リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

EULAR recommendations for CPPD (Part I in 2011, and Par II in 2017)

ピロリン酸カルシウム結晶沈着症(CPPD)のRecommendationがあったんです。避けて通っていましたが、ちゃんと勉強してみようと思いました。

 

Recommendationのみを訳します。

 

Part I: terminology and diagnosis

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21216817/

 

 

  

Table 1 Propositions and strength of recommendation (SOR), ordered according to topic (clinical features, synovial fl uid, imaging, comorbidities and risk factors)

 

No. Proposition LoE SOR (95% CI)

 

1しばしば無症候性であるが、CPPDは様々な臨床病型を呈する。もっともコモンなのがCPPDを伴うOA、急性CPP結晶性関節炎、慢性CPP結晶性関節炎。

IIb 90 (86 to 94)

 

2重症の関節痛、腫脹、圧痛が6-24時間以内にピークに達する急性発症は急性結晶性関節炎を強く疑う。急性CPPD関節炎に特異的ではないが。

LoE IV

SOR 88 (84 to 93)

 

3 65歳以上の膝、手関節や肩の結晶性関節炎は急性CPPD関節炎らしい。レントゲン上の軟骨切開歌唱の存在と高齢はこの尤度を上げるが、確定診断のためには結晶の証明が必要だ。

LoE IIb

SOR 81 (74 to 89)

 

4 CPPDを伴うOAは膝をターゲットとしており、慢性的な症状and/or結晶誘発性の急性炎症の発作を伴う。CPPDのないOAとくらべより炎症的な症状とサイン、非典型的な分布(例、橈骨手根骨or中手根、関節窩上腕関節、中足部・後足部)および明らかな結晶とX線上の骨棘形成に関連するかもしれない。

LoE Ib/IIb

SOR 53 (38 to 68)

 

5慢性のCPP結晶性関節炎は慢性の少数関節炎or多関節炎を呈する。炎症の症状とサインを呈し、ときに全身症状を伴う(CRPとESR上昇を伴う)。結晶性炎症を伴う再燃が上乗せされることはこの診断を支持する。高齢者にいて関節リウマチとその他の慢性炎症性関節症の鑑別診断に考慮されるべき。レントゲンは診断を支持するかもしれないが、診断は結晶の証明とすべき。

LoE IIb

SOR 83 (72 to 93)

 

6 CPPDの確定的な診断は特徴的なCPP結晶を関節液や生検組織中に証明することによる(平行六面体で、主に細胞内の結晶で複屈折性がないかあっても弱い)

LoE Ib

SOR 94 (90 to 97)

 

7 CPP結晶(+尿酸結晶)のルーチンの検索は診断がついていない関節炎、とくに高齢者の膝や手関節から得られた全ての関節液サンプルで検索することが勧められる

LoE IV

SOR 99 (97 to 100)

 

8 X線上の軟骨石灰化症の診断を支持するが、ないからといって否定はできない。

LoE IIb

SOR 97 (92 to 102)

 

9超音波検査は末梢の関節でCPPDを証明しうる。典型的的には薄い高エコー帯として硝子軟骨のなかに見え、線維軟骨のなかに高エコーのキラキラ光る点として見える。感度と特異度は素晴らしく、おそらくX線検査よりもよい

LoE IIb

SOR 78 (70 to 87)

 

10急性のCPP結晶性関節炎と敗血症が併存するかもしれない。そのため感染が疑われるときはCPP結晶と軟骨石灰化症がある場合であっても微生物学的検査を行うべき。

LoE III

SOR 96 (93 to 100)

 

11 CPPDの患者は危険因子と関連する合併症を評価すべき;OA、先行する外傷、危険因子となる代謝性疾患(ヘモクロマトーシス、原発副甲状腺機能亢進症、低Mg血症)と稀な家族性の病気。代謝性や家族性の疾患は55歳未満であったり多関節に軟骨石灰化症がある場合は特に考慮すべき

LoE Ib/IIb

SOR 94 (89 to 99)

 

LoE, level of evidence (Ia=meta-analysis of cohort studies, Ib=meta-analysis of case control or cross sectional studies, IIa=cohort study, IIb=case control or cross-sectional studies, III=non-comparative descriptive studies, IV=expert opinion);

SOR, strength of recommendation on visual analogue scale (0–100 mm, 0=not recommended at all, 100=fully recommended).

 

 

Part II: management

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21257614/

 

Table 2

LOE and SOR: order according to topic (general, acute attacks, prophylaxis and chronic CPPD management)

 

No Proposition LOE SOR (95% CI)

1 CPPDの理想的な治療は非薬物療法薬物療法のいずれも要し、以下の条件に応じて対応すべき:

  • 臨床状況(軟骨石灰化症のみ、急性・慢性CPP結晶性関節炎、CPPDを伴うOA)
  • 一般的な危険因子(年齢と合併症)
  • 危険因子の代謝性疾患の存在

LoE IV

SOR 93 (85 to 100)

 

2急性CPP結晶関節炎において理想的で安全な治療は冷却やクールパック、一時的な安静、関節液穿刺、長期間作用するステロイドの関節内注射。多くの患者にとってこれらのアプローチだけで十分かもしれない。

LoE IIa–IV

SOR 95 (92 to 98)

 

3 NSAID(適応があれば消化器の予防投与)と低用量のコルヒチン(0.5mgを3-4回/日まで。初回1mgを行ってもよい)が急性CPP結晶関節炎に対して有効な全身投与。但しこれらの使用は特により高齢の患者においては、しばしば毒性と合併症のため制限がされる。

LoE Ib–IIb

SOR 79 (66 to 91)

 

4短期間の傾向ステロイドの漸減、静注ステロイドやACTH静注は局所のステロイド注射に抵抗性の急性CPP結晶性関節炎に有効かもしれない。あるいはコルヒチンand/orNSAIDの代替療法となる。

LoE IIb–III

SOR 87 (76 to 97)

 

5頻繁な急性CPP結晶性関節炎に対する予防は低用量の経口コルヒチン(0.5-1.0mg/日)または低用量の経口NSAID(もし適応があれば消化管の予防投与とともに)で達成されうる

LoE IIb–IV

SOR 81 (70 to 92)

 

6 CPPDを伴うOAの患者の治療の目的と選択肢はCPPDのないOA患者のそれと同じ

LoE Ia

SOR 84 (74 to 94)

 

7慢性CPP結晶性関節炎には好ましい順に経口NSAID(適応があれば消化管の予防投与とともに)and/or コルヒチン(0.5-1.0mg/日)、低用量ステロイド、MTXとHCQ。

LoE Ib–IV

SOR 79 (67 to 91)

 

8もし発見されれば副甲状腺機能亢進症、ヘモクロマトーシスや低マグネシウム結晶の治療をすべき。

LoE Ib

SOR 89 (81 to 98)

 

9現在のところCPP結晶の形成や溶解の修飾する治療はない。無症候性の軟骨石灰化症に対する治療は必要ない。

LoE IV

SOR 90 (83 to 97)