接的にHCQ投与と期間の持続的な影響を示す. どの投与量も貫壁に安全ということはないが、各の因子を調節することがリスクの軽減につながるであろう.

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Other Risks

Effect of Kidney and Liver Function

腎臓はHCQ排泄の主な臓器であり、腎機能障害はHCQ濃度をより高める.腎疾患は顕著に網膜毒性を高める (Table 2)。eFigure 2は網膜毒性とGFRの関連を示す. 腎機能の50%低下は網膜症リスクを約2倍にする。HCQは一部肝臓系から排泄されるが、肝疾患による網膜毒性のリスク上昇を見出すことはなかった.

eFigure 2. Effect of kidney function on the risk of retinal toxicity

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Exposure to Tamoxifen

乳癌のためのtamoxifenの同時使用は網膜毒性の発症リスクを大きく増加させ (Table 2)網膜毒性はtamoxifenの累積投与量に関連があった(P = .03). 反対にエストロゲン受容体陽性乳癌におけるanastrozoleの同時の使用は同様のリスク上昇を有さないようであった. HCQとtamoxifenを同時に内服していた患者のうちtamoxifen網膜症の特徴である結晶沈着や黄斑浮腫を呈した者はいなかったが、それらは全て傍中心窩の外側網膜障害を有し、HCQ網膜症と分類されていた.